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データサイエンスプロジェクトの成功に今一番必要な人

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日本でもデータサイエンティストを雇ってデータサイエンスのプロジェクトを始める企業が増えてきているようですが、残念ながらそうしたプロジェクトが失敗するときによくあるパターンの一つに、データサイエンティストを雇ってその人達にデータ分析を丸投げしてしまうというものがあります。

ここで問題になるのは、分析をするデータサイエンティストとその分析から得られるインサイトを持って意志決定を行うはずのビジネス側の人間との間のコミュニケーションが上手く取れていないということです。これは以前にも”多くの企業がデータサイエンティストを活かしきれない4つの理由”という記事で取り上げました。

もちろんこうした問題は日本だけでなくアメリカでも起きているのですが、この二つのグループの人たちの間を取り持つことを期待されているトランスレーターという職種がこれから重要になってくるという内容の記事がHBR(Harvard Business Review)から"You Don’t Have to Be a Data Scientist to Fill This Must-Have Analytics Role"として出ていたので、ここで簡単に紹介したいと思います。

以下、抜粋


ビジネスとデータサイエンスを結ぶ仕事

多くの企業ではAIならびにデータサイエンスのプロジェクトにはデータサイエンティストだけではなく、様々な専門のスキルを持った人たちが必要ということが分かってきました。データ・エンジニア、データ・アーキテクト、データの可視化の専門家、そして、おそらく一番重要であろうトランスレーター(翻訳する人)といった人たちです。

ここでトランスレーターと言っているのは何も言語の翻訳をする人のことではありません。データサイエンスの言葉とビジネスの言葉を仲介することができる人のことです。つまり、データサイエンティストやデータエンジニアといった人たちの技術的な専門性とビジネスの前線に出ているマネージャー達のマーケティング、サプライチェーン、製造、金融などといった業務に関する専門性を結びつける役を担う人たちです。

彼らはデータサイエンスの分析から得られた深いインサイトが組織にとって大きなインパクトを与えるものであるように調整する人たちなわけですが、マッキンゼーによると、2026年までにアメリカだけで400万人ものこうしたトランスレーターとしての仕事ができる人材が必要になるということです。

データサイエンスやデータ分析のプロジェクトにおけるトランスレーターの仕事は、ビジネスリーダーが抱える問題をデータによって解決することのできる問題として明確に定義するところから始まります。そして、自分の持つAIやデータサイエンスの知識をもとにデータサイエンティストたちの言葉でそうしたビジネスの問題やプロジェクトのゴールを伝えます。そして、データサイエンティストがデータより導き出したインサイトを、今度はビジネスサイドの人間が理解できるかたちに落とし込んだ上でレポートします。ここでは、ただの予測の結果だけではなく、なぜそういう結果になっているのかを説明することも求められます。

必要とされるスキル

トランスレーターに求められるスキルとしては以下のものが挙げられます。

  • 業務知識
  • 一般的なAI、データサイエンスの技術に関する理解
  • 量的分析と構造的に問題を解決できる力
  • プロジェクト管理のスキル
  • 起業家精神

2番めの、一般的なAI、データサイエンスの技術に関する理解とは、自分で機械学習のモデルを作る必要はないにせよ、どういった機械学習のアルゴリズムがあって、それらがどういうビジネスの問題を解決するために使われるのかを知っておく必要があるということです。さらに機械学習のモデルから得られる予測結果やインサイトを理解することができ、ビジネス担当者にわかりやすいかたちで伝えることができるべきです。

さらに業務知識を使って、モデルの結果がおかしい時にはそのことに素早く気づくことができるというのも、この仕事に求められています。

外から探すか育てるか

それではそういった人材はどこにいるのでしょうか。

こうした人材が必要とされる緊急度を考慮すると外からの採用が手っ取り早いと思ってしまいがちです。しかし外から取ってくる人材にはトランスレーターの成功のために最も重要なスキルである、あなたの会社特有の業務知識が欠けています。結果として既存の社員に対してこうしたデータサイエンスの手法、AIの新しい技術、アルゴリズムに関する知識を提供するようなトレーニングを行っていくほうが効果があるというのがこれまでの経験より証明されています。

現在はこうしたトランスレーターの職種における資格などはないので、多くの企業ではそうした人材を育てるための社内アカデミーを試行錯誤しながら作っていっています。例えばある世界的な鉄鋼会社では300人のマネージャーを対象とした1年間の教育プログラムを実施しています。マッキンゼー自身も社内でアカデミーを作り、去年だけで1000人のトランスレーターをトレーニングしています。アカデミーのカリキュラムはAIを使うと何ができるようになるのかというものから特定の技術や手法の勉強など様々です。フォーマットはコースとして比較的長い期間で行うものから、短期集中で行うものもあります。


以上、抜粋

私は個人的には、こうやってまた別の新しい職種を作ってそこに放り投げてしまうのではなく、旧世代がすでにワードやエクセルを使ってビジネスを普通に行っていけているように、これから次世代を担っていくことになるビジネスリーダーたちは、データサイエンスの手法を使いこなしながらデータ分析を自分たちの手でしていくべきだと思いますし、もしできないまでも、少なくともある程度の理解はできているべきだと思います。

というのも、そういったデータ分析をもとにした意志決定こそが、現在進行中のAI産業革命を生き抜くビジネスにとっては必須であり、そうしたビジネスに直接関わる人間がデータ分析を行う、もしくは少なくともそこで必要とされるデータ分析の手法やフレームワークを理解することで、彼らの意志決定のクオリティとスピードの向上につながると思うからです。

そして何よりも、データ分析を通したアナリティカル思考とは私達人間に残されているクリエイティブで自動化できない仕事の一つでもあるからです。

しかし、そこへいきなり行くのは企業としては難しいというのも現実かもしれません。その場合は、トランスレーター的な役割を担う人を社内でトレーニングしていくということも、移行期におけるひとつの選択肢となり得ます。そして、AI、データサイエンス、ビジネスを理解することができるトランスレーターの中から、将来のビジネスリーダーが出てくるということになるのではないでしょうか。

Exploratory社主催セミナー in 東京

この3月の28日水曜日に、データサイエンス力のある次世代ビジネスリーダーの育成についてのセミナーを開催します。私どもがデータサイエンス・トレーニングを実施している、シリコンバレーと東京のデータ先進企業での事例も織り交ぜながら、AI/データサイエンス人材育成に課題をお持ちの皆様に役立つ情報を共有させていただきます。社内人材育成やプロジェクトの進め方などに興味のある方はぜひ参加していただければと思います。こちらのホームページに詳しい情報があります。

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