はじめに
2025年7月、私は初めて面接官を任されました。それから現在に至るまで、SRE/フルスタックエンジニアのポジションのカジュアル面談と一次面接を、月2〜3人のペースで担当してきました(波はありますが)。
半年経った今、一番大きく変わったのは 「面接官とは何をする人か」 という自分の中の定義です。結論から書くと、
面接官は候補者を評価する人ではなく、候補者と一緒に"マッチするか"を見にいく人
という認識に変わりました。
この記事は、その変化の過程と、途中で考えたこと、そして今も自分が成長しきれていないことを、忘れないうちに書き残したものです。想定している読者は次の二者です。
- これから転職を検討していて、面接官がどんなことを考えているのか知りたい方
- 自分と同じようにこれから面接官を始める/始めたばかりの方
どちらの立場から読んでも、少しだけ役に立つ何かが残せていたらうれしいです。
前置き:カジュアル面談と一次面接は、場の性質が違う
この記事ではカジュアル面談と一次面接の両方の経験を書きますが、2つは場の性質が大きく違います。先に整理しておきます。
カジュアル面談
- 時間の半分くらいを会社説明に使う
- 残りの時間で候補者の質問に答えたり、こちらからお聞きしたいことを聞いたりする
- 合否を直接判断する場ではなく、お互いに「会社と自分の相性を感じるか」を確認する場
- 自分の役割:当社の魅力を自分の言葉で伝え、候補者に興味を持ってもらうこと
一次面接
- 質疑応答を通じて、双方にとってマッチするかを見ていく
- 合否判断に関わる場
- 自分の役割:候補者が本当に当社でやりたいこと・実現したいことができるかを、対話の中から見極めること
以降は、どちらの話かが混ざる部分もありますが、区別が必要な場面では場を明記していきます。
1. デビューは「よろしく」の一言から
面接官としての最初の仕事は、ある日突然設定されたカジュアル面談でした。
渡されたのは会社説明用の資料一つ。「何を見て、何を評価したらいいか」も、「カジュアル面談とは何をする場なのか」も、特に詳しい説明はありませんでした。ただ「よろしく」とだけ言われた感覚に近いです。
今思えば、これは新任の面接官あるあるかもしれません。多くの現場で、面接官教育が体系的に整備されているケースのほうが少ないのではないでしょうか。とはいえ当時の私は、当日まで何を準備すればいいのか分からず、かなり戸惑いました。
2. 型づくりフェーズ:まず質問リストから作った
最初にやったのは、先輩方の面接履歴を参照して、自分用の質問リストを作ることでした。
過去の面接記録には、ほかの面接官が何を聞き、候補者がどう答え、最終的にどんな判断をしたかが残っていました。それをいくつも眺めて、「なるほど、こういう切り口で聞くのか」と自分なりに型を取り込んでいきました。
やがて、自分の中で一次面接における必須項目が固定されていきました。
- 自己紹介
- どういうことをやっていきたいか
- 興味のある分野
- 弊社に興味をもったきっかけ
- 現職での悩み・自身が抱えている課題など
- 転職の軸
- 転職活動のきっかけ
- 転職希望時期
これらの項目は、毎回必ず聞くベースとして定着しました。そこに加えて、候補者ごとの職務経歴書を読み込み、個別に聞くべきことを事前準備する ── これが今の自分のベースラインです。
最初のうちは「何を聞こう」で頭がいっぱいでしたが、準備の型が固まってくると、面接中に「相手の話を聞く」ことに意識を向けられるようになりました。この変化は、小さいけれど自分にとって大きな一歩目だったと思っています。
3. 転機:上司の一言で固定概念が崩れた
準備の型ができてきた一方で、どうしても解けない悩みがありました。それは特に一次面接の場で強く感じていたものです。
「この候補者の良し悪しを、どうやって判断したらいいんだろう」
自分が合否のジャッジをするという重さに、正直毎回手応えがないまま面接を終えることが続きました。ある日、上司にそのまま相談してみたところ、返ってきた言葉の主旨は、だいたい次のようなものでした。
面談も面接も、評価する場じゃないよ。こちらにマッチするかを見る場。相手が現職で本当は何に悩んでいて、次の職場で何をしたいのか、それがうちで実現できるのかを深掘る。そのプロセスで、候補者自身がまだ気づいていないことに気づいてもらう。その上で、お互いマッチしていると感じられたなら、そこで初めて次の選考ステップに進んでもらえばいい。
