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Four Keysを用いたKPIマネジメントのための手順

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前置き

「事実データ(パイプラインメトリクス)」を「経営戦略(マーケティング改善)」に直結
させるための、継続的な改善ループの思考のフレームワークをご紹介します。

このメカニズムは、

TOC(制約理論)が改善の「戦略的コンパス」として「どこを」改善すべきか

を指し示し、

ECRSが「戦術的ツール」として「どう」改善するか

を実行する、強力なフィードバックサイクルです。

この一連の流れを、TOCの5ステップに沿って体系立てて分解します。

フェーズ1:制約の特定 (TOC ステップ1)

ここは、制約の特定のみ を行います。

そもそも、

ここでボトルネックの特定が間違うと、後述のステップはすべて間違った戦略に沿った行動になってしまいます。

目的

組織のデリバリー能力を最も制限している「単一のボトルネック」を事実データから特定する。

ステップ1.1:プロセスの可視化とメトリクスの収集

活動

まず、開発からデリバリーまでの全工程(パイプラインアーキテクチャ)を可視化します。

事実データ

Four Keys (DF, LT, CFR, MTTR) やFindy+などのツールデータを収集し、

「マーケティング戦略上の目標(例:週次でのA/Bテスト実行)」と
「現実のパイプラインのメトリクス(例:LTが2週間)」とのギャップ

を定量化します。

ステップ1.2:ボトルネックの特定 (TOC Step 1)

活動

収集したメトリクスを分析し、Four Keysの数値を最も悪化させている原因(=デリバリー上の最大のボトルネック)を1つ特定します。

ボトルネックは1つです! ここで複数列挙しないでください。

事例

「変更のリードタイム(LT)が2週間もかかっている」ことがボトルネックだと特定。

フェーズ2:改善計画の立案 (TOC ステップ2 & 3 + ECRS)

ここは、TOCの5ステップの2つ目、3つ目を主に行います。

image.png

目的

特定されたボトルネックの根本原因を分析し、ECRSを用いてコストをかけずにスループットを最大化する改善計画を立てる。

ステップ2.1:根本原因のモデリング(原因分析)

活動

ボトルネック(例:LTが2週間)の根本原因を深掘りします。

ここで、「ロジックブランチモデル」(なぜなぜ分析や特性要因図)を用います。

image.png

定量データ

パイプラインの各ステージの実行時間を分析します。

分析結果

「LTが2週間」の最大の原因は、「パイプライン中のE2E Testステージが48時間もかかっている」ことだと定量的に特定します。

ステップ2.2:ボトルネックの徹底活用 (TOC ステップ2 + ECRS)

活動

ボトルネック(E2E Test)が1秒も無駄にならないよう、プロセスそのものに対してECRSを適用します。

ECRSの適用(戦術)

ここで、Eがもっとも効果が高いですが、それが無理そうなら、まずはSimplifyから始めてください。

・E (Eliminate - 排除)

このE2E Testで実行しているテストケースの中に、不要なものはないか?(例:Unit Testと重複しているケースを排除する)

・S (Simplify - 単純化)

テストのロジックを単純化できないか?(例:コントラクトテストで代替し、環境構築を単純化する)

・R (Rearrange - 順序変更)

直列実行されているテストを並列実行に順序変更できないか?

ステップ2.3:非・ボトルネックの従属 (TOC ステップ3)

活動

ボトルネック(E2E Test)以外のプロセスが、ボトルネックを妨害しないようにします。

ここでは、ボトルネック以外の能力を底上げしても、かえってボトルネックを詰まらせます。 よって、【やめる(Eliminate)】 が基本です。

事例

E2E Testが実行されている間は、リソースを食い合う可能性のある他の重いパイプライン(例:夜間バッチ)の実行を停止させます。

フェーズ3:改善の実行とKPI化 (TOC ステップ4)

目的

ECRSで立案した改善計画を実行し、その計画の完了自体を「新しいKPI」として設定・追跡する。

ステップ3.1:改善計画の策定

活動

ステップ2.2のECRS分析に基づき、具体的なアクションプランを作成します。

計画例

E2E Test(48時間)を 排除(E)し、CI段階で実行可能なコントラクトテスト(S) に置き換える。これにより、LTを48時間から2時間に短縮する。」

ステップ3.2:改善計画のKPI化

活動

この「改善計画の実行」自体が、チームの新しい最優先KPI(あるいはOKR) として設定されます。

新しいKPI (OKR) の例

・Objective

デリバリーのボトルネックを解消し、週次のマーケティング施策を可能にする。

・Key Result 1

E2E Testを100%コントラクトテストに置き換える。(ECRS計画の実行)

・Key Result 2

パイプラインのLT(リードタイム)を24時間以内に短縮する。(結果の計測)

ステップ3.3:アーキテクチャの変更 (必要な場合)

活動

もしこのKPI(コントラクトテストへの移行)を達成するために、システムアーキテクチャの変更(例:同期通信を非同期イベントに変更)が必要だと判明した場合、
その変更を可能にするためのCI/CDパイプラインアーキテクチャの変更を先に行い(TDDの発想)、安全な「足場」を構築した上で、システムアーキテクチャの変更を実行します。

フェーズ4:評価と次のループへ (TOC ステップ5)

目的

ボトルネックが解消されたことを確認し、次のボトルネック特定のプロセス(フェーズ1)に戻る。

ステップ4.1:結果の評価

活動

E2E Testがコントラクトテストに置き換わり、LTが2時間になったことを 事実データ(Four Keys) で確認します。

マーケティング戦略への反映

これにより、当初の目標だった「週次でのA/Bテスト実行」が可能になります。

ステップ4.2:ステップ1に戻る (ループ)

活動

E2E Test(旧ボトルネック)は解消されました。
しかし、TOCによれば、必ず「次」のボトルネックがシステムに出現します。

次のボトルネックの特定

再度Four Keysを計測します。
今度は「デプロイ後のCFR (変更障害率)が20%」が新しい最大のボトルネックとして特定されるかもしれません。

ループ

そして、この新しいボトルネックに対して、再びフェーズ2のECRS分析が開始されます。

まとめ

以上が、パイプラインの事実データに基づき、TOCとECRSを用いて継続的にマーケティング(デリバリー)能力を改善し続けるための、具体的なメカニズムです。

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