PLATEAUにおける品質検査とは?
3D都市モデルの正確性・一貫性を保証するための重要プロセス
PLATEAUの3D都市モデルは、建築物・道路・土地利用など多様な地物を CityGML 形式で構築します。そのデータが 国際標準に適合し、都市デジタルツインとして正しく機能する ためには、作成後に必ず「品質検査」を行う必要があります。
品質検査は、PLATEAU標準製品仕様書に定義された検査項目に基づいて、
- 完全性
- 論理一貫性
- 位相一貫性
- 属性の正しさ
- XML構造の妥当性
などを総合的にチェックする工程です。
1.品質検査の目的
①モデルの誤りを発見:
国土交通省の標準仕様に基づく品質基準でチェックします。
国土交通省 / 品質評価ツール
② 国際標準(CityGML / i-UR)への適合性を確保:
標準仕様書は、OGC CityGMLに基づいたルールで定義されており、
PLATEAUデータは必ずそれに沿う必要があります。
国土交通省 / 3D都市モデル標準作業手順書
③ downstream 利用での障害を防ぐ:
PLATEAUデータは多目的に活用されることが見込まれるので、
データ連携のエラーや不具合を未然に防ぐことが望ましいです。
ex.)都市シミュレーション、防災解析、BIM/CIM連携、XR・メタバース…
2.検査項目内容
(1)完全性(Completeness)検査
C01: gml:id の重複チェック
C02: 地物数が参照データと一致しているか
データが欠けていないか/余分なデータがないかを確認します。
(2)書式・XML構造の検査
L01: XML文法に違反していないか(Well-Formed)
L02: CityGML/i-UR スキーマに適合しているか(Valid)
L03: 未定義のクラスが含まれていないか
XMLとして読み込めない/仕様外の地物が混入していないか確認します。
(3)定義域一貫性(Domain Consistency)
L04: codeSpace(辞書値)の不整合
L05: srsName(座標系)の誤り(EPSG:6697/6668以外)
L06: 地物の座標が指定範囲から外れていないか
属性値や空間参照系の正しさを確認します。
(4)位相一貫性(Topological Consistency)
特に建築物(LOD1〜2)で重要なチェックです。
ex.)ポリゴンの向きが正しいか(外周=反時計回り)
平面性が保たれているか(同一平面上にない点がない)
内周と外周が交差していないか
Solid(立体)の境界面が閉じているか/自己交差していないか
※これらのエラーは、立体形状として破綻している場合に発生します。
(5)分類の正しさ(Thematic Accuracy)
ex.)XLink先の型が正しいか
建築物LOD2が Solid/Multisurface 以外で記述されていないか
データ構造と意味的な整合性をチェックします。
国土交通省 / 品質評価ツール
3.品質検査ツールとプロセス
【使用される主なツール】
- FME / FME Flow(PLATEAUアカデミーで公式使用)
⇒CityGML変換と品質検査に利用され、多くの実務者が採用。
出典 - PLATEAU-Builder(公式ツール)
⇒CityGMLの編集・品質検査・可視化を行うオープンソースツール。
github
【検査プロセス例】
1)CityGMLファイルを検査ツールに入力
2)自動検査を実行
3)ログにエラー箇所が表示
4)エラー付きの地物が 3Dビューで赤色ハイライト表示される※1)
5)QGIS等で該当ポリゴン・属性を修正
6)再度品質検査 → エラーゼロを確認


※1)PLATEAU-Builder では、エラー箇所をクリックすると該当地物がハイライトされ、視覚的に確認できます。出典
PLATEAUアカデミー講義テキストより:
品質検査は作業で作成したPLATEAU仕様に従ったCityGMLファイルができたかどうかを
FMEによる検査(以下、3項目)と目視による検査(QGIS)を行います。
- 各地物モデルに共通した検査
- 各地物モデルに共通した必須属性の検査
- 各地物モデルに特化した検査
4.まとめと課題
(まとめ)
PLATEAUの品質検査は、
✔ 3D都市モデルの標準準拠(CityGML/i-UR)を保証
✔ 形状・属性・XML構造のエラーを検出して修正
✔ downstream 利用(都市計画、防災、XR、BIM/CIM)での安全性を確保
するための必須プロセスです。
都市デジタルツインとして信頼性の高いデータを維持するうえで欠かせず、データ整備者だけでなくデータ利用者にとっても重要な工程といえます。
(課題)
分野を横断した連携、新たな価値創出が期待できるPLATEAU。エコシステムとして裾野を広げるためガイドライン整備や様々なユースケースがリリースされているが、現時点では一気通貫で操作できるシステムがないので、柔軟にツールを使いこなせる人材の確保が喫緊の課題かと思いました。
5.おわりに
裾野拡大⇔異業種の人材交流・育成のためには、アドベントカレンダー等、SNSを有効活用・発信していくコミュニティ構築は改めて大切だと実感しているところです。
PLATEAU事務局の皆さま、講師の皆様、有意義な2日間でした。
ありがとうございました!!!