この言葉を聞いて、自分の中にあった「面接官=評価する人」という思い込みが、ようやく外れた感覚がありました。
それまでの私は、自分が候補者の合否を決める側なのだと勝手に力んでいました。でも、考えてみれば候補者にも同じだけ「この会社を選ぶかどうか」を決める権利があるし、むしろ面接は双方向のマッチングの場であるほうが自然です。
そう気付いた日から、面接に向かう姿勢が根本から変わりました。
4. "共に考える場"にしてみたら、副産物があった
面接を「双方が気づきを得る場」として捉え直してから、変わったことがいくつかあります。
4-1. 面接そのものが学びの場になった
候補者の方の「現職での悩み」「次の職場でやりたいこと」を丁寧に聞くと、他社の事情や、自分と近しいスキル・年齢のエンジニアがいま何に困っていて、どんな仕事をしているのか、といった"生きた情報"に触れる機会が増えました。こちらが一方的に質問する構図ではなく、対話のキャッチボールのような時間になっていったのです。
4-2. 1on1・自己分析にも応用できた
これは予想外の副産物だったのですが、「その人が言っていることの本質は何か」を探るという姿勢は、チームメンバーとの1on1や、自分自身の自己分析にもそのまま応用できました。
1on1で部下が話してくれる悩みの裏に、本人もまだ言語化できていない課題が潜んでいることは珍しくありません。「もう少し深い層に本当の問題があるのでは?」と意識して問い直すだけで、根本解決のきっかけにたどり着けるケースが、社内業務の中でも少しずつ増えてきました。
面接官としての経験が、本業のマネジメントや自己理解の場面にまで活きてくるとは思ってもいませんでした。
5. カジュアル面談で伝えている"3つの魅力"
ここからは少しだけ、当社の話にお付き合いください。
5-0. 余談:自分自身も、この魅力に惹かれてこの会社を選んだ
少し余談になりますが、実は私自身もこの会社への転職を経験した身です。今の自分が候補者の方に3つの魅力を語れるのは、かつての自分自身がその3つに強く惹かれて、ここを選んだからでもあります。
1社目は、組み込み開発領域を中心とした人材派遣型の会社でした。業務はバックエンド中心で、大規模システムや長期プロジェクトの一部機能、実装・テストフェーズに関わる、というスタイルです。当時の私は、
- 「このままではエンジニアとしての市場価値が頭打ちになる」という焦り
- 「自分が書いたコードがエンドユーザーにどう届いているのか、実感を持てず、自分の目で見て体験する機会もない」というモヤモヤ
の2つを抱えていました。
そんなタイミングで出会ったのが今の会社です。フルスタックの経験が積める環境であること、自社プロダクトがあり作ったものが世の中に届く実感が得られること ── この2点が、当時の自分の悩みに真っ直ぐ刺さりました。
候補者の方に今お伝えしている「3つの魅力」のうち、当時の自分に刺さっていたのはこの2つです。残りの1つ(次節でお話しします)は、正直に言うと入社して実際に働いてから強く実感した魅力でした。面接の段階では気づけていなかったのに、中に入って初めて価値がわかる ── そういうこともあるのだと、いまなら候補者の方にお伝えできます。
過去の自分と同じような境遇の方 ── 経験領域を広げたい、自分の仕事の実感を持ちたい、と感じている方 ── に、この後の内容が届けばうれしいです。
5-1. 候補者の声からわかった、本当に刺さる3つのポイント
カジュアル面談は、合否を直接判断する場ではなく、こちらから会社の魅力をお伝えし、候補者の方に興味を持っていただくための場です。とはいえ、お互いに「この人と一緒に働くイメージが持てるか」を感じ取る時間でもあるので、こちらもまっすぐ向き合います。時間の半分くらいを会社説明に使いますが、資料をただ読み上げる時間にはしないようにしています。その代わりに、候補者の方が「いいな」と言ってくださる点を中心に、自分の言葉で語ることを意識しています。
実際に当社をいいなと言っていただく際、いただくフィードバックの大半は次の3つに集約されます。
- フルスタック/ワンストップでスキルと経験が身につくこと ── バックエンド・フロントエンド・インフラまで一人の裁量で関われる
- 裁量を持って仕事ができること ── ベンチャーならではの、自分で判断して進められる環境
- 面白い・かっこいいプロダクトがあること ── 自社サービスがあり、作ったものが世の中に届く
