ローコード・ノーコード開発の需要と展望
はじめに
ローコード・ノーコード開発とは、ソースコードの記述を最小限に抑えたり、全く行わずにシステムなどの開発ができるツールや手法です。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)やテンプレートなどを用いて、直観的に操作できる開発ツールを利用します。
非エンジニアでも開発ができるため現場目線の開発が可能で企業の DX 促進につながると注目されています。本資料では、ローコード・ノーコード開発の需要が増えていく理由や背景、メリットやデメリット、そして今後の展望について解説します。
ローコード・ノーコード開発の需要が増えていく理由
新しいアプリケーションの 70% は 2025 年までにローコードで開発される
今後 2025年までに開発される新しいアプリケーションの 70% は、ローコードで開発されると言われています。ローコード・ノーコード開発の需要が増えていく理由は、主に以下の 3 点です。
- IT 人材不足の解消
- 開発スピードの向上
- AI による開発補助
IT人材不足の解消
日本では IT 人材不足が深刻な問題となっています。経済産業省によると、2020 年時点で IT 人材の需給ギャップは約45 万人であり、2030 年には 79 万人に拡大すると予測されています。
このような状況下で、ローコード・ノーコード開発は、プログラミングスキルがなくてもシステム開発ができるという点で魅力的です。ビジネス部門や現場担当者が自ら開発に携わることで、IT 部門への依存度を下げることができます。
開発スピードの向上
ローコード・ノーコード開発は、あらかじめ用意された機能やテンプレートを GUI で操作することで、簡単にアプリケーションを作成できます。そのため、通常は数ヵ月から数年単位の時間がかかるアプリケーション開発を大幅に短縮できます。
また、ローコード・ノーコード開発では、テストやデバッグなどの工程も自動化されることが多いため、品質管理や保守も容易になります。これにより、迅速なフィードバックや改善が可能になります。
AIによる開発補助
AI を活用した開発補助ツールも登場しています。例えば、Copilot (副操縦士) は、Microsoft と OpenAI が共同開発した AI ペアプログラマーです。Copilot は、作成中に自動的に処理の候補を提案してくれます。
ローコード、ノーコード開発のメリット
ローコード、ノーコード開発には以下のようなメリットがあります。
- 開発時間やコストを削減できる
- 高度なプログラミングスキルが不要である
- プロ開発者の生産性を向上させる
- AI やクラウドサービスとの連携が可能である
開発時間やコストを削減できる
ローコード、ノーコード開発では、あらかじめ用意された機能単位を組み合わせてアプリケーションを作成します。そのため、ソースコードを一から書く必要がありません。これにより、開発期間や人件費などのコストを大幅に削減できます。
例えば、米国の調査会社 Forrester Research によると、ローコード開発では従来の方法と比べて平均 70 %もの時間短縮が可能だと報告されています。
高度なプログラミングスキルが不要である
ローコード、ノーコード開発では、GUI やテンプレートなどを用いて直観的に操作できる開発ツールを利用します。そのため、高度なプログラミングスキルが不要です。
これにより、IT 部門だけでなくビジネス部門やエンドユーザーも自分たちのニーズに合わせてアプリケーションを作成できます。また、IT 人材不足やレガシー化などの課題も解決できます。
プロ開発者の生産性を向上させる
従来の開発業務よりも少ない負担でコーディングや機能実装などの製造工程を効率化することができます。そのため開発者は、それ以外の要件定義などの上流工程に集中することができます。
AIやクラウドサービスとの連携が可能である
ローコード、ノーコード開発では、AI やクラウドサービスとの連携が容易になります 。例えば、GPT-4 やMicrosoft Copilot などの AI による補助を利用することで、コードの生成や修正、テストなどを自動化できます 。また、クラウドサービスとの連携によって、データベースやストレージ、分析ツールなどを簡単に利用できます 。これにより、アプリケーションの品質や性能を向上させることができます 。
ローコード、ノーコード開発のデメリット
一方で、ローコード、ノーコード開発には以下のようなデメリットもあります 。
- 大規模や複雑なアプリケーションには向いていない
- 機能面やセキュリティ面での自由度や拡張性が低い
- 開発ツールに依存するリスクがある
大規模や複雑なアプリケーションには向いていない
