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ハイブリッドクラウド/マルチクラウド管理の入口「Azure Arc」を触ってみる ― ArcBoxで学ぶ最新アップデートとArc Gateway

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Last updated at Posted at 2026-06-23

本記事は GitHub Copilot および Microsoft Foundry を活用して作成されています。内容の正確性については各公式ドキュメントをご確認ください。

はじめに

オンプレミスや他クラウドのサーバー/Kubernetes/SQL を、Azure の管理面(Azure Resource Manager)に取り込んで一元管理できるのが Azure Arc です。

本記事では、

  1. Azure Arc を最短で体験できる検証環境 ArcBox の紹介
  2. 直近約1年の Azure Arc アップデート(2025年6月〜2026年6月)
  3. ネットワーク要件を大幅に簡素化する Azure Arc Gateway とは何か

をまとめます。「Arc を触ってみたいけど環境構築が大変そう」という方の最初の一歩になれば幸いです。

本記事の情報は Microsoft Learn および Azure Updates の公開情報(2026年6月時点)に基づきます。リンクは各セクション末尾に記載しています。

目次


1. Azure Arc をまるごと体験できる「ArcBox」

ArcBox とは

ArcBox は、Microsoft の OSS プロジェクト Azure Arc Jumpstart が提供する「Azure Arc のサンドボックス」です。1 つの ARM/Bicep/Terraform デプロイで、Arc を体験するために必要なリソース一式が自動構築されます。

ポイントは、疑似的なオンプレミス環境を Azure 上に丸ごと作ってくれることです。ArcBox-Client という 1 台の Azure VM の中に、入れ子(ネスト)の Hyper-V 仮想マシンが複数立ち上がり、それらが「オンプレのサーバー」に見立てて Azure Arc に接続されます。

ArcBox-Client 上の Hyper-V マネージャー(ネスト VM 一覧)

ArcBox-Client(1 台の Azure VM)の中で、ArcBox-SQL / ArcBox-Ubuntu-01 / ArcBox-Ubuntu-02 / ArcBox-Win2K22 / ArcBox-Win2K25 のネスト VM が Hyper-V 上で稼働しています。これらが「オンプレ相当のサーバー」として Azure Arc に接続されます。

ArcBox の主なフレーバー(種類)

フレーバー 主な対象 想定読者
ITPro Arc 対応サーバー(Windows/Linux/SQL)中心 インフラ/IT 運用
DevOps Arc 対応 Kubernetes、GitOps アプリ/プラットフォーム
DataOps Arc 対応 SQL Managed Instance データ基盤

例えば ITPro フレーバーでは、ArcBox-Client 上に以下のようなネスト VM が作成され、Arc 対応サーバーとして登録されます。

  • ArcBox-Win2K22 / ArcBox-Win2K25(Windows Server)
  • ArcBox-SQL(SQL Server on Azure Arc)
  • ArcBox-Ubuntu-01 / ArcBox-Ubuntu-02(Linux)

これにより、Azure Policy / Microsoft Defender for Cloud / Azure Monitor / Update Manager / Machine Configuration などを「オンプレ相当のマシン」に対して試せます。

デモ環境あるある:久しぶりに起動したら Arc が切断していた

私自身、お客様デモ用に久々に ArcBox-Client を起動したところ、ネスト VM がすべて Disconnected になっていました。

調査すると、原因は ホスト(ArcBox-Client)の送信インターネット経路の喪失でした。ArcBox はホスト上の NAT を経由してネスト VM に外部接続を提供しているため、ホストが外に出られないと配下の Arc エージェントが一斉に切断されます。

  • VM 自体は起動・ネスト VM も Running
  • しかしホストから management.azure.com:443 へ到達不可(DNS は解決するが TCP 失敗)
  • サブネットに NAT Gateway もパブリック IP も無く、不安定な「既定の送信アクセス(default outbound access)」頼みになっていた