この3つを、候補者の方の関心に合わせて重点的に語る、というのが今の私のスタイルです。
6. 半年で成長できたこと(まとめ)
ここまで書いてきたことと重なりますが、この半年で自分が変わったと感じる点を整理しておきます。
- 事前準備の質が上がった ── 質問リストから始まり、今は職務経歴書を読み込んで個別準備する
- 自社の魅力を、自分の言葉で語れるようになった ── 資料の朗読ではなく、体験談として語れる
- 「こういう人と一緒に働きたい」が言語化できてきた ── 自己分析ができる/自分の意見を持っている/会社の方向性と本人のやりたいことが重なる人
- 面接観が転換した ── 評価する人からマッチを共に探す人へ
7. 成長できていないこと(正直ベース)
一方で、半年やってもまだ全然うまくいかないこと、迷っていることもたくさんあります。一つずつ書きます。
7-1. 相手の魅力を引き出しきれないときがある
面接対策としてよくある質問への回答を、候補者の方が丁寧に準備してきてくださることがあります。それ自体は当然のことで、ありがたいことです。ただ、特に一次面接では、双方にとってのマッチを見極めるうえで、そこから一歩深い対話に持っていく技術が、自分にはまだ足りません。
用意された回答の"その先"にある、候補者の方自身の言葉や感覚にどう辿り着くか ── ここは次の半年の大きなテーマです。
余談ですが、自己分析がしっかりできている方との対話は、こちらが深掘るまでもなくお互いに気づきのある時間になりやすいと感じています。面接対策としてというより、自分のキャリアの棚卸しとしての自己分析の時間を取ることは、候補者の方にとっても価値のあることではないか、と最近は思います。
7-2. 時間内に聞ききれない
事前準備で聞きたいことを盛り込みすぎ、候補者の話を丁寧に聞くほど時間配分が崩れる、ということがいまだにあります。
「全部聞かなきゃ」から「この時間で何を一番知りたいか」への切り替えが、まだ自分の中で自動化されていません。準備した質問をこなすことに意識が引っ張られて、目の前の方の話の流れからズレてしまう、という失敗は今でも起こします。
7-3. 「人との関わり方」そのものの難しさ
面接官デビューと同時期に、私はチームリーダーにもなりました。それまではいち開発者として手を動かしていた自分が、急にチームを持つ側にまわり、1on1をしたり、目標設計をしたり、採用にも関わる ── という変化が重なった時期でした。
正直に言うと、面接官としての悩みと、リーダーとしての「人との関わり方」の悩みは、自分の中ではほぼ同じ根っこから出てきていたように思います。面接の中で感じるモヤモヤと、1on1で感じるモヤモヤが、似た構造をしていたのです。
だからこそ、面接官としての学びが1on1にも応用できたし、逆もまた然りでした。今もこの二つは、自分の中で同時並行で伸ばしていくべきテーマとして残っています。
8. こういう方と一緒に働きたいです
ここまでの内容と重なるのですが、自分の中で言語化できてきた「こういう方と働きたい」像を、最後にまとめておきます。
- スキル・経験もちろん大事です。ただ、一番大事にしているのはそこではありません
- 自分の意見を持っている方 ── 他者の意見に流されず、自分の軸で判断できる方
- 自己分析ができている方 ── 自分の強み・弱み・やりたいことを、自分の言葉で語れる方
- 会社の方向性と、自分のやりたいことが重なる方 ── フルスタックの経験を積みたい/作ったものがユーザーに届く環境で仕事をしたい、という思いがある方
当社は来期、採用を強めていくフェーズに入ります。もしこの記事を読んで、「ちょっと話を聞いてみてもいいかも」と思っていただけた方がいたら、とてもうれしいです。
9. おわりに
半年面接官をやってみて一番の学びは、シンプルですが次の一文に尽きます。
面接は、双方の気づきの場である
自分がジャッジする側、という力みが抜けてから、面接に向かう気持ちがずいぶん軽くなりました。そして、その変化が1on1や自己分析にまで波及したのは、完全に嬉しい誤算でした。
次の半年では、まだ越えられていない「相手の"素"にどう辿り着くか」「人との関わり方そのもの」というテーマに、もう少し深く取り組んでみたいと思っています。また半年後、どんな学びが残っているか、ここに書き残せたらいいなと思っています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!