こんにちは。ハートランド・データ株式会社の樫村です。
これまでの記事では、Silo BustersとしてNotionの情報サイロ化に向き合った活動と、ミッションDBを軸にしたデータベース(以降DB)構造・ガードレール設計について紹介しました。
今回は、その先にある Notion AI活用 について扱います。
Notion AIを活用するには、AI機能を導入するだけでは不十分です。AIが参照できる情報が記録されており、さらに目的・背景・議事録・タスク・作業ログ・成果物が業務の文脈としてつながっている必要があります。
活動全体の背景を知りたい方は、1本目の「① 組織で使うNotion設計:情報サイロ化を見直した実践レポート」を参照してください。
ミッションDBを軸にしたDB構造を知りたい方は、2本目の「② 組織で使うNotion設計:自由度を負債にしないための設計」で詳しく説明しています。
まずは、AI活用が期待どおりに進まないとき、何がボトルネックになりやすいのかを整理します。
AI活用がうまくいかない理由
生成AIツールを導入しても期待した成果が出ないとき、原因は多くの場合「AIに渡す情報が整備されていない」ことにあると私は考えています。
ここでいう「AIに渡す情報が整備されていない」とは、たとえば次のような状態です。
- 情報がそもそも記録されていない
- 記録されていても、複数の場所に散らばっている(最悪の場合、見つからない)
- 目的・背景・判断理由といった「なぜ」が残っていない
- AIに依頼するたびに長い前提説明が必要になる(手間が多すぎて使いにくい)
AIは、与えられた文脈の範囲でしか答えられません。文脈が断片的なら回答も断片的になり、一般論のような返答しか得られません。自分の業務に即した内容を生成させたいのに、それが考慮されないと「使えない」と感じてしまい、結果として上記の状態が続く限り、壁打ちや検索ぐらいにしか使わなくなってしまうのではないかと思います。
AIに必要な情報
では、AIが業務を理解するために、どんな情報が記録されているとよいのでしょうか。私は次の7つを「残しておきたいコンテキスト」と考えています。
| 情報種別 | 内容 |
|---|---|
| 目的・背景 | なぜそれをやりたいのか |
| 経緯・判断理由 | なぜそう判断したのか |
| 会議内容 | 意思決定・情報共有の記録 |
| 作業ログ | どのような作業を行ったか |
| タスク | 何をやって何をやるか |
| プロンプト・AI出力 | AIへの指示と結果 |
| 成果物・ナレッジ | 既存の知識・成果物 |
最終的なアウトプットである成果物だけでなく、そこに至るプロセスも残し、AIにコンテキストとして渡せるようにすることが重要だと考えています。
DBのリレーション構造により、業務コンテキストをつなぐ
前の記事で説明したとおり、ミッションDBを軸に、関連情報をリレーションでつなぐ構造になっています。
以下のようにAIに渡す必要がある情報の保存先として各DBが機能し、リレーションで紐づけることで情報を辿れる状態を実現しています。
| 情報種別 | 内容 | 情報の保存先 |
|---|---|---|
| 目的・背景 | なぜそれをやりたいのか | ミッションDB、議事録DB、タスクDB |
| 経緯・判断理由 | なぜそう判断したのか | ミッションDB、議事録DB、タスクDB |
| 会議内容 | 意思決定・情報共有の記録 | 議事録DB |
| 作業ログ | どのような作業を行ったか | タスクDB |
| タスク | 何をやって何をやるか | タスクDB |
| プロンプト・AI出力 | AIへの指示と結果 | タスクDB、ナレッジDB |
| 成果物・ナレッジ | 既存の知識・成果物 | 文書管理DB、ナレッジDB |
人が見ても、ミッションから特定の議事録やタスクを特定でき、タスク実行中に「そもそもこのタスクは何でやる事になったんだっけ?」と思ったら議事録を参照すれば背景を明確にできます。