対処として サブネットに NAT Gateway を追加したところ、数分で全ネスト VM が自動再接続しました。

ネスト VM 上で azcmagent show を実行し接続状態を確認

再接続後、ネスト VM(左: Arcbox-Ubuntu-01/右: ArcBox-SQL)で azcmagent show を実行すると Agent Status: Connected となり、Azure Arc へ正常に接続できていることを確認できます(サブスクリプション ID ・テナント ID などの機微情報はマスクしています)。

補足: Arc 対応サーバーは、ハートビートが 15~30 分届かないと Disconnected になりますが、再接続すれば自動で Connected に戻りリソースも保持されます。ただし長期化すると、Azure Policy のゲスト割り当ては 14 日で削除、45 日で状態が Expired になりうる、45~90 日で Microsoft Entra マネージド ID が失効し接続不可になる、といった期限があります(「30 日」は SQL/Windows のライセンス課金や Arc 対応 Kubernetes の証明書の話で、サーバーとは別です)。
出典: What is Azure Arc-enabled servers?(Agent status) / Troubleshoot disconnected scenarios

Azure の「既定の送信アクセス」は Microsoft 所有の予告なく変わる IP で、本番非推奨かつ廃止が進められています。2026年3月31日以降に作成される新しい仮想ネットワークは既定でプライベートサブネットとなり、NAT Gateway・Load Balancer の送信規則・インスタンスレベル パブリック IP などの「明示的な送信経路」を構成しないとインターネットへ出られません。長期停止後の再起動などで途切れることもあるため、いずれにせよ明示的な送信経路を用意しておくのが安全です。
参考: Default outbound access in Azure / 既定の送信アクセス廃止のアナウンス

ArcBox で試せる主な運用機能(実画面つき)

ArcBox を起動すると、Arc 対応サーバーに対して Azure の運用機能を一通り試せます。ここでは ITPro フレーバーで実際に表示される画面を紹介します。

Azure Arc センター / サーバー一覧

Azure Arc センター

Azure Arc センターから、ハイブリッド/マルチクラウドのリソースを一元的に俯瞰できます。

Arc 対応サーバー一覧

ITPro フレーバーでは ArcBox-Win2K22 / ArcBox-Win2K25 / ArcBox-SQL / Arcbox-Ubuntu-01 / Arcbox-Ubuntu-02 が Arc 対応サーバーとして登録されます。ArcBox-Client の中で動くネスト VM が、そのまま「オンプレ相当のサーバー」として並びます。

拡張機能(エージェント/監視/セキュリティ)

Arc 拡張機能

各マシンには Azure Monitor Agent、Dependency Agent、Change Tracking、Defender などの VM 拡張機能が展開され、Azure ネイティブ VM と同じ管理面で運用できます。

Azure Update Manager(OS パッチ管理)

Azure Update Manager

Windows / Linux を横断して更新コンプライアンスを一元表示。定期評価・ワンタイム評価・スケジュールパッチを、オンプレ相当のサーバーに対して実行できます。主な特長は以下のとおりです。

  • Arc 対応サーバーと Azure VM を一元管理: オンプレ/他クラウドの Arc VM だけでなく、ネイティブな Azure VM も同じ画面・同じ仕組みでまとめてパッチ管理できます。
  • 事前/事後スクリプト(Pre/Post タスク): パッチ適用の前後に Azure Automation Runbook を実行可能。「適用前にアプリ/MW を停止 → パッチ → 起動 → ヘルスチェック」といった一連の運用を自動化できます。
  • スケジューリング: メンテナンス構成で「毎週土曜 2:00」「毎月第2日曜」などの保守ウィンドウを定義し、グループ単位で定期パッチを自動実行できます。
  • 特定 KB の除外(インクルード/エクスクルード): 適用したくない更新プログラム(KB 番号やパッケージ)を除外リストで指定でき、問題のある特定パッチだけ当てない運用が可能です。

Change Tracking & Inventory(インベントリ)

