三宅章介『タイプライターの歴史とタイピスト』(労働の科学, 2024年1月号~連載中)を読んだのだが、私(安岡孝一)の著作を参考文献に挙げているにもかかわらず、不正確な記述が散見されてイラっときた。イラっときた部分のうち、特にマズイと思う部分を、以下に晒して警鐘とする。
①労働の科学2024年1月号p.38
唐突に「桜井の発言」が現れるのだが、どこの桜井さんが何を発言したのか全く書かれておらず、それがどうHarry Igor Ansoff『Corporate Strategy』(McGraw-Hill, 1965年)に繫がるのかサッパリわからない。
②労働の科学2024年2月号pp.39-40
その「ORIGINAL TYPE WRITER OF 1856」の図版は、私の知る限り『Scientific American』1886年12月18日号(Vol.XV, No.25, pp.383,389)が初出なので、1856年の史料として扱うのは危険だ。
③労働の科学2024年3月号p.26
だから、それは危険だと言ってるだろう。ちゃんと原資料(U. S. Patent No.15164や『Transactions of the American Institute of the City of New-York for the Year 1856』p.149)を調査してないから、アヤシイ図版に騙されてしまうし、Alfred Ely Beachの名前すら間違ってしまう。
③労働の科学2024年3月号p.25
ワケがわからない。THE CALIGRAPH is the invention of Mr. G. W. N. Yost, who was mainly instrumental in placing the Type-Writer before the public, and who for the past seven years has given his entire attention to to writing machines.という英文を、どう誤訳すれば、こんな話になるのか理解できない。私自身は『広告の中のタイプライター』(三省堂ワードワイズウェブ、2017年2月16日~2020年12月24日)というシリーズ連載を書いたのだが、どこか別のパラレルワールドに「広告の中のタイプ中のタイプライター(13)」があって、そこでの私はこんなワケのわからない話を書いているのだろうか。
③労働の科学2024年3月号p.28
違う。菊武学園の「Sholes & Glidden Type Writer」に関しては、私自身は1878年以降1882年以前と判断している。レストア品だったため、どのタイミングで装飾が施されたかはわからなかったが、イギリス経由で日本に入ってきた可能性が高い。
三宅章介『タイプライターの歴史とタイピスト』には、イラっとくる部分がまだ大量にある。しかし、以降の号は一般公開されていないので、いずれ一般公開されるのを待って、この記事に追記すべきかとも思う。でも、労働の科学は、発行がどんどん遅れていってるので、さて、どうなるのやら。




