不変インフラの安全性
不変インフラは、セキュリティレベルの更新に伴うセグメント変更を非常にシンプルかつ安全にします。
不変インフラとは? 🧊
まず、不変インフラ(Immutable Infrastructure)とは、サーバーやコンテナなどのインフラを一度デプロイしたら一切変更しないという考え方です。
変更が必要な場合は、既存のものを修正するのではなく、新しいものを構築して古いものと置き換えます。
まるでOSを毎回クリーンインストールするようなもの。
セキュリティ更新とセグメント変更のシナリオ 🔄
例えば、あるサービスコンポーネントが当初は内部向け(Appセグメント)だったが、セキュリティ要件の変更により外部公開が必要になり、DMZセグメントに移動する必要が出てきたとします。
関係性:不変インフラがもたらすメリット ✅
不変インフラを採用している場合、このセグメント変更は以下の安全かつシンプルな手順で行われます。
①. 新しいインスタンス/コンテナを構築
既存のインスタンスには一切触れず、**新しいネットワーク設定(DMZセグメントのIPアドレスやセキュリティグループ)**を持つ、全く新しいインスタンス(またはコンテナイメージ)を構築します。
②. 新しいセグメントにデプロイ
この新しいインスタンスを、ターゲットとなるDMZセグメントにデプロイします。
③. テスト
新しいインスタンスがDMZセグメントで正しく動作するかをテストします。この間、既存のインスタンスはAppセグメントで通常通り稼働し続けています。
④. トラフィックの切り替え
ロードバランサーなどの設定を変更し、トラフィックを古いインスタンス(Appセグメント)から新しいインスタンス(DMZセグメント)に切り替えます。
⑤. 古いインスタンスの破棄
新しいインスタンスが問題なくトラフィックを処理していることを確認したら、Appセグメントにあった古いインスタンスを**完全に破棄(削除)**します。
もし不変インフラでなかったら?⚠️
既存のインスタンスの設定(IPアドレス、ファイアウォールルール、ネットワークインターフェースの接続先など)を直接変更する必要があります。
これは以下のようなリスクを伴います。
設定ミスによるネットワーク障害。
変更作業中の一時的なダウンタイム。
問題発生時の切り戻し(ロールバック)の複雑さ。
ここのまとめ
不変インフラは、「置き換え」によって変更を行うため、セグメント移動のようなネットワーク構成の大幅な変更であっても、稼働中のシステムへの影響を最小限に抑え、安全かつ確実に実行することを可能にします。
不変インフラと不変オブジェクトのアナロジー
不変インフラ(Immutable Infrastructure)と不変オブジェクト(Immutable Objects)は、非常に強いアナロジー(類推)の関係にあります。
どちらも「一度作成(デプロイ)したら、変更しない」というコアな原則を共有
しており、それによってシステムの予測可能性と信頼性を高めようとする思想です。
不変インフラ (Immutable Infrastructure) 🧊
変更が必要な場合は、既存のものを修正するのではなく、新しい構成で完全に置き換えます。
変更方法
既存インフラ(v1)はそのままに、変更を加えた新しいインフラ(v2)を構築し、ロードバランサー等でトラフィックをv2に切り替え、v1を破棄する。
メリット
・予測可能性
稼働中のインフラの状態が常に「デプロイ時の初期状態」と同じであることが保証される。
・一貫性
開発環境から本番環境まで、全く同じ構成を再現できる。
・簡単なロールバック
問題があれば、古いバージョン(v1)にトラフィックを戻すだけでよい。
不変オブジェクト (Immutable Objects) 💎
オブジェクト指向プログラミングにおいて、一度作成したらその内部状態(属性値)を変更できないオブジェクトのこと。
状態を変更したい場合は、変更された状態を持つ新しいオブジェクトを作成します。
JavaのStringやIntegerが代表例です。
変更方法
String name = "Alice"; name = name.toUpperCase(); は、元の"Alice"オブジェクトを変更するのではなく、"ALICE"という新しいStringオブジェクトを作成し、name参照をそちらに向け替えています。
メリット
・予測可能性
オブジェクトの状態が途中で変わらないため、コードの振る舞いを追いやすくなる。
・スレッドセーフ
複数のスレッドから同時にアクセスされても、状態が変更されないため安全。
・デバッグ容易性
状態変化の追跡が容易になる。
両者の共通点 (Similarities) ✨
不変性 (Immutability)
これが核心です。どちらも「作成(デプロイ)後の変更」を禁止します。
変更は「置換」で行う
既存のものをいじるのではなく、新しいものを作って置き換えます。
予測可能性と一貫性の向上
「いつの間にか状態が変わっていた」という問題を排除し、システムの振る舞いを理解しやすくします。
ロールバック/履歴管理の容易さ (Easy Rollback/History)
古いバージョン(インフラ/オブジェクト)に切り替えるのが簡単です。
副作用の低減
ある部分への変更(新しいインフラのデプロイ/新しいオブジェクトの作成)が、意図せず他の稼働中の部分に影響を与えるリスクを減らします。
両者の違い (Differences) ↔️
結論
不変インフラは、不変オブジェクトの設計思想をインフラのレイヤーにスケールアップして適用したものと考えることができます。
どちらも、変更による複雑さとリスクを管理するための強力な設計パターンです。
