前置き
・モデルベースでビジネスアーキテクチャからアプリ、インフラアーキテクチャまで描かれ、各階層でのメトリクスデータの関係性(DA)を描けている。
この状態で、
・テストアーキテクチチャもBA、AA、TA3層でモデルベースで描けている。
これにより、CI/CDパイプライン上でのテストログなどのモニタリング結果から、
「このプロセスはあまりにも時間がかかりすぎている。その理由はなぜなのだろうか?→テスト対象のモジュールがあまりにも責務が大きすぎる。」
といったように、エンタープライズアーキテクチャ全体レベルで設計改善の根拠に繋げられると思いませんか?
そしてこれこそTOC駆動型のアジャイルスプリントを全社的に行いやすくすることにまで繋がり、アジャイル経営と言える姿ではないでしょうか?
なぜそのメカニズムが成立するのか
上記のメカニズムは、
「テスト(CI/CDログ)」という“事実データ”を「アーキテクチャ設計(モデリング)」にフィードバックする
という、強力なループを構築しています。
1. 観測(モニタリング):「痛みの発見」
「このプロセスはあまりにも時間がかかりすぎている。」
CI/CDパイプラインのモニタリング(オブザーバビリティ)は、TOCのステップ1(制約の特定)を自動的に行います。
パイプラインのログやFour Keysは、「デリバリーのボトルネックはどこか」 を定量的な事実として示します。
2. 分析(ロジックブランチ):「原因の特定」
「その理由はなぜなのだろうか?」
→ 「テスト対象のモジュールがあまりにも責務が大きすぎるからだ。」
事実:「ビジネスモジュールのテストと、それに対応するインフラコードのテストが両方とも時間がかかりすぎている。」
→ アブダクション:「モジュールの責務が大きすぎるのではないか?」
これらは、アブダクション(仮説形成推論)による 根本原因分析 です。
観測された「症状(テストが遅い)」という事実から、モデル(アーキテクチャ図)と照らし合わせ、
「この症状を最もよく説明する 原因(仮説) は、アーキテクチャの“責務分割の失敗”(=凝集度が低く、結合度が高い) である」
と推論します。
3. 実行(設計改善):「制約の解消」
「これは明らかにビジネスアーキテクチャ上でモジュールを論理的にもっと細かく分けて、下位のインフラコードまでそれに伴い細かく責務を分割すべきである。」
これは、TOCのステップ2(徹底活用)やステップ3(従属)を超え、ステップ4(強化=アーキテクチャ変更)の意思決定です。
ボトルネック(遅いテスト)の根本原因が「設計(モデリング)」にあると特定したため、
その設計自体をリファクタリングする(=モジュールの責務を細かく分割する)という、最も効果的な改善策に繋げます。
アジャイル経営への繋がり
そしてこれこそTOC駆動型のアジャイルスプリントを全社的に行いやすくすることにまで繋がり、アジャイル経営と言える姿ではないでしょうか?
「アジャイル経営」とは、経営層が「勘」や「昨年の実績」ではなく、
「現場から上がってくるリアルタイムの事実データ」 に基づいて、
迅速に(アジャイルに)経営判断(リソース配分、戦略変更) を行う
ことです。
現場からの声を勘や経験に基づいて無視しているとかは、アジャイル経営なんて夢のまた夢です。おととい来やがれレベルです。
1. 事実データ
パイプラインが 「テストが遅い(=デリバリーが遅い)」という事実 を経営層に提示します。
2. 経営判断
経営層は、「デリバリーが遅い」という制約を解消することが、次の四半期の最重要課題であると意思決定します。
3. 全社的TOC
この経営判断に基づき、全社的なTOC駆動型アジャイルスプリントがキックされます。
4. 現場の実行
現場(開発チーム)は、「なぜ遅いか」をモデルとデータで分析し、
「アーキテクチャの責務分割(リファクタリング)」 という根本解決を次のスプリントの最優先事項として実行します。
これは、現場の技術的なメトリクス(テスト時間)が、経営層の戦略的な意思決定(アーキテクチャ変更への投資)と一貫して結びつき、
全社が同じボトルネック(制約)の解消に向かって動く
という、究極のアジャイル経営の姿です。
まとめ
「モデルベース」と「メトリクス駆動」 を組み合わせ、TOC(制約理論)を全社的に実践する「アジャイル経営」の理想的な姿そのものです。