Devin には、エージェントへ処理手順を伝える仕組みとして Skills と Playbooks の2つが用意されています。どちらも「Devin にタスクの進め方を指示する」ための機能ですが、開発された背景や動作の仕組み、設計思想は大きく異なります。
本記事では、両者の共通点・相違点、そして実務における使い分けについて整理して解説します。
まず結論
| 観点 | Skills | Playbooks |
|---|---|---|
| 一言でいうと | リポジトリで Git 管理する「手順書ファイル」 | Web アプリ上で管理する「再利用可能なプロンプト」 |
| 置き場所 | リポジトリ内 .agents/skills/<name>/SKILL.md(Git 管理) |
Devin Web アプリの Library(.devin.md のドラッグ&ドロップ登録も可) |
| 呼び出し方 | Devin による自動検出・自律呼び出し(@skills:name や /name での明示指定も可) |
セッション開始時にユーザーが手動でアタッチ(マクロ !name も可) |
| スコープ | リポジトリ単位 | 組織(Organization)全体 |
| 出自・規格 | Anthropic 発祥の**オープン標準「Agent Skills」**準拠 | Devin 独自実装(2024年6月〜) |
| 向いている用途 | リポジトリ固有の手順(ビルド・テスト・デプロイなど) | リポジトリ横断のタスクテンプレート、チーム共通の定型作業 |
使い分けの原則:
- Skills: 「このリポジトリ固有の作業手順」を教えたい場合
- Playbooks: 「どのリポジトリでも共通して使うタスクの型」をチームで共有したい場合
共通点
両者の根本的な目的は共通しており、**「繰り返し行う処理手順をあらかじめ言語化しておくことで、Devin が毎セッション手探りで推測する無駄をなくす」**点にあります。
- 作業手順、完了条件(DoD)、ガードレール(制約事項)を事前に定義できる
- 一度確立したベストプラクティスを、次回以降のセッションや他のチームメンバーでも確実に再現できる
- 毎回のプロンプト入力の手間を大幅に削減できる
公式ドキュメントでも "Both skills and playbooks give Devin reusable instructions"(どちらも Devin に再利用可能な指示を与える機能)と明記されています。
相違点の詳細
1. 実体と管理方法(置き場所)
-
Skills: リポジトリ内に配置する
SKILL.mdファイルです。YAML frontmatter(nameとdescriptionが必須)と Markdown 本文で構成されます。ソースコードと同様に Git でバージョン管理され、プルリクエストを通じたレビューや改善が可能です。また、実行スクリプトやテンプレートなどの関連ファイルを同一ディレクトリ内に同梱することもできます。 -
Playbooks: Devin の Web アプリ(Library)上で管理されるテキストドキュメントです。リポジトリから独立して存在し、セッション開始時にプロンプトへ注入(アタッチ)されます。記述形式の自由度が高く、特定の構造に縛られずに作成できます(初期は
ProcedureやSpecificationsといったセクション構成が推奨されていましたが、現在は必須ではありません)。
2. 呼び出しのトリガー(実務上もっとも大きな違い)
-
Skills: セッション開始時に Devin がリポジトリ内をスキャン・インデックスし、自動検出します。タスクに関連すると判断されれば自律的に呼び出されます。もちろん、
@skills:nameや/nameといったスラッシュコマンドによる明示的な起動も可能です。frontmatter にtriggers: ["user"]を指定すれば、「明示呼び出し時のみ実行する」という制御も行えます。 -
Playbooks: 基本的にセッション開始時に人間が選択してアタッチします。セッション途中で Devin が状況を判断して動的に読み込むことはありません。ただし、ショートカットマクロ(
!name)を設定しておけば、Slack や IDE などの外部連携先から起動する際に自動でアタッチさせる運用が可能です。
3. スコープと共有範囲
- Skills: リポジトリ単位でスコープが閉じます。作業中のタスクに関係するリポジトリのスキルのみが読み込まれるため、別プロジェクトの無関係な手順が混ざる(プロンプトのコンテキスト汚染)心配がありません。
- Playbooks: 組織全体で共有されます。コミュニティに公開されている公式ギャラリーからテンプレートを取り込むことも可能です。「誰でも・どのリポジトリの作業でも適用できる」という利便性がある反面、特定リポジトリに依存しない汎用的な内容に留める運用が向いています。
4. 作成・改善のライフサイクル
- Skills: セッション内で Devin が学習した内容(例:「このバックエンド環境は Docker でこのように起動する」など)をもとに、Devin 自身がスキルの作成を能動的に提案してくれます。「Create PR」からそのままリポジトリにコミットできるため、開発を進めるほど自然に手順書がリポジトリへ蓄積されていく設計になっています。
- Playbooks: ユーザー主導で作成・改善します。「うまくいったセッションの手順を Playbook に書き起こす」「チームで振り返って追記する」といった、人間によるプロンプトのメンテナンスが基本となります。
5. 表現力と実行制御(機能性の差)
「手順書のフォーマット規格」として見ると、Skills の方がはるかに高度な制御機能を備えています。
-
引数の受け渡し:
@skills:deploy stagingのように指定し、スキル側で$ARGUMENTSや$0としてパラメータを受け取れる -
動的コンテキストの埋め込み:
!`git branch --show-current`のように、呼び出し時にシェルコマンドの実行結果を動的に注入できる -
ツールの利用制限(
allowed-tools): 使用可能なツールを制限し、読み取り専用スキルなどにできる -
