以下の統計検定2級対策動画で用いられているスライドの一部です。
具体例から理解する「独立」
統計学の「 独立 」という言葉。
難しそうな定義から入るのではなく、
まずは具体的な問題を通じて、
その 本質的な意味 を掴んでいきましょう。
例題1:独立な事象
以下の試行を考えます。
- 1つのサイコロを1回投げる
- ジョーカーを除いた52枚のトランプから1枚引く
- 事象A: サイコロの目が 「3の倍数」
- 事象B: 引いたカードが 「絵札」
これら2つの事象は、互いに 独立 でしょうか?
ステップ1:事象Aの確率 $P(A)$
事象A: サイコロの目が「3の倍数」
- サイコロの全事象:{1, 2, 3, 4, 5, 6} (6通り)
- 3の倍数となる目:{3, 6} (2通り)
よって、事象Aが起こる確率は…
$$
P(A) = \frac{2}{6} = \frac{1}{3}
$$
ステップ2:事象Bの確率 $P(B)$
事象B: 引いたカードが「絵札」
- トランプの全枚数:52枚
- 絵札(J, Q, K)の枚数:3枚 × 4スート = 12枚
よって、事象Bが起こる確率は…
$$
P(B) = \frac{12}{52} = \frac{3}{13}
$$
ステップ3:両方が起こる確率 $P(A \cap B)$
$P(A \cap B)$ とは…
サイコロが3の倍数であり、 かつ 、引いたカードが絵札である確率
- 全事象の数:$6 \times 52 = 312$ 通り
- 該当する場合の数:(3か6の目: 2通り) $\times$ (絵札: 12通り) = 24通り
よって、その確率は…
$$
P(A \cap B) = \frac{24}{312} = \frac{1}{13}
$$
ステップ4:独立性の判定
「独立である」とは、 $P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$ が成り立つこと。
- 左辺: $P(A \cap B) = \frac{1}{13}$
- 右辺: $P(A) \times P(B) = \frac{1}{3} \times \frac{3}{13} = \frac{1}{13}$
左辺と右辺が等しい!
$$
\frac{1}{13} = \frac{1}{13}
$$
したがって、事象Aと事象Bは 互いに独立である と言えます。
独立ではない例(従属)
では次に、一方の事象がもう一方に 影響を与える 場合を見てみましょう。
このような関係を 従属 と呼びます。
例題2:従属な事象
以下の試行を考えます。
1から12までの整数が書かれた12枚のカードの箱から、1枚を引く。
- 事象C: 引いた数字が 「4の倍数」
- 事象D: 引いた数字が 「6の倍数」
これら2つの事象は、互いに 独立 でしょうか?
ステップ1&2:各事象の確率
事象Cの確率 $P(C)$
- 4の倍数:{4, 8, 12} (3つ)
$$
P(C) = \frac{3}{12} = \frac{1}{4}
$$
事象Dの確率 $P(D)$
- 6の倍数:{6, 12} (2つ)
$$
P(D) = \frac{2}{12} = \frac{1}{6}
$$
ステップ3:両方が起こる確率 $P(C \cap D)$
$P(C \cap D)$ とは…
数字が4の倍数であり、 かつ 、6の倍数である確率
- 4と6の公倍数は 12の倍数
- 1〜12の中で該当する数字:{12} (1つ)
よって、その確率は…
$$
P(C \cap D) = \frac{1}{12}
$$
ステップ4:独立性の判定
再び、 $P(C \cap D) = P(C) \times P(D)$ が成り立つか確認します。
- 左辺: $P(C \cap D) = \frac{1}{12}$
- 右辺: $P(C) \times P(D) = \frac{1}{4} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{24}$
左辺と右辺が異なる!
$$
\frac{1}{12} \neq \frac{1}{24}
$$
したがって、事象Cと事象Dは 独立ではなく、従属である と言えます。
関係の可視化:ベン図
従属関係は、事象間に 重なり があることで直感的に理解できます。
12が両方の事象に属しているため、一方の発生が他方の確率に影響します。
まとめ:事象の「独立」とは?
ここまでの例を踏まえて、 独立 を数学的に定義します。
独立 とは、ある事象の発生が、
他の事象の発生確率に 一切影響を与えない 状態を指します。
独立の定義式
2つの事象 $A$ と $B$ が独立であるとは、以下の式が成り立つことです。
$$
P(A \cap B) = P(A) \times P(B)
$$
独立の定義式
$$
P(A \cap B) = P(A) \times P(B)
$$
- $P(A)$:事象Aが起こる確率
- $P(B)$:事象Bが起こる確率
- $P(A \cap B)$:事象Aと事象Bが 両方とも 起こる確率
この式は、「2つの事象が両方とも起こる確率は、それぞれの確率の積に等しい」ことを意味し、独立性を判断する 最も基本的な基準 です。
別の視点:条件付き確率との関係
独立は 条件付き確率 の観点からも理解できます。
条件付き確率 $P(A|B)$
事象Bが起こったという条件下で、事象Aが起こる確率
定義式は以下の通りです。
$$
P(A|B) = \frac{P(A \cap B)}{P(B)}
$$
独立ならば、条件付き確率はどうなる?
もし事象AとBが 独立 ならば、 $P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$ なので…
条件付き確率の式に代入すると、
$$
P(A|B) = \frac{P(A) \times P(B)}{P(B)} = P(A)
$$
$P(A|B) = P(A)$ の意味
事象Bが起きたという情報が与えられても、
事象Aが起こる確率は変わらない
これは、まさに独立の直感的な意味そのものです。
本日のまとめ
-
独立の定義
2つの事象A, Bについて $P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$ が成り立つこと。 -
独立の意味
一方の事象の発生が、もう一方の事象の発生確率に影響を与えないこと。 -
条件付き確率との関係
AとBが独立ならば、 $P(A|B) = P(A)$ となる。 -
従属
独立ではない関係のこと。
