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前置き

「おとぎ話サーガ(同期連携)」から「パラレルサーガ(非同期連携)」へのアーキテクチャ移行を、「マップ」「ループ」「リープ」の考え方を使って高速に、かつ安全に進めるための仮説探索型アジャイルプロセスをフレームワークとして提示します。

このフレームワークは、技術的な不確実性(リスク) を特定し、リープで大胆に検証し、
ループで段階的に移行を進めることに主眼を置きます。

⓪ マップ (Map) 🗺️:現状分析と戦略立案 (Sprint 0 or Planning Phase)

目的

現在の「おとぎ話サーガ」の同期依存関係を可視化し、目指す「パラレルサーガ」の非同期アーキテクチャを描き、移行における 最大のリスク(=検証すべき仮説) を特定する。

活動

現状分析

サービス間の同期呼び出しマップを作成。呼び出し頻度、レイテンシー、障害時の影響範囲(爆発半径)を分析。

目標設定

どの同期連携を非同期化するか? なぜ非同期化するのか?(例:パフォーマンス向上、可用性向上) 目標とするアーキテクチャ(例:イベント駆動)を描く。

リスク特定 (リープ仮説)

・「最もクリティカルな同期呼び出し(例:注文→在庫確認)を非同期化した場合、ビジネス上のSLA(例:在庫確認の即時性)を満たせるか?」

・「非同期化に必要な技術(例:メッセージブローカー)は、現在のインフラ/チームスキルで導入・運用可能か?」

・「非同期化による結果整合性(Eventual Consistency)は、ビジネス的に許容できるか?」

成果物

移行戦略マップ、検証すべき主要なリープ仮説リスト。

① 技術的PoCフェーズ:最重要リープ仮説の検証 (Sprint 1-N)

目的

マップで特定された最大のリスク(技術的・ビジネス的)を持つ同期連携(例:注文→在庫確認)に焦点を当て、非同期化が「本当に可能か?」 を検証する。

中心的な活動:リープ (Leap) 🚀

仮説

「注文→在庫確認をKafkaを使ったイベント駆動に置き換えても、平均応答時間XXミリ秒以内、エラー率YY%未満を達成できる」

検証

・最小限のインフラ構築

Kafkaクラスタを(テスト環境に)構築。

・最小限のコード変更

注文サービスがイベントを発行し、在庫サービスがイベントを購読して処理する 最小限のコード(PoC) を実装。

・性能・負荷テスト

この最小構成に対して負荷をかけ、レイテンシーやエラー率を計測し、仮説を検証する。

ループ (Loop) 🔄 の役割

PoC内部で、Kafkaのパーティション数やコンシューマーの設定を 小さく試行錯誤(ループ) し、性能目標を達成できるか探る。

移行

リープ仮説が検証されれば(例:SLAを満たせそうだと分かれば)フェーズ②へ。

検証できなければマップを見直し、技術選定(例:KafkaではなくSQSを使う)やアーキテクチャ(完全非同期ではなく、一部同期を残す)を 大きく変更(リープ) するか、移行自体を再検討。

② パイロット導入フェーズ:限定的な実環境での検証 (Sprint N+1 - M)

目的

PoCで技術的に可能と分かった非同期連携を、**限定された本番に近い環境(Staging、あるいは本番環境の一部トラフィック)**で実際に動かし、「想定外の問題」を発見・学習する。

中心的な活動: リープ (Leap) 🚀 (本番への投入) と ループ (Loop) 🔄 (改善)

リープ (Leap) 🚀

仮説

「注文→在庫確認の非同期化は、実際のトラフィック下でも安定稼働し、ビジネスKPI(例:注文完了率)に悪影響を与えない」

検証

①. ストラングラーパターン適用
注文サービスのコードを修正し、同期呼び出しではなく、イベントを発行するように切り替える(最初はダークローンチや一部ユーザー限定リリースなど、リスクを限定して)。

②. 在庫サービスはイベントを処理する。

③. オブザーバビリティを徹底し、レイテンシー、エラー率、ビジネスKPIを厳密に監視する。

ループ (Loop) 🔄

監視中に発見された問題(例:特定の条件下でのメッセージ処理遅延、結果整合性によるユーザー体験の悪化)に対し、設定チューニングやコード修正を 繰り返し(ループ) 行い、安定稼働を目指す。

移行

パイロット導入が成功し、安定稼働が確認されれば、本格的な移行(フェーズ③)へ。

ループを回しても安定しない、あるいは重大なビジネスインパクトが判明した場合は、マップを見直し、戦略的な方向転換(ピボット=リープ)(例:この部分は同期に戻す、別の非同期パターンを試す)を検討。

③ 段階的MVPロールアウトフェーズ:移行範囲の拡大 (Sprint M+1 - ...)

目的

パイロットで成功した非同期化パターンを、他の同期連携箇所へ段階的に適用し、最終的に「パラレルサーガ」アーキテクチャを実現する。

中心的な活動: ループ (Loop) 🔄 が主軸

①. 次の移行対象を選定

パイロットの学びに基づき、次に非同期化する同期連携を選ぶ。

②. パターン適用 (Build)

パイロットで確立した非同期化パターン(イベント発行/購読、オブザーバビリティ設定など)を適用する。

③. リリース & 観測 (Measure)

リリースし、影響を監視する。

④. 学習 & 改善 (Learn)

問題があれば修正し、次のループ(次の移行対象)へ。

リープ (Leap) 🚀 の可能性

ループの過程で、当初のマップにはなかった新たな課題や機会(例:特定の非同期化が、予期せぬ別のサービスの性能を改善した)が発見されれば、それを元に 戦略的な方向転換(リープ) を行うこともある。

完了

すべての目標とした同期連携が非同期化され、「パラレルサーガ」アーキテクチャが実現する。

まとめ

このフレームワークにより、アーキテクチャ変更という大きなリスクを伴う活動を、仮説検証のサイクルを通じて段階的に(ループ)、かつ大胆に(リープ)進めることが可能になります。

是非とも他のアーキテクチャの大きな移行の際には、常識として使ってみてください。
きっとリスクをコントロールしながらも、学びを最大化しつつ、移行していけます。

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