Windows インベントリ

Windows(ArcBox-Win2K22)では、ソフトウェア・ファイル・Windows サービス・レジストリを横断的にインベントリ化できます(例: ソフトウェア 143 件、Windows サービス 194 件)。

Linux インベントリ

Linux(Arcbox-Ubuntu-01)でも同様に、パッケージや Linux デーモンを把握できます(例: ソフトウェア 806 件、Linux デーモン 213 件)。OS 内の構成を、サーバーへログインせずポータルから確認できるのが利点です。

セキュリティとガバナンス

Microsoft Defender for Cloud

Microsoft Defender for Cloud により、Arc 対応サーバーのセキュリティ態勢評価や推奨事項を確認できます。

Azure Policy コンプライアンス

Azure Policy による構成コンプライアンス評価も、オンプレ/他クラウドのサーバーへ同じ仕組みで適用できます。

補足: 上記スクリーンショットは ArcBox(ITPro)で各機能を有効化した状態のものです。Update Manager の「定期評価」や WindowsPatchExtension / LinuxPatchExtension は、初回の評価・パッチ操作時に自動で導入されます。


2. 直近約1年の Azure Arc アップデート(2025年6月〜2026年6月)

Azure Updates の Arc 関連を、領域別に整理しました。トレンドは 「監視(OpenTelemetry / Managed Prometheus)の GA 化」「ネットワーク/運用の簡素化(Arc Gateway・自動アップグレード)」 です。

Arc 対応サーバー / Connected Machine エージェント

Connected Machine エージェントは毎月更新されています。直近の注目点:

時期 バージョン 主な内容
2025/11 1.58 Arc Gateway が GAconnection.type の Preview フラグ削除)
2025/12 1.59 azcmagent が Azure CLI 資格情報での connect/disconnect に対応
2026/02 1.61 自動アップグレードのローカル無効化、MSI 署名検証の強化
2026/03 1.62 azcmagent upgrade コマンド追加、オンボード時の自動アップグレード有効化、TPM バックド ID(Preview)
2026/05 1.64 Arc Gateway バイパスリスト対応、azcmagent show に ESU 適格性表示
2026/06 1.65 TLS 証明書検証の強化(CVE 対応)、拡張機能 DL サイズ上限を 2GB に拡大

サポート対象は「リリースから1年以内のエージェント」のみ。自動アップグレードの有効化が推奨です。

Arc 対応 Kubernetes / 監視

  • 2025/03 GA: Arc 対応 K8s 向け Managed Prometheus
  • 2025/05 Preview → 2026/03 GA: Prometheus コミュニティ推奨アラート
  • 2025/11 Preview → 2026/04 GA: OpenShift / ARO 向け Azure Monitor コンテナ監視
  • 2025/11 Preview → 2026/06 GA: Arc 対応クラスター向け Fleet Manager
  • 2025/11 Preview → 2026/06 GA: VM/Arc サーバー向け OpenTelemetry メトリクス・可視化

Arc 対応 SQL Server / データ

  • 2025/07 Preview → 2025/11 GA: Arc 内の 新 SQL Server マイグレーション
  • 2026/04 Preview: マイグレーション先として SQL Server on Azure VM を追加
  • 2025/02 GA: Arc 対応サーバー上の PostgreSQL 検出

その他

  • 2025/05 GA: Arc 対応 Azure Container Apps
  • 2025/07 GA: Azure File Sync Arc 拡張機能
  • 2025/10 GA: Arc によるファームウェア分析

廃止(Retirement)予定 ― 要注意

  • 2025/09: Arc 対応 K8s 上の App Service 廃止
  • 2026/10: AKS on Arc の Windows Server 2022 サポート廃止
  • 2028/03: WS2019/2022 向け AKS 現行アーキテクチャの3年廃止計画

出典: Azure Updates(Arc フィルタ) / Connected Machine agent リリースノート


3. Azure Arc Gateway とは

解決する課題

Azure Arc 対応サーバーを企業プロキシ経由で接続する場合、従来は多数の送信先 FQDN を許可リストに登録する必要がありました。エンタープライズのネットワークセキュリティチームにとっては運用負荷が高い部分です。