AIもコンテキストとしてリレーション構造を認識できるため、「このミッションの課題・リスクを議事録から探して」「このタスクを実施することになった背景は何」といった簡単な指示だけで、文脈に沿った回答が得られます。
Notionのコンテキストエンジニアリングと活用例
上記のように、NotionではDBのリレーション構造を作ることで、それ自体が自然なコンテキストとして機能します。さらにAIエージェントのスキルなどを組み合わせることで、誰でも簡単にAIの性能をより引き出せるようになります。
Claude CodeやCodexは優れたツールですが、非エンジニアにとってはGitHubやCLI環境の利用が難しい、という声もよく聞きます。一方Notionは、もともとあらゆる職種のコラボレーションを前提に設計されたツールであり、そこにAI機能が組み込まれています。そのため、誰でも比較的簡単に活用できる点が強みだと考えています。
※もちろん、DBのリレーション構造を設計したり、AIスキルの定義を作ったりといった取り組みを推進できる人材は必要です。
ちなみにNotionのAIエージェント基盤は以下の動画を参考にして作成しました。
弊社で活用しているNotion AIの実例を、議事録の事前準備からタスク作成、ナレッジ作成までの流れの中から一部を紹介します。
議事録の事前準備
議事録の事前準備は、会議の質を高めるうえで非常に重要です。ただし手間がかかるため、つい後回しにしがちです。だからこそ、Notion AIにたたき台を作ってもらうのが有効です。
過去の議事録や関連タスクを参照し、論点や宿題事項を整理した議事録ページを作成します。これにより、議事録準備の負担軽減だけでなく、ミーティング前の情報格差を埋める時間も削減できます。
重要なのは、単にアジェンダを自動生成することではありません。ミッションの目的、過去の議論、未完了のタスクを事前に整理しておくことで、会議の冒頭で「前提をそろえる時間」を短縮し、議論すべき内容に早く入れるようにすることです。
議事録の作成・議題の整理
会議中は、NotionのAIミーティングノートとメモ欄を活用して議事録を記録します。
このAIミーティングノートの最大の利点は、気軽にNotion上へ記録を残せることです。記録さえしてもらえれば、AIにコンテキストとして渡せる情報になります。
また、AIミーティングノートは文字情報がリアルタイムでNotion上に記録されるため、記録中でもその内容をもとにNotion AIのチャットやAIブロックで議論を整理できます。
議論の中で分からない用語が出てきたら「用語解説AI」ブロックで生成し、論点が混線してきたら「論点整理AI」ブロックで整理できます。これが、他の文字起こしツールにはない大きな利点です。
ここで作成した議事録は、単なる会議メモではなく、後続のタスク化やナレッジ化の起点になります。会議で何が決まり、なぜその判断になり、次に誰が何をするのかを残しておくことで、会議がその場限りの会話で終わらず、後から業務コンテキストとして再利用できるようになります。よって以下の内容を明確に記録しておくことが重要です。
- 決定事項を残す
- 未決事項や論点を残す
- 宿題事項や次アクションを残す
- 関連するミッションやタスクと紐づける
※AI任せだと上記の内容が抜け落ちる場合があるため、メモ欄にも明確に残すことが重要です。
タスクの自動生成
議事録や決定事項から、やるべきことを抽出してタスク化します。会議が終わったらNotion AIにタスク作成を依頼します。
タスクを作るだけなら、通常のToDoツールでもできます。重要なのは、タスクがミッションや議事録とつながっており、作業の背景までたどれることです。
これにより、「何をやるか」だけでなく「なぜやるのか」「どの会議で決まったのか」「どのミッションに関係するのか」まで含めて管理できます。後からAIに確認するときも、タスク単体ではなく、関連する議事録やミッションを含めた文脈で回答を得やすくなります。
作業ログを残す
タスクを実行する中で、調べたこと、試したこと、判断したことを作業ログとして残します。
