建設現場で 30 年働いてきた大工です。リフォームの見積もりは「外壁塗装 一式」の 1 行で済まされることが多く、施主が金額の妥当さを自分で確かめる方法はほとんどありません。
材料はあります。国土交通省や地方整備局は、公共工事の労務単価、資材単価、工事の標準単価、指数を毎年公開しています。ただ、PDF と Excel に散らばっていて、施主が探して読むのは無理です。
そこで、これらを 1 行 1 観測の表にそろえて JCCDB(Japan Construction Cost Database、日本の建設費データベース)v5.0 として公開しました。
- 計 425,765 件: 品目 95,403 と、日本の公的な出典 76 からの観測 330,362 行
- 観測の 1 行ごとに、元資料の URL、原本の頁、利用条件
- CC BY 4.0、DOI 10.5281/zenodo.22980284(全部の版 10.5281/zenodo.22127751)
- Hugging Face: ogasurfproject/jccdb-observations
- GitHub: japan-construction-cost-database
米国版の USCCDB(United States Construction Cost Database、米国の公的な出典 2,375 からの観測 2,849,829 行、DOI 10.5281/zenodo.22979157)も同じ形で出しています。
1. 例: 神奈川県の塗装工の労務単価
公共工事設計労務単価(所定労働時間内 8 時間あたりの賃金)の、神奈川県・塗装工の系列です。
| 適用 | 賃金(円/人日) |
|---|---|
| 2013-04 | 22,700 |
| 2016-02 | 26,300 |
| 2019-03 | 27,900 |
| 2022-03 | 30,300 |
| 2025-03 | 34,200 |
| 2026-03 | 36,300 |
13 年で 22,700 円から 36,300 円、約 1.6 倍です。外壁塗装の見積もりが上がっている理由の一つは、ここに数字で出ています。各行の出典は国土交通省の報道発表資料で、たとえば 2026-03 の行は https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001981942.pdf です。
注意: これは事業主が払う法定福利費などを含まない賃金です。参考値(必要経費を含む額)は別の列 ref_value に入れてあり、2026-03 は 53,600 円です。どちらも、リフォーム業者の見積単価そのものではありません。
2. 表の形
1 行が「何を・どこで・いつ・どの資料で」の 1 観測です。主な列:
| 列 | 中身 |
|---|---|
layer |
種類(material 資材、labor 労務単価、work 工事の単価、index 指数、cost_sqft 面積あたり工事費 など) |
item_name, spec, unit
|
品目、規格、単位 |
geo_code, geo_name
|
地域 |
price, currency, price_basis
|
値と、その値の意味 |
price_status |
値を載せているか、載せていない理由 |
period, effective_from
|
時点 |
source_id, source_page, evidence_url, license
|
出典、原本の頁、元資料の URL、利用条件 |
price_status がこのデータの芯です。
-
published_pdl/published_cc_by: 出典が公開し、再配布できるので値を載せている -
published_restricted_not_copied: 出典は公開しているが、利用条件が再配布を許さないので値は写していない。evidence_urlの原本で見る -
publication_based_not_public: 出典の表が市販の物価資料の値を使っていて、公的に公開された値が無い -
not_set: 原本で空欄か「-」。0 円ではない
「無い」と「0」と「写せない」を分けて持つことで、AI や集計が空欄を 0 と読み違えないようにしています。
3. 何が入っていて、何が入っていないか
日本の観測の内訳(層ごとの行数)は、資材 151,733、工事の単価 91,141、面積あたり工事費 36,819、労務単価 32,924、指数 18,125、リフォームの工事支出 804、機械損料 400 です。賃金統計、入札の品目単価、住宅価格は取り込んでいません。取り込んでいないものは、データの中でも「無い(取り込んでいない)」と明記しています。
4. 自分で引く
Python で表を読む
import pandas as pd
df = pd.read_parquet(
"hf://datasets/ogasurfproject/jccdb-observations/data/labor_mlit_roumu_r8.parquet"
)
row = df[(df.geo_name == "神奈川県") & (df.item_name == "塗装工")]
print(row[["item_name", "geo_name", "price", "ref_value", "period", "evidence_url"]])
hf:// で読むには pip install pandas pyarrow huggingface_hub が要ります。
AI エージェントから引く(MCP)
同じデータを MCP(Model Context Protocol)のサーバーとしても出しています。読み取り専用、認証なしです。
curl -s https://ccdb.horizonshield.dev/mcp \
-H 'content-type: application/json' \
-H 'accept: application/json, text/event-stream' \
-d '{"jsonrpc":"2.0","id":1,"method":"tools/call","params":{"name":"get_jccdb_labor_rate","arguments":{"pref":"神奈川県","job":"塗装工","history":true}}}'
返す行には必ず evidence_url と license が付きます。出典を取りに行けなかったときは fetch_failed: true を返し、0 件とは言いません。Claude などの MCP クライアントにこの URL を登録すれば、AI が答えるときに数字を作文せず、行を引いて出典ごと示せます。道具は 15 個で、何があるかは get_jccdb_coverage で先に確かめられます。
5. なぜ作ったか
同じ工事でも、見積もりは業者によって大きく違います。数字の根拠を誰でも同じ資料で確かめられれば、まじめな業者も施主も得をします。公共工事の単価はリフォームの見積単価ではありませんが、「材料と人件費の相場がどう動いたか」を公的な数字で示す土台にはなります。
このデータを土台に、リフォームの見積もりが適正かを施主の側から確かめるサービスとして HORIZON SHIELD を運営しています。当社は施工をせず、業者からの紹介料も受け取りません。
データは自由に使ってください。間違い、スキーマへの意見、取り込んでほしい公的資料があれば、GitHub の Issue で教えてください。
JCCDB は、建設現場で 30 年働いてきた大賀俊勝(Toshikatsu Oga)が作り、The HORIZ音s株式会社が CC BY 4.0 で公開しているオープンデータです。
30坪なら、いくらが目安か
延床30坪・シリコン塗料の外壁塗装は、相場データ(souba-db)で70〜115万円です。150万円の見積もりがこの範囲のどこに入るか、内訳をどう照らすかは、こちらにまとめています。
外壁塗装 30坪の相場: https://shield.the-horizons-innovation.com/souba/gaiheki/
外壁塗装の見積もりで150万円は高いか: https://shield.the-horizons-innovation.com/souba/gaiheki-150man/