1.はじめに
「ネットワーク」と聞くと、ちょっと身構えてしまう人も多いと思います。
聞き慣れない専門用語がたくさん出てきて、どうしてもとっつきにくいイメージがありますよね…
筆者自身も、新人の頃はネットワークに苦手意識がありました。
いろんな先輩にアドバイスをもらいながら学ぼうとしましたが、説明を聞いてもイメージがつかめず、結局「何が分からないのかすら分からない。どこから手をつければいいのか…」と迷ってばかりでした。なかなか理解が進まずに困ったことを覚えています。
この記事は、そんな「駆け出しエンジニア」の方に向けて書いています。
- 社会人1年目くらい
- ネットワークの基礎知識はほとんどない
- Azure を使うことになったけど、ネットワークの全体像が見えない
同じように感じている人に向けて、「Azure ネットワークってざっくりこんな世界なんだよ」とイメージを持ってもらうのがゴールです。
細かい設定や専門的な仕組みには踏み込みません。
比喩や図解を中心に、直感的に理解できる内容にしているので、安心して読み進めてください。
2.ネットワークの全体像をのぞいてみよう
Azure のネットワークといっても、本当はとても広い世界があります。
そのすべてを一度に理解しようとすると、どうしても混乱してしまいます。
そこでこの記事では、最もシンプルな構成の Azure VM(IaaS)を利用する場合の基本的なネットワークに絞って解説します。
ここで紹介するのは、Azure に触れる人が最初に出会う可能性が高い代表的なサービスです。
まずはこの基本形を押さえておけば、細かな技術を知らなくても
「なるほど、Azure ネットワークってこういう仕組みなんだな」
という感覚をつかみやすくなるはずです。
では、完成図を見てみましょう。
この図に登場しているのは、Azure ネットワークの基本的な要素です。
- VNet(Virtual Network):ネットワーク全体の枠組み
- Subnet:VNet を細かく区切ったエリア
- VM(Virtual Machine):サービスを動かす仮想マシン
- NIC(Network Interface Card):VM に割り当てられるネットワーク情報
- NSG(Network Security Group):通信の通過を制御
- NAT Gateway:VM がインターネットに出ていくための出口
こうして並べると「うわ、難しそう…」と感じるかもしれませんが、心配はいりません。
ここで名前を覚える必要はなく、まずは「こんな要素があるんだ」と眺めるだけで十分です。
3.町のインフラをイメージしよう
Azure ネットワークを理解しようとすると、専門用語やアイコンの羅列から入ってしまい、難しく感じる人も多いと思います。
ここでは、みなさんが普段暮らしている「町」 を舞台にして考えてみましょう。
この町には、生活に欠かせない仕組みがいくつもあります。
それぞれを Azure のサービスに対応させると、次のように整理できます。
| 町のイメージ | Azure サービス | 町での役割 |
|---|---|---|
| 町全体 | VNet | 境界で囲まれた世界。みなさんが暮らす町そのもの |
| 住宅地やオフィス街 | Subnet | 区画ごとに整理されたエリア。住宅やオフィスがまとまっている |
| 建物 | VM | 人が暮らしたり、仕事をする場所 |
| 住所 | NIC | 建物に割り当てられる番地。誰の建物かがわかる目印 |
| 門番 | NSG | 出入口で見張り、誰が入れるかを決める |
| 共用出口 | NAT Gateway | 町のみんなが使う大きな道路。ここを通って町の外の世界へ出ていける |
ここで押さえておきたいのは、「町の仕組みと Azure のサービスが自然に対応している」ということです。
町をイメージすると、「あ、この役割は Azure ではこのサービスなんだ」と直感的に結びつけられるはずです。
さらに言えば、この思考は情報技術の基礎と結びつける訓練にもなります。
ネットワークの基礎理論を理解していれば、「この仕組みは Azure ではどのサービスに当たるのか」と対応づけやすくなり、学びが断片的ではなく構造的に整理できます。
ここまでで、町のインフラが整備できました。
次の章では、この町を実際に出入りする 人(= VMの利用者) の行動を追いかけながら、外の世界(外部サービス)に出ていくネットワークの流れを見ていきましょう。
4.町の外にあるホテルに泊まりにいこう
ここまでで、Azure ネットワークを「町の仕組み」にたとえて紹介しました。
次は、自分の家(VM)から 外のサービス(ホテル) を利用するときのネットワークの流れを見ていきます。