ローコード、ノーコード開発では、あらかじめ用意された機能単位を組み合わせてアプリケーションを作成します。そのため、大規模や複雑なアプリケーションには向いていません 。
例えば、ノーコード開発では、開発ツールが提供する機能の範囲内でしかカスタマイズできません。そのため、独自のビジネスロジックやインタフェースを実現することが難しいです 。また、ローコード開発では、一部のプログラミングが可能ですが、開発ツールの仕様に制限されるため、フルスクラッチ開発ほど自由度は高くありません 。
機能面やセキュリティ面での自由度や拡張性が低い
ローコード、ノーコード開発では、開発ツールが提供する機能やセキュリティ対策に依存します。そのため、機能面やセキュリティ面での自由度や拡張性が低くなります 。
例えば、開発ツールが提供しない機能を追加したり、既存システムと連携したりすることが困難だったりします 。また、セキュリティ対策も開発ツール側に任せることになるため、独自の対策を施すことができません 。
開発ツールに依存するリスクがある
ローコード、ノーコード開発では、開発ツールに依存するリスクがあります 。例えば、開発ツールのサービスが停止したり、価格が変更されたり、仕様が変わったりすると、アプリケーションの運用に影響が出る可能性があります 。また、開発ツールから他のツールへの移行も困難になる場合があります 。
そのため、開発ツールを選ぶ際には、信頼性や安定性、コストパフォーマンスなどを慎重に検討する必要があります 。
ローコード、ノーコード開発の注意点
ローコード、ノーコード開発は、今後も需要が高まると予測されています 。特に、DX 推進や働き方改革などの社会的な要因や、AI やクラウドサービスなどの技術的な進化によって、さらに多くの企業や個人が利用するようになるでしょう 。しかし、ローコード、ノーコード開発は万能ではありません。大規模や複雑なアプリケーションには向いていないことや、開発ツールに依存するリスクがあることを忘れてはいけません 。
そのため、ローコード、ノーコード開発を利用する際には、以下のような点に注意する必要があります 。
- 開発するアプリケーションの目的や規模に合わせて適切な開発手法を選択する
- 開発ツールの信頼性や安定性、コストパフォーマンスなどを慎重に比較検討する
- 開発ツールから他のツールへの移行やデータバックアップなどの対策を考える
- 開発者やエンドユーザーの教育やサポート体制を整える
今後の展望
IT 人材不足を解消するために、業務にかかわる全ての人が開発を行える環境づくりが必要です。
次の世代のアプリケーションは全ての人が開発しなければならない
これから先 10 年、業務アプリの形は変わり、作り方も変わる
ローコード 3.0 にむけて
ローコード 2.0
古くからローコード開発の手法やツールはありました。ここ数年は、ローコード 2.0 で多様な開発ツールやサービスが出てきていますが、各ツールやサービスを利用するために独自の開発トレーニングや勉強をする必要がありました。
- デジタル変革は部分的に加速したが・・・
- IT 管理工数は大幅に増加
ローコード 3.0
ローコード 3.0 では、全ての人に開発をトレーニングして勉強してもらうのではなく、ローコード開発で誰でも作れるようになるところを目指します。
全員に開発をトレーニングする→ ローコードで誰でも作れるようにする
また、開発する人間を AI がサポートするという形で進化します。
ローコード 2.0 以前 | ローコード 3.0 |
---|---|
人間 | 人間 + AI (サポート) |
- 組織全体で統一・統合された開発プラットフォームで共通したスタンダードを確立
- トップダウンから、導入を推進。統合された管理で信頼するプラットフォームを選ぶ
- 全員が参加することでスケールし組織全体の成長が見込める
- プロの開発者の生産性を爆増させて、組織全体でコンポーネント化とコラボレーションを全階層で実現する
Copilots の時代
リアルタイムの共同開発者としての AI
- コンテンツを生成し
- 創造性を掻き立たせ
- 認知タスクを自動化し
- 仕事を捗らせる
システム開発における AI はオートパイロット (全自動) ではなく、あくまでも副操縦士として開発者のパートナーとして開発をサポートします。
『蒸気機関』が製造業へ変革をもたらしたように、AI Copilots は認知活動に変革を起こします。
これからの未来は、「同僚と共に働く」から「AI と共に働く世界へ」とシフトしていきます。
真のノーコードとは・・・
「最も最適なプログラミング言語は自然言語である」。自然言語で Copilot に話しかけてシステムを構築できることを理想としています。
- AI によるサポートで、これまでのプロ開発者の作業効率を改善し生産性を向上させます。
