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世界中の企業2135社に聞いた、AI導入の最新状況のまとめ

Last updated at Posted at 2018-11-26

Photo by Pedro Lastra on Unsplash

先日、マッキンゼーから世界中の企業2135社からのヒアリングをもとにした、企業のAI導入に関する最新の状況に関するレポートが出てきました。

(正確には回答者が2135人ということなので、同じ会社から複数回答者の可能性もあります。ただ一般の人へのアンケートではなく、彼らのクライアントへの調査なので、一般的には回答者一人が一企業を代表しているようです。)

ある程度予想できることかもしれませんが、やはり、ハイテク、金融、通信といった業界がAIの導入のスピードが早く成果もどんどん上げているようです。また、リテール(小売)などといった業界はコアビジネスでのAIの採用はそんなに進んでないようですが、それでもマーケティングや営業といった部門では積極的に採用が進んでいるようです。

ただ、こうして採用がどんどんと進んでいる企業というのは、すでにデジタル化が進んでいる企業のようで、逆にそこでつまづいている企業は、AIでもつまづいているようです。AIにしろデータサイエンスにしろ、データがあるのが前提なので、デジタル化が進んでいるかどうかというのは、AIのプロジェクトを始める際には重要なポイントですね。

それでは、以下に簡単な要訳です。


AIはどこで使われているのか

テレコム(通信)、ハイテク、金融サービス関連企業が全体のAIの導入では先を行っています。テレコムであればサービス部門、ハイテクであればプロダクトやサービスの開発、金融であればリスク管理、サービス部門での導入が進んでいるようです。

また、リテール(小売)では、マーケティングと営業部門で52%の回答者がでAIを導入しているとのことです。他の業界では29%ほどなのでかなり多いのがわかります。この業界ではサプライチェーン管理の部門でも高い率で導入が進んでいるようです。これは、在庫管理や配送の仕組みをAIを使って最適化させているAmazonような企業を想像すると納得がいくと思います。

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AIはどの分野で価値をつくっているのか

AIが価値を生み出しているかどうかについては、同じ企業の中でも部門によって差があります。半分以上の回答者が以下の分野でAIが価値を生み出していると答えています。

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製造分野では57%が非常に大きい価値を生み出しているのに対して、マーケティング/営業、人事分野ではその率は35%、33%と低めです。

AIの導入を何が可能にするのか、そしてそのさいの挑戦とは

どこでAIが価値を生むかということを会社全体をみわたした上で、総合的なレビューをしているのはたったの17%でした。また、AIに必要なデータを生成する仕組みを作るためのしっかりとした戦略を持っているのはたったの18%でした。

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AIの導入にあたっての一番大きな問題は戦略に関するもののようです。例えば、明確なAI戦略がない、適した人材がいない、組織内部の壁により、始まりから終わりまでの一貫したAIのソリューションが作れていない、責任を負ってAIにコミットしているリーダーがいない、といったものがあります。

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デジタル化の次にAIがある

AIの導入を成功させるのに重要な要素は、デジタル・トランスフォーメーション(デジタル化による変革)がどれだけ進んでいるかです。コアビジネスをデジタル化するということに関して最も進んでいるような企業はAIの採用にあたっても先を行っています。

最もデジタル化が進んでいる企業は、67%の人たちがふつうのビジネスプロセスにAIを組み込んでいると答えているのに対して、そうでない企業ではその率は43%となっています。

そうしたデジタル化が進んでいる企業では、AIの中でも機械学習を導入している企業が多く、その率は39%ほどです。逆にそうでない企業ではその率は16%にとどまっています。

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AIに対する投資

ここでも、デジタル化が進んでいる企業とそうでない企業の差が出ています。デジタル化が進んでいる企業ではデジタル化に関する投資の20%以上がAIに向けられているとのことです。そうでない企業ではその比率はたったの8%程です。

人材の獲得

AIに関する適した人材を獲得するということに関しては、どの企業も同じように苦労しているようです。ただ、デジタル化が進んでいる企業にとってはこの人材獲得が一番大きな問題なようで、41%の回答者がこのことを問題に上げています。