あなたが町の中の家に住んでいて、外のホテルに泊まりに行くとしましょう。
そのときの道のりは、次のようになります。
1.家を出て住宅地を抜ける(NIC → Subnet)
- あなたの家(VM)には住所(NIC)があるので、ホテルに到着したとき「どこから来た人なのか」を伝えられます。
- 家は住宅地(Subnet)の中にあるため、まずはその区画の出口に向かいます。
2.住宅地のゲートで検問を受ける(NSG)
- 普通の住宅地にはゲートなんてありませんが、Azure の世界では標準装備です。
- 誰でも自由に出入りできるわけではなく、「この人は外に出てもよいか?」がここで確認されます。
- 許可がなければ、その場で止められてしまいます。
3.町の出口を通過する(VNet 内の Subnet → NAT Gateway)
- 検問を通過した人は、町全体(VNet)の中にある住宅地(Subnet)の出口に進みます。
- この出口は町のみんなで共用されていて、そこを抜けると町の外の世界(外部サービス)へ進むことができます。
4.ホテルに到着する(外部サービス)
- 色んな道を進んでホテルに着くと、住所(NIC)や町の出口(NAT Gateway)の情報をもとに「どこから来た人なのか」が伝わります。
- その結果、ホテルでサービスを受けられるようになります。
このように、自分の家(VM)からホテル(外部サービス)へたどり着くまでには、住所(NIC)、住宅地(Subnet)、住宅地の検問(NSG)、町の出口(NAT Gateway)がそれぞれ役割を持ち、連携しています。
ここで比喩による説明は一区切りです。
5.次の一歩へ進むために
ここまでで、Azure ネットワークを「町」にたとえて全体像をざっくり見てきました。
大事なのは、「細かい設定や難しい理論をいきなり覚える必要はない」ということです。
まずは「Azure ネットワークって、なんとなくこういう仕組みなんだ」とイメージできただけで十分です。
5-1.この先に進みたい人へ
「もっと具体的に Azure の画面や実際の動きを知りたい」と思った方もいるかもしれません。
今後は、反響や需要に応じて「初級者・中級者・上級者・オンプレ経験者」といった層ごとに向けた Azure ネットワーク記事も書いていきたいと考えています。
今回の「比喩ベース」の記事が、その入口として次の学びへ進むきっかけになれば嬉しいです。
5-2.ネットワークを学ぶためのおすすめ教材
ネットワークの基礎は、Azure に限らず AWS やオンプレミスなど、どの環境でも役立つ共通の土台です。
一度しっかり学んでおくことで、新しい製品に出会ったときでも理解がぐっと早くなります。
ここでは、特に駆け出しエンジニアの方におすすめの教材を紹介します。
-
3 Minutes Networking(Web連載)
時代の流れから一部古い情報も含まれていますが、第0回〜52回を繰り返し読むのがおすすめです。短い連載形式なので、基礎を定着させるのに最適です。
筆者は新人時代、ネットワークの定番書籍である「マスタリングTCP/IP―入門編」に挑戦しましたが難しくて挫折してしまいました…
がその後、「3 Minutes Networking」を何十回も読み返すことで理解が少しずつ深まりました!
同じ境遇の人は、まずこちらから入るのがおすすめです。
現在 Web 版の「3 Minutes Networking」では、Flash 廃止の影響で一部の図が表示されません。対応策としては以下の2つがあります。
- Flash を再生できる環境を整える(参考:Qiita 記事)
- 書籍版「改訂新版 3分間ネットワーク基礎講座」を購入する(Amazon 購入リンク)
-
ブログ記事(筆者執筆)
筆者自身が Azure 基礎を学ぶ過程で整理した内容です。よければ、併せてご覧ください。
6.おわりに
ここまで、Azure ネットワークを「町」にたとえて見てきました。
自分の家(VM)から町の外のホテル(外部サービス)に出かけるストーリーを通じて、
ネットワークの流れをイメージできたのではないでしょうか。
大切なことは、専門用語を暗記することではありません。
「Azure ネットワークってこういう世界なんだな」と直感を持てたなら、それで十分です。
ネットワークは最初こそとっつきにくい分野ですが、身近な比喩や自分なりの言葉に置き換えて少しずつ理解していけば、「わかった!」と思える瞬間が訪れます。
今回の比喩が、その第一歩となり、Azure ネットワークを怖がらずに学びを進めるきっかけになれば嬉しいです。
それでは、快適な Azure ライフを!
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