モデル・サブエージェント指定: 使用モデルの指定(
model)や、サブエージェントでの隔離実行(実験的機能)など、frontmatter による詳細な制御が可能
一方、Playbooks はあくまで「静的なプロンプト文章」であるため、このような実行時の動的処理やシステム制御の機能は備わっていません。
出自と歴史:Devin 独自 vs オープン標準
両者の設計思想の違いを理解するうえで、開発の経緯は重要なポイントです。
Playbooks — アーリーアクセス期から続く Devin 独自機能
- Cognition 公式ブログの 「Devin June '24 Product Update」(2024-06-05) で発表されました。「Playbooks により、Devin は反復的で複数ステップにわたるエンジニアリングタスクへより適切に対応できるようになる」として、組織内共有機能やコミュニティギャラリーとともにローンチされています。
- Devin の一般提供開始(GA: 2024-12-10)よりも約半年早いアーリーアクセス期から存在する機能です。
- フォーマットや管理基盤を含め、Devin(Cognition)独自の実装となっています。
Skills — Anthropic 発祥のオープン標準「Agent Skills」
- Anthropic が 2025-10-16 に Claude 向けとして「Agent Skills」を発表し、同年 2025-12-18 に
agentskills.ioにて仕様書およびリファレンス SDK を備えたオープン標準規格として策定・公開されました。 - 現在では VS Code / GitHub(Microsoft)、Cursor、Goose、Amp、OpenCode、OpenAI など、主要な AI コーディングツール・プラットフォームで幅広く採用が進んでいます。
- Devin の公式ドキュメントでも "They follow the open Agent Skills standard, so the same skill files work across multiple AI coding tools"(オープンな Agent Skills 標準に準拠しているため、同じスキルファイルが複数の AI コーディングツール間でそのまま動作する)と明記されており、2026 年のアップデートで正式サポートされました。
- つまり、
SKILL.mdとして整備した手順書は Devin 固有の資産にとどまらず、他の AI コーディングツールでもそのまま再利用できるポータビリティを持っています。
補足: Knowledge との使い分け
Devin にはもうひとつ「Knowledge(ナレッジ)」という機能があります。公式ガイドでは、「プロジェクト固有のベストプラクティスやスタイルガイドなど、常に参照すべき背景知識は Playbooks ではなく Knowledge に登録する」ことが推奨されています。
これら3つの役割を整理すると、以下のようになります。
- Knowledge: 常に参照させたいリポジトリや組織の前提知識・コーディング規約
- Playbooks: 人間が必要に応じてアタッチする、汎用タスクの型・プロンプトテンプレート
- Skills: リポジトリ内に配置し、必要に応じて自律的または明示的に呼び出す具体的な作業手順書
まとめ
- 同じ「手順の再利用」を目的とした機能ですが、Skills はコード資産(Git 管理・自律呼び出し・標準規格)、**Playbooks はプロンプト資産(Web 管理・手動アタッチ・Devin 独自)**という明確な役割・思想の違いがあります。
- これから新しく手順を整備する場合、まずは Skills(
SKILL.md)としてリポジトリに蓄積していくのが、現在のデファクトスタンダードかつポータビリティの高い選択肢といえます。一方で、リポジトリを跨ぐ定型作業やチーム共通のタスクの型には Playbooks が有効です。 - これらは二者択一ではなく、目的に応じて併用するものです。常時意識させたい前提ルールは Knowledge に切り出し、うまく組み合わせて Devin を活用していきましょう。
なお、この記事は Devin との対話後、記事にまとめてもらったものを私が編集したものです。
参考・出典
- Devin Docs — Skills: https://docs.devin.ai/product-guides/skills ("Skills vs. Playbooks" 比較表あり)
- Devin Docs — Creating Playbooks: https://docs.devin.ai/product-guides/creating-playbooks
- Devin Docs — Using Playbooks: https://docs.devin.ai/product-guides/using-playbooks
- Devin Docs — Release Notes 2024 / 2026: https://docs.devin.ai/release-notes/2024 , https://docs.devin.ai/release-notes/2026
- Cognition Blog — Devin June '24 Product Update(Playbooks 発表): https://cognition.com/blog/june-24-product-update
- Cognition Blog — Devin is now generally available(GA: 2024-12-10): https://cognition.com/blog/devin-generally-available
- Anthropic — Equipping agents for the real world with Agent Skills: https://www.anthropic.com/engineering/equipping-agents-for-the-real-world-with-agent-skills
- Agent Skills 仕様: https://agentskills.io/specification