本記事は、RUNTEQ Advent Calendar 2025🎄 に参加しています。
今年のテーマは『みんなにおすすめしたい〇〇tips』🌟
そこで、今回は私が実践しているマインドセットである「せやかて駆動開発」をご紹介します。
せやかて駆動開発とは何か
「せやかて駆動開発」とは、一言でいえば “言い訳を起点に行動を最小化し、本質だけを拾いにいく開発マインドセット” である。
「せやかて工藤」とは
名探偵コナンでお馴染み服部 平次の作中で江戸川コナンを呼ぶ時に使われるセリフで、「でも」「しかし」の接続詞ミームとしてTwitterなどで愛用されている。なお、実は服部平次のセリフに「せやかて工藤」は登場したことがない。
ジュニアの頃は、世の中の「すべきことリスト」が雪崩のように押し寄せてくる。
- 本を読め
- 個人開発をしろ
- 技術記事を書いてアウトプットしろ
- OSS にコントリビュートしろ
- アーキテクチャを学べ
- アルゴリズム力もつけろ
……などなど。
ここで登場するのが、あの言葉である。
「せやかて工藤……」
そう、あのミームは、ジュニアエンジニアの心の声を代弁してくれている。
- 「せやかて工藤、ワイにはそんな時間ないぞ」
- 「せやかて工藤、今は仕事が忙しいんや」
- 「せやかて工藤、何から手をつけたらええねん」
だが実は、この “せやかて” こそが、ジュニアが成長するための 最初のドライバー になり得る。
「せやかて」は“やらない理由”ではなく“やる理由”に転換できる
多くの人は「せやかて」を 行動しない言い訳 として使ってしまう。しかし、せやかて駆動開発では、これを 行動を絞り込むフィルター として扱う。
コツは、
- せやかての中身を具体的に愚痴ること
- 「自分がやりたいこと」が含まれているかを少し落とし込んで考えること
の2点である。
せやかての中身を具体的に愚痴ること
まず重要なのは、「せやかて工藤……」の後に続く“愚痴”をきちんと具体化することである。
多くの場合、行動できない理由は「時間がない」「難しそう」「やったことがない」など、ふわっとした不安の塊になっている。そしてこの “漠然とした塊” が、行動を止める最大の原因だ。
これは誰にでも経験があり、そして当たり前だ。
だからこそ特に問題が無いように見えるが、このふわっとした行動原理や不安感、しんどさが積み重なったときに「もう辞めたい」「自分には向いていない」「あの人はすごいが自分はダメだ」という思考に繋がることもある。意外と働く上で重要なファクターなのである。
そこで一度、開き直ってこう考えてみる。
せやかて工藤、正直に言うとワイはいま何にビビってるんや?
たとえば、
- 「時間がない」
→ 毎日30分も確保できる気がせぇへん - 「難しそう」
→ ドキュメントとか読む気にならん…英語…字が多い… - 「経験がない」
→ テスト書いたことないし、やり方間違えたら恥ずかしい
このように 愚痴を細かく分解するだけで、“自分が何を恐れているか” の正体が見えてくる。
そして面白いことに、人は 正体がわからないものに対して最大の不安を抱く。
逆に、正体さえわかってしまえば不安のサイズは一気に縮む。
- 「時間がない」→ 実は 10 分なら捻出できそう
- 「難しそう」→ まとめ記事だけなら読めるかも
- 「知らない」→ 1 ケースだけ真似して書けばいい
というふうに、劣等感や不安が“行けそうな気がするタスク”へと変換されていく。
ここが、せやかて駆動開発の最初のコツである。
愚痴を具体的にすることで、自分の弱点が輪郭を持って現れ、
その瞬間に「この勝負、もろたで工藤!!!」という小さな確信が生まれるのだ。
「自分がやりたいこと」が含まれているかを落とし込む
愚痴を具体化して不安の正体が見えたら、次は
「いまの“せやかて状態”でも、やりたいと思っている部分はどこか?」
を見つけにいくステップである。
ここで重要なのは、
“せやかて” を感じている精神状態のとき、人は本当にやりたくないことは絶対にできない
という事実だ。
- 気力が足りない
- 情報が多すぎて疲れている
- 「やらなきゃ」が重荷に感じる
そんな心のコンディションで “義務感でやる学習” を押し込むと、ほぼ確実に挫折する。集中して仕事をした方が数倍マシである。
だからこそ、
いまの自分が自然に向ける「やりたい・好き・興味ある」の方向に寄せる必要がある。
「せやかて」と「やりたい」が同居する瞬間を逃さない
例えば、私自身の話をすると、
書籍を読むのがとにかく苦手で、中身がまったく頭に入ってこない。
「この本を読めばスキル上がるで」と言われても、反射的にこう思う。
せやかて工藤、読む集中力がもう残ってへんのや……
だが一方で、アプリを作ること自体はめちゃくちゃ好きだ。
本の内容は確かに勉強したいと思っている。でも本を読むどころか開くのも嫌だ。
そんな「せやかて」と「やりたいけど...」が同居した時、私はまずこうする。
- 書籍を読むかわりに、その日のうちにアプリ案をメモる
- 勧められた書籍の代わりに、その本に関連する内容や手法を用いたアプリの小さな部品だけ作ってみる
- 「本で学ぶ」は諦めつつ、「作ることで学ぶ」方向にずらす
つまり、精神負荷が高くて“やりたくないこと”は潔く避ける。
その代わり、自分の興味と楽さの方向に小さくスライドさせて行動を作る。
これが “やりたいことを落とし込む” という考え方の本質だ。
実際に作ってみる情報源として本の該当部分だけを読んだり、
「Google ログインの仕組み、ちょっと体系的に知りたいな」みたいに、興味の射程が自然に広がる。
そして何より、“自分頑張ってる感” が得られる。
これは意外に大事で、自己肯定感を他者に依存せず自分で作れる能力は、長く働くうえで非常に大きな武器になる。
なぜこの方法がうまくいくのか?
