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歴史資料の孫引きはなぜ危険なのか

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Last updated at Posted at 2025-10-28

三宅章介『タイプライターの歴史とタイピスト』(労働の科学, 2024年1月号~連載中)を読んだのだが、私(安岡孝一)の著作を参考文献に挙げているにもかかわらず、不正確な記述が散見されてイラっときた。イラっときた部分のうち、特にマズイと思う部分を、以下に晒して警鐘とする。

労働の科学2024年1月号p.38

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唐突に「桜井の発言」が現れるのだが、どこの桜井さんが何を発言したのか全く書かれておらず、それがどうHarry Igor Ansoff『Corporate Strategy』(McGraw-Hill, 1965年)に繫がるのかサッパリわからない。

労働の科学2024年2月号pp.39-40

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その「ORIGINAL TYPE WRITER OF 1856」の図版は、私の知る限り『Scientific American』1886年12月18日号(Vol.LV, No.25, pp.383,389)が初出なので、1856年の史料として扱うのは危険だ。

労働の科学2024年3月号p.26

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だから、それは危険だと言ってるだろう。ちゃんと原資料(U. S. Patent No.15164『Transactions of the American Institute of the City of New-York for the Year 1856』p.149)を調査してないから、アヤシイ図版に騙されてしまうし、Alfred Ely Beachの名前すら間違ってしまう。

労働の科学2024年3月号p.25

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ワケがわからない。THE CALIGRAPH is the invention of Mr. G. W. N. Yost, who was mainly instrumental in placing the Type-Writer before the public, and who for the past seven years has given his entire attention to to writing machines.という英文を、どう誤訳すれば、こんな話になるのか理解できない。私自身は『広告の中のタイプライター』(三省堂ワードワイズウェブ、2017年2月16日~2020年12月24日)というシリーズ連載を書いたのだが、どこか別のパラレルワールドに「広告の中のタイプ中のタイプライター(13)」があって、そこでの私はこんなワケのわからない話を書いているのだろうか。

労働の科学2024年3月号p.28

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違う。菊武学園の「Sholes & Glidden Type Writer」に関しては、私自身は1878年以降1882年以前と判断している。レストア品だったため、どのタイミングで装飾が施されたかはわからなかったが、イギリス経由で日本に入ってきた可能性が高い。

労働の科学2024年4月号p.41

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「牽引式」などという単語は、2024年3月号には見当たらない。どこか別のパラレルワールドでの「前号」なのだろうか。

労働の科学2024年4月号p.48

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「牽引式」などという単語は、『タイプライタ博物館』(菊武学園, 1999年1月)にも見当たらない。ただ「索引式」という単語は見当たるので、三宅章介は「牽引」と「索引」の区別がつかないのだろう。

労働の科学2024年4月号p.45

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違う。この写真の「Underwood Standard Typewriter No.5」は、黒赤2色のインクリボンが使えるモデルなので、私の知る限り1907年以降の発売だ。1901年製のモデルに、インクリボンの切り替え機構は無い。しかも、印字点のデザインがいわゆる「Model K」なので、1922年以降の可能性が高い。

労働の科学2024年4月号p.46

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違う。この表に示されているのは、serial numberの変遷だ。この表に従うなら、1920年の生産台数は高々15万台、1930年の生産台数は高々19万台だ。ただし、Underwoodはserial numberの付け替え(というか、すっ飛ばし)をしばしばおこなっており、単純な引き算で生産台数が計算できるとは限らない。

労働の科学2024年5月号p.39

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Henry Metcalfe『The Shop-Order System of Accounts』(Transactions of the American Society of Mechanical Engineers, Vol.7, No.CCIX (1886年5月26日), pp.440-468)には「タイプライターによる文書作成」など書かれていない。どこか別のパラレルワールドでのMetcalfeなんだろうか。

労働の科学2024年6月号p.31

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Fred. W. Taylor『Shop Management』(Transactions of the American Society of Mechanical Engineers, Vol.24, No.1003 (1903年6月), pp.1337-1456)には「scientific management」への言及が見られる。これが初出かどうかは確定できないものの、少なくとも1911年は初出ではない。

三宅章介『タイプライターの歴史とタイピスト』には、イラっとくる部分がまだ大量にある。しかし、以降の号は一般公開されていないので、いずれ一般公開されるのを待って、この記事に追記すべきかとも思う。でも、労働の科学は、発行がどんどん遅れていってるので、さて、どうなるのやら。

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