作業ログは、AI活用において特に重要なコンテキストです。最終的な成果物だけを見ると、「なぜその方法を選んだのか」、「どこで詰まったのか」、「どの案を採用しなかったのか」が分かりません。
タスクページに時系列で作業ログを残しておけば、後からAIに相談するときに、そこまでの経緯を説明し直す必要が減ります。引き継ぎやレビューの場面でも、「ここまで何を考え、何を試したか」を共有しやすくなります。
以下のような内容をタスクページに記録しておくと良いでしょう。
- 調査した内容
- 試した手順
- 判断理由
- 詰まったポイント
- AIへの指示と出力結果
私は、開発環境の構築手順では、インストール画面などをスクリーンショットで必ず記録するようにしています。
上記の仕組みは以下のテンプレートを参考に組み込みました。
Modelist CRM |Lite with Research Agentテンプレート・作成者:株式会社Modelist | Notion (ノーション)マーケットプレイス
ナレッジ化して暗黙知を形式知へ
作業ログや議事録などの情報をもとに、再利用できるナレッジのたたき台を作ります。
ナレッジ化は、最初から立派な記事を書こうとすると負荷が高くなります。しかし、議事録・タスク・作業ログが残っていれば、AIにそれらを渡してたたき台を作れます。
つまり、日々の作業記録がそのまま組織知の素材になります。「ナレッジを作る」ことを特別な作業にするのではなく、普段の記録から自然にナレッジが生まれる状態を作ることが重要です。
その他にも、プロジェクト状況の確認や案件分析などについて、ミッション・議事録・ナレッジ・文書から情報を収集し、分析結果を生成できます。実際のミッションに即したコンテキストをもとに生成するため、期待値に近い結果を得られます。
AI活用は単発ではなく、記録のサイクルで効いてくる
ここまでの例は、それぞれ単独のAI活用にも見えます。しかし、本質的には個別機能の便利さではなく、業務の流れに沿って記録がつながっていくことに価値があります。
このサイクルが回ると、AIに毎回長い前提説明をしなくても、関連する情報をたどりながら回答を作れるようになります。
人にとっても、情報を「探す」だけでなく、ミッションを起点に「たどる」ことができる状態になります。
AI導入だけでは解決しない
ここまで述べてきたとおり、AIを導入しただけでは業務改善は自動的に進みません。重要なのは、コンテキストをどう整備するかです。
情報が記録されていなければ、AIは参照できません。情報が記録されていても、構造化されずに散らばっていれば、AIは業務の文脈を十分にたどれません。
そのため、AI活用の前提として、最低限の情報設計が必要です。
- どこに何を記録するかを決める
- ミッション、議事録、タスク、文書、ナレッジをリレーションでつなぐ
- テンプレートで残すべき情報を明確にする
- 作業ログやAIへの指示・出力も残す
Notion AIを活かすために最初に必要なのは、特別なプロンプトや高度なAIテクニックではありません。
まず、業務の目的・背景・判断・作業ログ・成果物が記録され、それらが軸となるDBでつながっていることです。
その状態ができて初めて、AIは業務の文脈を読み取り、単なる一般論ではなく、自分たちの仕事に沿った回答を返せるようになります。
まとめ
この記事では、Notion AIを活用する前提として、AIが参照できる情報を記録し、業務の文脈としてつなげておく重要性を紹介しました。
ミッションDBを軸に、議事録・タスク・文書・ナレッジ・作業ログをリレーションで結ぶことで、人もAIも情報を「探す」だけでなく「たどれる」状態に近づきます。特別なプロンプト以前に、目的・背景・判断理由・作業ログ・成果物が残る情報構造を作ることが、Notion AI活用の土台になります。
活動全体の背景は、1本目の「① 組織で使うNotion設計:情報サイロ化を見直した実践レポート」、ミッションDBを軸にしたデータベース構造とガードレール設計は、2本目の「② 組織で使うNotion設計:自由度を負債にしないための設計」で紹介しています。