理由はシンプルで、
やりたいことなら「せやかて状態」の脳と心でも動けるから。
- 読書は無理でも、アプリ案のメモならできる
- 難しい設計は無理でも、1つのコンポーネントなら作れる
- 大きな学習は無理でも、小さな試行ならできる
こうした “行動可能な最小単位” が、
精神的に余裕のないタイミングでも 継続の火種になる。
せやかて駆動開発が優れているのは、
やる気の最大値ではなく、やる気の最小値に寄り添って行動を生成する点にある。
逆に、もうやりたいと思えないほど疲れているときにはやらなくて良い。休むべきである。自分の元気度を測るバロメーターとなる。バーローである。
そしてもう1つのコツは、
「せやかて」かつ「やりたい」状態の瞬間を逃さず行動すること。
- アドベントカレンダーなどのアウトプット機会を先に確保する
- 輪読会に誰か巻き込む
- “今から1週間だけ” と期間を区切って小さく作る
この方法に慣れてくると、無意識に行動のハードルも下がるので、アウトプットの機会を2ヶ月に1回程度勝手に設定するようになる。気付くと技術書典に初めて参加したり、地元でもくもく会を企画したり、ひとりアドベをやっているなど、「あ、やりたいかも」と思ったら勝手に予定が入っている。本音の9割はめんどくさいのに、後の1割がやりたいため、なぜか行動している。なぜ私は何かに追われている??恐ろしい。どうしてこうなった。
一方で、自分がやりたいことをやっているため、「あーーーーめっっちゃ大変だったけどやってよかった」という満足感も積み重なっていく。その積み重ねは、仕事でケチョンケチョンになった自己肯定感やモチベーションを上げる機会になるのだ。
学ぶべき内容は後からいくらでも無限に存在するので、まずは行動のハードルが下がるまで「せやかて駆動開発」をするのがおすすめである。
また、「せやかて」かつ「やりたい」状態を深ぼる作業は、顧客の要望整理にも使えるやり方なので顧客の「でもさー」「本当はやりたいけど」を深掘りする練習としてやるのもおすすめである。
なぜジュニアほど「せやかて駆動開発」が効くのか
1. 成長コストを下げられる
最小限のトライを積むだけで経験値が急激に増える時期がジュニア。せやかて駆動開発は、その “最小トライ” を作り出す仕組みである。
2. 自己効力感を削らない
「全部やらなきゃ」と思うと心が折れる。
「せやかて工藤、これだけならできるわ」
くらいの気持ちで進むことで、前向きなサイクルを作れる。
3. 仕事や家庭との両立がしやすい
大規模な投資が不要なので、忙しい時期でも継続できる。
また、このやり方は私が子持ちの未経験転職エンジニアだからこそ実践しているTipsでもある。
まとめ:「せやかて」は前進の合図
冒頭に述べた通り、ジュニアには、たくさんの「すべきことリスト」が雪崩のように押し寄せてくる。
学習だってキャリアだって、正解が見えずに不安が押し寄せてくる。
そんなときにこそ思い出してほしいのが 「せやかて駆動」 である。
せやかて という言葉は、
一見 やらない理由 を示すように見えて、実は
いまの自分が何に不安を感じているか
どこに負荷があるのか
それでも心の奥で何をやりたいと思っているのか
を教えてくれる 最初の観測ポイント になる。
まとめると、
- 「せやかて工藤...」
- 言い訳の正体を観察する(不安を可視化する)
- 行動の最小単位を作る(やりたい方向へ寄せる)
- 「この勝負、もろたで工藤!!!」
重要なのは、
やる気の最大値に頼るのではなく、やる気の最小値を支えること。
その小さな行動ひとつひとつが、やがて “ちゃんとできる自分” を作っていく。
怠惰でも不安でも忙しくても、「それでも成長したい自分」を見失わないための灯り になる。他人と比較し、不安や転職を考えがちなジュニアエンジニアこそ、自分のためにぜひ実践してほしいTipsである。
釣りタイトルのつもりが思ったよりもマジな内容になってしまい、自分が一番驚いている。願わくば、一緒にジュニア期を乗り越えて先輩方のようなつよつよエンジニアになれるよう成長を続けていきたい。
最後まで読んでいただき有難うございました。