プロ開発者に求められるもの
AI と対話するプロンプトエンジニアリングの技術
プロンプトエンジニアリングとは、AIやチャットボットに対して、ユーザーの要求や意図を正確に理解させ、適切な回答やアクションを引き出すための指示文 (プロンプト) を設計する技術です。
プロンプトとは、言語モデルに入力する指示文のことで、出力の形式や内容、スタイルなどを制御する役割があります。プロンプトエンジニアリングの目的は、言語モデルの能力を最大限に引き出し、様々なタスクに対応できるようにすることです。
AI の業務利用が増えている昨今、より AI の実用性を高めるために欠かせません。今後、ビジネスパーソンの必須スキルになる可能性も高く、AI を使いこなす人材の重要性は高まると予想されます。
上流工程でより精密な要件を引き出すコミュニケーション力
AI がしてくれることは、あくまでもサポートなので処理を手助けしてもらうには、実現したいシステムの全容をより正確に言語化する必要があります。
また、ローコード開発では、フルスクラッチでの開発のように何でもかんでも無理くり実現できませんので、要件の要点を満たせる既存機能で妥協してもらう必要性があります。要件とその実現性をより明確にしておくことが不可欠です。
IT ソムリエ
各サービスの得意不得意な部分を把握して、適したサービス連携を提案するソムリエ的な知識が求められます。AI によるサポートは、各サービスごとに特化したサポートを受けることができますが、複数のサービスをどういうふうに連携、結合させることがより効率的なのかという視点ではサポート出来るに至っていません。
極力作り込みをせず、各種サービスを組み合わせることができる知識が求められます。
まとめ
本資料では、ローコード、ノーコード開発のメリットやデメリット、そして今後の展望について解説しました。
ローコード、ノーコード開発は、開発時間やコストを削減できたり、高度なプログラミングスキルが不要であったりというメリットがあります。しかし、大規模や複雑なアプリケーションには向いていなかったり、開発ツールに依存するリスクがあったりというデメリットもあります。
そのため、ローコード、ノーコード開発を利用する際には注意点も把握しておく必要があります。適切な開発手法と開発ツールを選択し、DX 推進や業務効率化に役立てましょう。
ローコード・ノーコード開発とは何ですか?
ローコード・ノーコード開発とは、ソースコードの記述を最小限に抑えたり、全く行わずにシステムなどの開発ができるツールや手法です。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)やテンプレートなどを用いて、直観的に操作できる開発ツールを利用します。
ローコード・ノーコード開発のメリットは何ですか?
ローコード・ノーコード開発のメリットは、開発時間やコストを削減できたり、高度なプログラミングスキルが不要であったり、プロ開発者の生産性を向上させたり、AI やクラウドサービスとの連携が可能であったりすることです。
ローコード・ノーコード開発のデメリットは何ですか?
ローコード・ノーコード開発のデメリットは、大規模や複雑なアプリケーションには向いていなかったり、機能面やセキュリティ面での自由度や拡張性が低かったり、開発ツールに依存するリスクがあったりすることです。
ローコード・ノーコード開発を利用する際の注意点は何ですか?
ローコード・ノーコード開発を利用する際の注意点は、開発するアプリケーションの目的や規模に合わせて適切な開発手法を選択したり、開発ツールの信頼性や安定性、コストパフォーマンスなどを慎重に比較検討したり、開発ツールから他のツールへの移行やデータバックアップなどの対策を考えたり、開発者やエンドユーザーの教育やサポート体制を整えたりすることです。
ローコード・ノーコード開発の今後の展望は何ですか?
ローコード・ノーコード開発の今後の展望は、AI による開発補助や Copilot (副操縦士) などの AI ペアプログラマーの登場によって、より簡単に高品質なアプリケーションを作成できるようになることや、プロンプトエンジニアリングや IT ソムリエなどの新しいスキルが求められるようになることです。
参考サイト
- ノーコード・ローコード開発の年間資料請求ランキング2022|ITトレンド (it-trend.jp)
- ノーコード・ローコードのあれこれ - Qiita
- ノーコード・ローコード開発とは|違いやメリットを解説
- ノーコード・ローコードとはそもそもなに?|5分でわかる基礎情報
- ローコード開発・ノーコード開発 2022年の展望
- ローコード開発・ノーコード開発の違いは?導入の注意点も紹介
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