前置き
ネットワークセグメントの設計は、クラウドアーキテクチャの基本的な構成要素です。
クラウドアーキテクチャは、クラウド上でのアプリケーション全体の構造とコンポーネントを定義します。
対して、ネットワークセグメントは、それらのコンポーネントを整理し、分離し、保護するために使われる主要なツールです。
主な関わり
さて、ネットワークセグメントの設計を考えることと、クラウドアーキテクチャはどういう関わりを持つのかを見ていきましょう。
セキュリティ境界 🛡️
クラウドアーキテクチャは、ネットワークセグメント(VPC、サブネット、セキュリティグループ/ファイアウォールなど)に大きく依存してセキュリティ境界を作成します。
異なる層(Web、アプリ、データベース)、環境(本番、開発)、あるいは個々のマイクロサービスを分離するためにセグメントを設計し、それらの間で許可されるトラフィックを正確に制御します。
これは、クラウドアーキテクチャ内で最小権限を実装し、セキュリティインシデント発生時の 影響範囲(爆発半径)を限定 する方法です。
アベイラビリティゾーン(AZ)とリージョン 🌍
クラウドアーキテクチャは、リソースを複数のAZやリージョンに分散させることで高可用性を実現するように設計されます。
ネットワークセグメント(特にサブネット)は、リソースをこれらの異なる物理的な場所に配置し、冗長性を確保するためのメカニズムです。
パフォーマンス最適化 ⚡️
クラウドアーキテクチャは、どのコンポーネントが低レイテンシ通信を必要とするかを規定します。
ネットワークセグメント設計は、これらのコンポーネントを同じセグメント(例:同じAZサブネット)内に配置することで、ネットワークホップとレイテンシを最小限に抑え、これを実装します。
逆に、低レイテンシを必要としないコンポーネントは、異なるセグメントやリージョンに配置できます。
スケーラビリティ 📈
クラウドアーキテクチャの異なる部分には、異なるスケーリング要件があります。
ネットワークセグメントを使用すると、
リソースをグループ化し(例:Webサーバーを1つのサブネットに、アプリケーションサーバーを別のサブネットに)
各セグメントに特定の自動スケーリングポリシーを個別に適用
できます。
コンプライアンス要件 📜
多くのコンプライアンス基準(例:決済データに関するPCI DSS)では、機密システムを分離するために厳格なネットワークセグメント化が明示的に要求されます。
クラウドネットワークアーキテクチャには、これらのセグメント化要件を組み込む必要があります。
ここのまとめ
要するに、ネットワークセグメント化について考えずに堅牢なクラウドアーキテクチャを設計することはできません。
アーキテクチャは「何」を接続し、分離する必要があるかを定義
ネットワークセグメント化はクラウドプロバイダーの環境内で「どのように」それを達成するか
を提供します。
Podと配置図の関係
1つのPodが別々のネットワークセグメントにまたがって配置されることはありません。
詳細な理由
PodはKubernetesにおける最小のデプロイ単位です。
そして、その中のコンテナ群は単一のネットワーク名前空間(つまり、単一のIPアドレスとポート空間)を共有します。
これは、Podが配置図(Deployment Diagram)上で 1つの「ノード」または「実行環境」 として扱われる理由でもあります。
Pod自体は、クラスター内の特定のPodネットワーク(通常は単一のフラットなネットワーク空間)に属します。
Pod間の通信を制御するためのネットワークセグメント化(例:異なるサブネットやVLANへの配置、Network Policyによるアクセス制御)は、Podが稼働するノード(物理的または仮想的なマシン)のレベルや、KubernetesのNetwork Policyといった Podの「外側」 の仕組みで適用されるのが普通です。
よって、Podの「内側」が複数のセグメントに分割されることはありません。