Azure Arc Gateway を使うと、わずか 7 個の FQDN を開放するだけで Arc へオンボードできます。

仕組み

Arc Gateway は 2 つの要素で構成されます。

  • Arc Gateway リソース: Azure 側のトラフィックの共通フロントエンド。作成すると専用ドメイン(<prefix>.gw.arc.azure.com)が払い出される
  • Arc プロキシ: Arc エージェント側に追加されるフォワードプロキシ(設定不要)

トラフィックは以下の経路で流れます。

Arc エージェント → Arc プロキシ → 企業プロキシ → Arc Gateway → 目的のサービス

裏側では 200 以上のエンドポイントを Arc Gateway が集約してくれるため、利用者は 7 つの FQDN を許可するだけで済む、という仕組みです。

開放が必要な 7 つの FQDN(サーバーのオンボード時)

URL 用途
<prefix>.gw.arc.azure.com Gateway 自身の URL
management.azure.com Azure Resource Manager 制御チャネル
login.microsoftonline.com / <region>.login.microsoft.com Microsoft Entra ID(トークン取得)
gbl.his.arc.azure.com Arc エージェント通信用クラウドサービス
<region>.his.arc.azure.com Arc コア制御チャネル
packages.microsoft.com Linux サーバーの Arc 接続
download.microsoft.com Windows インストールパッケージのダウンロード

使い方(概要)

# 1. CLI 拡張の追加
az extension add -n arcgateway

# 2. Arc Gateway リソースの作成(作成に約10分)
az arcgateway create \
  --gateway-name <gateway-name> \
  --resource-group <RG> \
  --location <region>

# 3. 既存の Arc サーバーを Gateway に関連付け
az arcgateway settings update \
  --resource-group <RG> \
  --subscription <sub> \
  --base-provider Microsoft.HybridCompute \
  --base-resource-type machines \
  --base-resource-name <server-name> \
  --gateway-resource-id <gateway-resource-id>

設定後はサーバー側で確認します。

azcmagent show    # Agent Status: Connected / Using HTTPS Proxy: http://localhost:40343
azcmagent check   # connection.type が gateway、各 URL が Reachable=true

知っておきたい制限・設計ポイント

  • グローバルサービス: ランタイム接続は Azure Front Door 経由で最寄りのエッジへ。作成時に選ぶリージョンは制御プレーンの場所のみを決める
  • 規模の目安: サーバーのみなら 1 Gateway リソースで 1 リージョンあたり約 2,000 リソース。サブスクリプションあたり Gateway リソースは最大 5 個
  • TLS インスペクション: Gateway のエンドポイント(*.gw.arc.azure.com)は TLS インスペクション対象から除外することを推奨
  • プロキシバイパス非対応: Gateway 利用時は proxy.bypass が効かない(※エージェント 1.64 で特定 FQDN を Gateway から外す「バイパスリスト」は追加)
  • 追加エンドポイントが必要なシナリオ: Defender、Azure Monitor Agent、Key Vault 証明書同期などは別途許可が必要

出典: Simplify Network Configuration Requirements with Azure Arc gateway


まとめ

  • ArcBox を使えば、オンプレ相当の環境を含めて Azure Arc をワンデプロイで体験できる。久しぶりに起動して切断する場合は **ホストの送信経路(NAT Gateway 等)**を疑うとよい
  • 直近 1 年の Arc は 監視の GA 化運用・ネットワークの簡素化が大きな潮流。エージェントは毎月更新されるので自動アップグレードを推奨
  • Arc Gateway は、企業プロキシ環境で 7 つの FQDN だけで Arc に接続できるようにする仕組み。2025/11 に GA 済みで、大規模ハイブリッド環境のオンボードを大幅に簡素化する

ハイブリッド/マルチクラウドの管理に課題を感じている方は、まず ArcBox で手を動かしてみるのがおすすめです。

参考リンク

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