背景
Toscaを複数ユーザーで利用する場合、**Multi-User Workspace(MUW)**の構築が必要です。
これにより、チームメンバーが同一リポジトリを共有し、同時にTestCaseやModuleを編集・更新できます。
マニュアルにてSQLiteでのMulti-user production 環境ではサポートしていない事を明記していますので、本記事では本運用を想定したMSSQLを利用した環境構築を説明します。
今回は、MSSQL ServerをリポジトリDBとして利用する構成で、
Multi-User Workspaceを作成する手順を紹介します。
参考:
Tricentis Tosca Documentation - Create a multi-user workspace
前提条件と除外範囲
このガイドでは以下の前提のもとで構成します。
前提条件
- Tosca Commanderがインストール済み
- MSSQL Serverが利用可能(リモート・ローカルいずれも可)
- ユーザーがDBへ接続可能な資格情報を持っている
除外範囲
以下の作業は利用者側で事前に完了している前提とします。
- MSSQL Serverのインストールと起動設定
- ファイアウォール・ネットワーク接続設定(TCP1433ポート開放など)
- SQL認証またはWindows認証の有効化
注意事項
- ネットワーク経由の場合、接続遅延が発生しない環境を推奨します。
- DBのバックアップポリシーは運用チームで管理してください。
全体構成
- MSSQLでリポジトリDBを作成
- Tosca CommanderでMulti-User Workspaceを作成・接続
参考:
Tricentis Tosca Documentation - Create a multi-user workspace
第1章:MSSQLでリポジトリDBを作成
1️⃣ SQL Server Management Studioを起動
管理者権限でSQL Server Management Studio (SSMS)を起動し、Repositoryを作成したいSQL Serverインスタンスに接続します。
2️⃣ 新しいデータベースを作成
- オブジェクトエクスプローラで「Databases」を右クリック → [New Database...] を選択。
- 以下のように設定し「OK」。
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| Database name | ToscaRepository |
| Owner | (DB オーナーを設定) |
3️⃣ Tosca接続ユーザーの作成(必要に応じて)
Toscaが利用するDBユーザーを、SQL Server Management Studio(SSMS)のGUIで作成します。
🪟 手順
-
General(全般)タブで以下を設定します。
-
User Mapping(ユーザーマッピング)タブを選択し、
-
ToscaRepositoryにチェックを入れる - 「Database role membership for: ToscaRepository」で
db_owner にチェックを入れる
-
-
OK を押してユーザーを作成。
🔐 ToscaはDBへの書き込み・スキーマ作成を行うため、db_owner権限が必要です。
本番環境では管理ポリシーに従って最低限の権限設定を行ってください。
4️⃣ 接続確認
SSMSまたはコマンドラインから、作成したユーザーで接続できることを確認します。
sqlcmd -S YOUR-SQLSERVER\INSTANCE -U tosca_admin -P <your password> -Q "SELECT name FROM sys.databases"
ToscaRepository が一覧に表示されれば準備完了です。
第2章:Tosca CommanderでMulti-User Workspaceを作成
1️⃣ Tosca Commanderを起動
- Tosca Commanderを起動し、[Create new] をクリック。
2️⃣ Repository接続設定
下表の通りに入力し、Test Connectionで接続確認します。
| 項目 | 入力例 |
|---|---|
| Database type | MS SQL Server |
| Use existing repositry | チェックを外す |
| Connection String | Data Source=YOUR-SQLSERVER\INSTANCE;Database=ToscaRepository;User ID=tosca_admin;Password=;TrustServerCertificate=True; |
💡 「Test Connection」ボタンで接続確認を行い、成功したら次へ進みます。
最初にRepositoryを作成するユーザーのみUse existing repositoryをアンチェックします。
2人目以降のユーザーはUse existing repositoryを利用して接続情報を入力します。
3️⃣ Workspaceの設定
- Workspaceファイルの保存先を設定します。
- Workspace名を定義します。
- Use Workspace templatesをチェックする事で標準モジュールが最初から利用できます。
4️⃣ Repository作成
- Next を押すと、Toscaが自動でリポジトリスキーマを作成します。
🧠 作成時に、テーブル・インデックス・メタデータが登録されます。
5️⃣ 動作確認チェックリスト
| 確認項目 | 成功時の挙動 |
|---|---|
| Workspace起動 | Commanderがエラーなく起動 |
| チェックイン操作 | Check-In / Check-Out が利用可能 |
以上になります。Multi-User Workspace作成後はCheck-In,Check-Out機能を利用しながら
Toscaのテスト資産を共有して作業ができます。
利用時にはTosca Commander上にてユーザーを作成し、各ユーザーにてアクセスしToscaを利用ください。
接続トラブルシュート集
| エラー/症状 | 想定原因 | 解決策 |
|---|---|---|
| ❌ Cannot connect to SQL Server | サーバー名/ポート誤り、TCP1433閉鎖、SQL Browser停止 | SSMSまたはsqlcmdで接続確認、SQL Browserを有効化、名前解決不可ならIP直指定 |
| ⚠️ Login failed for user | 認証方式の不一致(SQL認証/Windows認証) | Toscaの接続設定で認証方式を合わせる。資格情報の再確認 |
| ⚠️ Database creation failed | 権限不足(CREATE DATABASE / TABLE不可) |
db_owner 付与。必要に応じて一時的に管理者で初期化 |
| ⚠️ Timeout expired | ネットワーク遅延・DNS問題 | IP直指定(例:192.168.x.x\SQLEXPRESS)、遅延の少ない経路で再試行 |
| ⚠️ Version mismatch | Tosca CommanderとDBスキーマの不一致 | 同一バージョンのCommanderで再構築、スキーマ更新 |
| ⚠️ Repository locked | 他ユーザーが更新中 | ロック解除後に再試行、運用ルールで同時操作を避ける |
| ⚠️ Tosca crashes on connect | キャッシュ破損/インストール不具合 |
%AppData%\TRICENTIS のキャッシュをクリア、再インストール検討 |
運用ベストプラクティス
| 項目 | 推奨内容 |
|---|---|
| Workspace管理 | 重要マイルストーン前後でローカルバックアップ(週1目安) |
| バージョン管理 | Toscaアップデート前にDBスキーマ互換性を確認 |
| ユーザー教育 | Check-In前に差分レビューを徹底し、競合最小化 |
| ユーザー教育 | 命名規則など運用ルールを策定し、重複作業やコンフリクトを回避 |





