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学習駆動型TOCアジャイルスプリント・フレームワーク

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前置き

私がアジャイルに必須と感じている、以下の複数の思考や原則たち。

・TOC(制約理論)& ECRS原則
・仮説行動(マップ・ループ・リープ)
・各種推論(帰納・演繹・アブダクション)
・そして思考法(クリティカル・ラテラルシンキング)

これらをすべて統合した、「学習駆動型TOCアジャイルスプリント」 フレームワークをまとめます。

このフレームワークは、事実(メトリクス)に基づき推論を駆使して制約を特定・改善し、思考法を用いて前提すらも疑い、継続的に学習していくサイクルを回すことを目指します。

フェーズ⓪:戦略的マップの維持 (Ongoing Map Maintenance) 🗺️

目的

現在の理解(ビジネス目標、システム構造、既知の制約、市場環境)を 常に最新の「マップ」 として可視化・共有する。

image.png

市場環境とは、たとえば5フォースモデルや3Cモデルなどを指します。

活動

継続的な情報収集、ステークホルダーとの対話を通じてマップを更新。

フェーズ①:スプリント計画 (Sprint Planning)

目的

マップに基づき、今スプリントで検証・改善すべき「最重要仮説(=制約)」を定義し、具体的なアクションプランを立てる。

image.png

ステップ1.1:前提の再検証 (Lateral Thinking) 🤔

活動

前回のレトロスペクティブで特定された「次の制約候補」や、
マップ上の既知の制約に対し、

ラテラルシンキング(水平思考)を用いて「本当にそれが今の制約か?」「別の見方はないか?」

と意図的に前提を疑う。

「リードタイムの制約は本当にテスト時間か? もしかしたら承認プロセスではないか?」

ステップ1.2:制約仮説の定義 (TOC Step 1 - Deduction/Induction)

活動

・演繹法 (Deduction)

マップと現状のメトリクスから論理的に

「今、最も全体の流れを阻害しているのは、このプロセスXである可能性が高い」

という制約仮説を導き出す。

・帰納法 (Induction)

過去のスプリントの傾向(「最近、デプロイ失敗が多いのはYが原因のことが多い」)から、制約仮説を補強する。

成果物

「今スプリントで検証・改善すべき制約はプロセスXである」というチームの合意仮説。

ステップ1.3:改善計画の立案 (TOC Step 2 & 3 - ECRS Planning via Deduction) 📝

活動

制約仮説Xに対し、ECRS原則を用いて具体的な改善アクション(ループ改善か、リープ的な実験か)を演繹的に導き出す。

例 (ループ改善)

制約が「テスト時間」なら、「(E)不要テスト削除」「(R)並列化」タスクを計画。

例 (リープ実験)

制約が「古い決済基盤」なら、「新しい決済SaaSの技術検証(PoC)」タスクを計画。

成果物

スプリントゴール(例:「テスト時間を30%削減する仮説を検証する」)と、ECRSに基づいたスプリントバックログ。

フェーズ②:スプリント実行 (Sprint Execution)

目的

計画された改善アクション(ループまたはリープ)を実行し、データを収集する。

ステップ2.1:アクションの実行 (Loop / Leap Execution) 🔄🚀

スプリントバックログに従い、ECRSタスクやリープ実験を実行する。

ステップ2.2:メトリクスの計測 (Measurement) 📊

Four Keys、パイプライン実行時間、エラーレートなど、制約仮説の検証に必要な定量データを計測・収集する。

フェーズ③:スプリントレビュー & レトロスペクティブ (Sprint Review / Retrospective)

目的

実行結果と事実(メトリクス)に基づき、仮説を検証し、学習し、次の制約を特定する。

ステップ3.1:結果の客観的評価 (Critical Thinking) 🧐

スプリントゴールに対する達成度を、収集した メトリクス(事実データ) に基づき、
クリティカルシンキング(批判的思考) を用いて「計画通りに進んだか?」「結果はどうか?」を客観的に評価する。

ステップ3.2:仮説検証と学習 (Abduction) 💡

アブダクション(メトリクスを用いて使用)がここでは活躍します。

活動

観測された結果(メトリクス) に対し、

アブダクション(仮説形成推論)を用いて「この結果を最もよく説明する仮説は何か?」

を推論します。

例1

「テスト時間は短縮したが、リードタイム全体は変わらなかった。この結果を最もよく説明するのは、実は承認プロセスが真の制約だった、という仮説だ」

例2

「新しい決済SaaS(PoC)の性能は目標を達成した。この結果は、決済基盤の移行(リープ)が有効である、という仮説を支持する」

成果物

検証された(あるいは棄却された)仮説と、そこから得られた学習(Learning)。

ここで得た学習は、必ず 情報 だけで済ますのではなく、帰納法を使って 知恵 に昇華してください。(知恵は揮発性が高いので)

ステップ3.3:マップの更新と次の制約の特定 (TOC Step 5) 🗺️➡️🎯

活動

学習に基づき、仮説マップを更新する。

そして、アブダクションの結果や更新されたマップに基づき、

「次のスプリントで検証すべき、最も可能性の高い制約は何か?」

を特定する。

成果物

次のスプリント計画(フェーズ①)へのインプットとなる、新しい(あるいは継続する)制約仮説。

まとめ

このループ(フェーズ⓪〜③)を繰り返すことで、チームは

・事実と推論に基づき、
・制約を継続的に特定・解消し、
・学習し、
・時には前提すらも疑いながら

システムとプロセスを進化させていきます。

これこそが、わたしがカオス実験案件などを通して行きついた、仮説検証型アジャイルの現代版の進行プロセスです。

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