**「『プロジェクト管理に課題なんて無い』と言う方がいたら会ってみたい」**とまで思ってしまうほど、個人的にプロジェクト管理には多くの課題を感じています。自社で開発・使用しているプロジェクト管理ツールにだって、「もっとこうだったら良いのにな。」と思うところも多々あり…。
前回の「プロジェクト管理の課題と解決(1)『必要なものは造る』と自社でプロジェクト管理ツールをつくった話」では、どういった想いや背景でプロジェクト管理ツール『Time Krei』の開発をしたかという事を振り返ってみましたが、今回はプロジェクト管理ツールの開発に大きな影響をもたらした『工事進行基準』についてまとめてみます。
##追い風になった『工事進行基準』
2009年4月の事業年度から**ITベンダーの会計処理に原則的に適用されることになった『工事進行基準』**は、2008年にリリースされた『Time Krei』の追い風になったと言えます。この動きは業界全体の働き方の意識を底上げするような潮流となりました。
『工事進行基準』とは長期的なプロジェクトにおける会計基準のうち、売り上げを期毎の進捗に合わせて分散計上する方式のことを言います。決算日ごとに人件費などの原価と売り上げが計上されるため、プロジェクトの終了時にまとめて計上するやり方(工事完成基準)に比べて、不採算などが発見されやすくなり、企業会計の透明性が保たれるという大きなメリットがあります。
建設業や海外のSIer(エスアイアー/System Integrator)では広く採用されていたものの、それまで『工事完成基準』(プロジェクトが完了し検収を受けた段階で収益を計上する)が主流だった国内のソフトウエア受託開発事業での適用は、多くの戸惑いを生み出したことでしょう。
売り上げ、原価総額、決算日における進捗度の三つの要件について信頼性をもって見積もるということは、プロジェクト管理の厳格化を意味し、今までの企業間の関係や契約における慣例の見直しを迫られる事案も多く出てくるからです。
##当時は8割以上が未対応。進まない『工事進行基準』の適用
『工事進行基準』は、全世界の企業会計の基準を統一するコンバージェンスへ対応(自国基準をできるだけIFRS(国際会計基準)に寄せること)の中の一つです。
日本では、企業会計基準委員会と国際会計基準審議会(IASB)の共同プロジェクトの第一回会議が2005年に実施されたそうですが、『工事進行基準』の適用が2009年4月ということは、もし第1回の会議でスケジュールが決まっていたとしてもその準備には4年もありません(実際には準備期間は「1年あった」と小耳にはさみましたが…1年て短くない?)。
『原則適用』であるので、規模が小さいプロジェクトや先の三つの要件(売り上げ、原価総額、進捗度)をきちんと見積もれないのであれば適用はしないということになります。テンダの取締役が2010年のインタビューで『工事進行基準』について、「『今後どうなっていくのかと窺っている』という状態。」と答えている通り、当時、すでに対応が完了していると答えた企業は全体の2割未満に留まっていました。8割以上の企業は、対応しなくてはいけないと理解しつつも、すべてをルール通りに対応することは難しい状態だったのではないでしょうか。
ISOやコンプライアンスに関しての規制が非常に高まっている時期ということもあり、「管理する」ということにコストをかけ整備しなくてはいけないが、工事進行基準対応も必要で業界全般的に手が足りない、回っていないという状況です。
また、『工事進行基準』自体の定義が非常に曖昧だということも、実行に移すのに迷いを生む状況を作り上げていました。どの水準までやらないといけないのかなどが非常に曖昧であるために、初速が弱まっていたのでしょう。
しかし、収益の根拠が明確にされる必要があるため、『工事進行基準』がきちんと適用できないということは経営管理上の問題と言えます。そのため、経営者や管理者の意識の底上げにつながり、また少しでもわかりやすく、個々の担当者がそれぞれの数値を正しく登録していくことで『工事進行基準』に対応することができる『Time Krei』は、経営者の目線で見てもインフラ的なツールであると言えました。
##(今回のまとめ)追い風もあれば、逆風もある
前回の「ワークライフバランス」に続いて、今回の『工事進行基準』の適用は、「きちんと新しい基準に沿って管理しなければならない」、つまりは担当者一人一人が自分のタスクをきちんと登録すれば自動的に計算・管理をしてくれるツールである『Time Krei』のアドバンテージを説明するにはとても良い状況だったと言えます。
これだけ聞いていると、時流を読み流行にも乗ってとても良い船出をしているかに見える「プロジェクト管理ツール」の開発ですが、考えることは皆同じでこの後はどんどん似たような製品がリリースされていくのです。
レッドオーシャン(まではいかない?)化が進むと重要なのは、「課題を解決する必要最低限な機能がきちんと機能するか」という基礎工事と、さらに利用者に対して他社に比べて優位な点があると提示できるか、といったところでしょうか。
次回はさらに細かく「プロジェクト管理ツール」の機能について考えていきたいと思います。
もし、テンダのプロジェクト管理ツール『Time Krei』(タイムクレイ)にご興味をお持ちの場合は、是非一度サービスサイトをご覧ください。