佐々木悅藏『樺太土人語日用會話』(武裝堂, 明治38年8月)を読んでいたところ、「ヤニ.タン.ムシリ.ノチヤ.ブンキ.ウタレ.テマナ.アンキセタ子ア.ヱラマン」という文に出くわした(p.15)。Universal Dependenciesで書いてみようとしたのだが、「アンキセタ子ア」で悩みこんでしまった。
# text = ヤニ.タン.ムシリ.ノチヤ.ブンキ.ウタレ.テマナ.アンキセタ子ア.ヱラマン
1 ヤニ eani PRON 代名詞 _ 13 vocative _ SpacesAfter=\u002e
2 タン tan DET 連体詞 _ 3 det _ SpacesAfter=\u002e
3 ムシリ mosir NOUN 名詞 _ 6 nmod _ SpacesAfter=\u002e
4 ノチヤ Nucá PROPN 固有名詞 _ 5 nmod _ SpacesAfter=\u002e
5 ブンキ punki NOUN 名詞 _ 6 nmod _ SpacesAfter=\u002e
6 ウタレ utar NOUN 名詞 _ 8 nsubj _ SpacesAfter=\u002e
7 テマナ temana ADV 副詞 _ 8 advmod _ SpacesAfter=\u002e
8 アン an VERB 自動詞 _ 13 ccomp _ SpaceAfter=No
9 キ ki AUX 助動詞 _ 8 aux _ SpaceAfter=No
10 セ he ADP 副助詞 _ 8 mark _ SpaceAfter=No
11 タ子 tane ADV 副詞 _ 13 advmod _ SpaceAfter=No
12 ア a= PART 人称接辞 _ 13 nsubj _ SpacesAfter=\u002e
13 ヱラマン eraman VERB 他動詞 _ 0 root _ SpaceAfter=No
「アンキセタ子ア」を「an ki he tane a=」とみなせば、ギリギリ解析可能になるのだが、ちょっと苦しい。「セ」と「ヘ」の交代は、アイヌ語訳『五倫名義解』でも見られるのだが、樺太アイヌ語でも同様に考えていいんだろうか。一方、「ア.ヱラマン」は素直に読めば「a=eraman」なのだが、それは文頭の「ヤニ」(eani)と矛盾してしまう。仕方ないので「ヤニ」はvocativeで繋いでみたが、さて、困ったなあ。