この記事は筆者オンリーのAdvent Calendar 20252日目の記事です。 SIPのプロトコルであるRFC3261についざっくり書いてみます。

1. はじめに：SIPとRFC3261とは

SIP（Session Initiation Protocol）は、IPネットワーク上で音声・映像などのリアルタイムセッションを開始・変更・終了するためのシグナリングプロトコルです。
VoIP、ビデオ会議、IMS/VoLTE など幅広く利用されています。

RFC 3261 は、この SIP のコア仕様を定めた文書で、

どんなメソッドがあるか

どんなヘッダがあるか

どんな順番でやり取りされるか（コールフロー）

といった内容がまとめられています。

この記事では RFC3261 の中でも特に「最小限で通話ができる部分」だけに絞って解説します：

INVITE → 200 OK → ACK で通話確立

BYE → 200 OK で通話終了

おまけ：REGISTER で端末の位置登録

2. SIPの登場人物（UA / Proxy / Registrar）

User Agent (UA)

エンドポイントとなる電話機・ソフトフォン・PBX など。

リクエストを出すとき → UAC (User Agent Client)

リクエストを受けるとき → UAS (User Agent Server)

Proxy Server

リクエストを転送する中継ノード。
ルーティングやポリシー適用などを担当。

Registrar / Location Server

REGISTER を受けて、
「このSIP URI が今どのIP/ポートにいるか」
を保存する役割。

3. SIPメッセージのざっくり構造

SIPはHTTPライクなテキストプロトコルです。

INVITE リクエスト例
INVITE sip:bob@example.com SIP/2.0
Via: SIP/2.0/UDP pc33.example.com;branch=z9hG4bK776asdhds
From: "Alice" <sip:alice@example.com>;tag=1928301774
To: <sip:bob@example.com>
Call-ID: a84b4c76e66710@pc33.example.com
CSeq: 314159 INVITE
Contact: <sip:alice@pc33.example.com>
Content-Type: application/sdp
Content-Length: 142

v=0
o=alice 2890844526 2890844526 IN IP4 pc33.example.com
s=-
c=IN IP4 192.0.2.1
t=0 0
m=audio 49172 RTP/AVP 0
a=rtpmap:0 PCMU/8000

ポイント：

1行目：メソッド Request-URI SIP/2.0

続くのがヘッダ（Via, From, To, Call-ID, CSeq…）

空行の後に SDP（メディア情報）が入る

4. よく出てくるメソッド（INVITE / ACK / BYE / REGISTER）

INVITE

通話開始（セッション開始）の要求。SDP を同梱するのが一般的。

ACK

INVITE の**最終応答（200〜6xx）**に対する確認用メッセージ。
※ INVITE 専用メッセージである点が重要。

BYE

既に確立した通話の終了。呼の発信/着信どちらからでも送れる。

REGISTER

端末の現在位置を Registrar に登録する。

5. 基本コールフロー

INVITE → 180 Ringing → 200 OK → ACK

最小構成の2者間通話の流れは次のとおり：

Alice (UA)                             Bob (UA)
    |                                     |
    |---------- INVITE ------------------>|
    |<--------- 100 Trying ---------------|
    |<--------- 180 Ringing -------------|
    |<--------- 200 OK ------------------|
    |---------- ACK -------------------->|
    |===== RTP (音声/メディア) ========>

各ステップの意味

INVITE
通話要求。通常SDPを含む。

100 Trying（任意）
「処理中」を示す暫定応答。

180 Ringing
相手端末が鳴動中であることを通知。

200 OK
通話受諾。SDP返答でメディア条件が決まる。

ACK
200 OK を受領したことを通知。
→ これでセッション（ダイアログ）成立。

RTP（メディア）
SIPはシグナリングのみ。音声はRTPで流す。

6. セッション終了フロー：BYE → 200 OK

通話の切断は非常にシンプル：

Alice (UA)                             Bob (UA)
    |===== RTP (会話中) ==========>|
    |                               |
    |----------- BYE -------------->|
    |<---------- 200 OK-------------|
    |                               |

ポイント：

BYE はどちら側からでも送れる

BYE → 200 OK では ACK は不要（INVITE のときだけ）

7. おまけ：REGISTER で端末の位置登録

SIP URI と実際の IP/ポートの紐付けを行うために使われます。

REGISTER の典型フロー

UA (Alice)                   Registrar
    |                           |
    |------ REGISTER ---------->|
    |<----- 401 Unauthorized ---|  (認証要求)
    |------ REGISTER (+Auth) -->|
    |<----- 200 OK -------------|

この登録情報をもとに、Proxy/Registrar は
INVITE sip:bob@example.com を正しい場所へ転送できます。

8. まとめ

SIPはセッション開始/終了を行うテキストプロトコル

基本コールフロー

INVITE → 200 OK → ACK

メディアはRTP

終了フロー

BYE → 200 OK（ACKなし）

REGISTER は端末の位置登録