トレーニングとスキルアップ

どの業界を見ても、さらに通信、ハイテク、金融サービス業界にある企業のようにAIの導入が進んでいる企業でさえ、AIに関しての人材は内部と外部の両方から調達しているようです。もちろん、こうしたAIの導入が進んでいる企業は内部でAIの能力を育成していくことに重心をおいています。

そのためには適切なスキルを持った内部の人材が必要になります。ハイテクと金融サービス業界では、再トレーニングとスキルアップに力を入れています。これは、もっともデジタル化が進んでいる企業でも同じで、そういった企業ではAI機能の内製化と既存の従業員に対するトレーニングを重要な課題として挙げています。

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従業員は減少するのでなく、増加する

今から3年も経つと、自分たちの会社にとってはAIは従業員の数ということにおいてほとんど影響はないと答える人が何人かいました。デジタル化が進んでいる企業は社員の数はむしろ増えるだろうと回答しています。

AIの最も大きな影響は人々の行う仕事自体です。それは、全体的に仕事が減るということよりも、これからいっそうコンピューターと人間の協業が多くなっていくというかたちで現れてくるでしょう。

まとめ

AIがまだパイロット・プロジェクトの段階で、そこから抜け出せない企業が多いようですが、これは危険な兆候です。企業にとっての大きな規模での成果を出すには、こうしたAIの力を全社に広めていくだけでなく、ビジネスリーダーによるAIに対するしっかりとした理解とコミットメントが必要です。さらにテクノロジーにフォーカスするだけではなく、それが導入された時に起きるビジネスフローの変化を計画し管理していくことも重要になってきます。

多くの組織ではAIの導入はスピードを持って進んでいるとはいえ、AIから価値を得るためには、それを推進する力が必要になります。それらは、エグゼクティブ・レベルのスポンサーシップ、会社全体を見回した上でのAIを使うことのできるプロジェクトのポートフォリオの作成、足りていない人材を埋めるための行動計画、洗練されたデータ戦略の導入計画だったりしますが、こうしたものは、より戦略的な思考が要求されます。

ビジネスとテクノロジーのリーダーはこうした問題をすばやく解決していく必要があります。そうでなければ、それは現在とさらに将来におけるAIによる変革の機会を逃してしまうことになるのです。


以上、要訳終わり。

あとがき

本文の中にあった調査結果の中でも、AIの価値を実現するためのチェックリストに対しての回答が、個人的に気になります。以下のチャートです。

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例えば、「AIが出してきたインサイトを従業員が信用しているか (Employees trust AI-generated insights)」という質問に対してはたったの16%の企業しかそうだと言えないそうです。

また、「現場の人たちがAIを意思決定と実行のプロセスに組み込むことができている (Fontline workers embed AI into formal decision-making and execution processes)」に関してはたったの6%の企業でしか実現できていないようです。

今までデータとAIを使って意思決定を行なってきたことがない組織に、いきなりAIのシステムを使えといっても混乱が生じた後で、そんなシステムは忘れ去られていくでしょう。ここの仕組みをしっかりと作っていくことが重要です。

AIは私達人間の意思決定のプロセスに組み込まれてこそ本当の価値を発揮することができるのだと思います。そしてこのことが史上最大のビジネスの変革になると言われる所以です。なんといっても、すべてのビジネスの意思決定の仕方が変革されるわけですから。

本文でもありましたが、AIの導入で成果を出している企業はAI機能の内製化、そういった機能を使うことができる人材の育成に力を入れています。残念ながらそのためには、外部からコンサルを呼んできて、AIで全てが自動化されるといったような夢物語のような近道はないというのが現実です。どんなにテクノロジーが進化してもビジネスを行うのはずっと人間であり続けます。少なくとも次の数十年の間は。ということは、人材育成こそが最も重要なわけですね。

例えば、そのためにアナリティクス・トランスレーターという人たちを育てる、採用するというのは一つの手です。

また、そういった人材を含め、データ、アナリティクス、AIのリテラシーを上げるための社内トレーニングを行うというのも一つの手です。

こういった仕組みをそれぞれの企業の内部でしっかりと作っていくことが、これからますます重要になってくるのと思います。

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