業務改善・自動化のシーンでよく出る質問があります。
「Copilot Studio と AI Builder、どっちを使えばいいの?」
どちらも Microsoft の生成AI系機能ですが、
立ち位置・得意領域・実装コスト・運用性がまったく違います。
本記事では 実務者・開発者・現場DX担当の視点 から、
「どちらを使うべきか?」を最短で判断できるように整理しました。
結論から知りたい方は「6. 使い分けまとめ」へどうぞ。
✔ 結論
- AI Builder = 決められた作業を正確にこなす“部品”
- Copilot Studio = 会社の記憶と文脈を理解して動く“総合AIエージェント”
実務のほとんどは Copilot Studio のほうが向いている。
AI Builder は Power Automate の中で「型が決まった処理を精密に行う」時だけ使うのが最適解です。
1. 導入:二つのAIは“似て非なるもの”
AI Builder(Power Automate内のAI)
- 入力と出力が完全に決まったタスクに強い
- 自由会話は苦手
- 想定外の振る舞いをさせたくないときに最適
- 小さく閉じたフロー内での利用が前提
Copilot Studio
- 会話もできるし、自律型エージェントも作れる
- RAG・記憶・ワークフローなど全部入り
- SharePoint/社内ドキュメントなど、大量のナレッジを読み込ませられる
- 複雑な判断・マルチステップ・会社固有ルールに基づく応答が得意
→ “チャットで返事するAI”ではなく、“仕事を任せられるエージェント”が作れる。
2. 決定的な違い:汎用性 vs 予測可能性
両者を比較するうえで最もわかりやすい観点がこれです。
● AI Builder = 予測可能性
- 決められたフォーマットで返す
- 型がぶれない
- 文字抽出・分類などの定型処理に強い
- 現場フローの一部に綺麗に組み込める
● Copilot Studio = 汎用性
- 会話しながら誘導
- 複数のアクション・フローをオーケストレーション
- 文脈保持・記憶で長期対応
- 人がやる業務に近い思考で動ける
3. 「学ばせられる量」が桁違い
❌ AI Builder
- 読み込めるのは“単発のドキュメント”程度
- 大量の資料を文脈として学ばせるのは不可
- 複雑な会社ルールやガバナンス判断には不向き
⭕ Copilot Studio
- SharePoint、Web、PDF群など大量の企業ナレッジを格納可能
- 数百〜数千ページの規程・マニュアルを前提に回答できる
- Web検索を遮断してファルシネーションを抑制可能
→ 企業固有の“専門家AI”を作れるのは Copilot Studio だけ。
4. AIエージェントとしての質の差
AI Builder でできること
- メール受信 → 情報抽出 → 判断(Yes/No) → フロー実行
- ドキュメント読み取り
- 単純作業の自動化
Copilot Studio でできること
- 複雑な対話 → ナレッジ検索 → 複数フロー連携
- 新規文書生成・提案・要点整理
- 記憶に基づいて改善し続ける
- 複数のエージェントで役割分担
→ “エージェントの世界観”そのものを構築できる。
5. 大きな違い:「平均値の回答」か「会社のルール」か
AI Builder
- 一般的なLLMの平均的回答
- 社内固有ルールは理解できない
- ガバナンス判断を任せるのは危険
Copilot Studio
- 企業ナレッジを前提に厳密な判断が可能
- 意図しない情報(外のWeb情報)を遮断可能
- ファルシネーション対策を構造的に行える
→ “会社ルールに沿って動くAI”は Copilot Studio 一択。
6. 最終的な使い分けまとめ(実務最適解)
🔧 AI Builder を使うべき時
- 入出力が完全に決まっている
- 形式抽出・分類などの定型処理
- Power Automate の中で完結したい
- 人間の意思判断を入れたくない
🤖 Copilot Studio を使うべき時
- 会話が必要
- 自律型エージェントを作りたい
- 社内ナレッジ(大量)を学ばせたい
- 複雑な判断・マルチステップ処理
- 会社独自ルールに従わせたい
- ファルシネーションを避けたい
→ 企業の実務AIは基本 Copilot Studio が正解。
AI Builder は“手元の特殊パーツ”。
7. ハマりやすいポイント(実務Tips)
-
「AI Builderで会話系をやろうとしてハマる」
→ そもそも会話が得意ではない。Copilot Studioを使うべき。 -
「Copilot Studioで外部の情報を勝手に拾ってしまう」
→ RAGの範囲を限定し、Web検索をオフにする。 -
「ナレッジを入れすぎて迷子になる」
→ フォルダごとにスコープを分けると回答品質が安定。 -
「運用で破綻する」
→ Copilot Studio の記憶(Memory)を使い、ログ → 改善の循環を作る。
8. 実装手順のイメージ(シンプル例)
AI Builder(フォーム抽出)
AI Builder - フォーム読み取り
→ JSON抽出
→ 条件分岐
→ SharePoint 書き込み
Copilot Studio(社内FAQエージェント)
1. SharePoint の規程フォルダをナレッジに登録
2. 「会社のルールに従って回答する」プロンプトを設定
3. Web検索オフ
4. 会話スキル + フロー連携を構築
5. 必要に応じて記憶機能をオン
9. 効果(現場で起きる変化)
- 会社ルールに即した回答が安定する
- QA対応が大幅に削減される
- ナレッジサイロ化が減る
- 現場DXのスピードが段違いに速くなる
- “人に寄り添うAI”が自然に育つ
10. 学び・まとめ
- AI Builder は“型がある処理”のための精密ツール
- Copilot Studio は“人に近い判断”が必要な仕事すべての土台
- 実務では両者を正しく組み合わせるのが最強
特に 企業のDXでは Copilot Studio の役割が圧倒的に大きい。
「会社の記憶をもつAI」を作れるという点で唯一無二の存在です。



