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『分析者が本当に必要なデータマート』を作るためにデータエンジニアが毎日マーケターと話してわかったこと

Last updated at Posted at 2025-12-20

はじめに

この記事は「LITALICO Advent Calendar 2025」カレンダー2の20日目の記事です

株式会社LITALICOの @KakkiiiiKyg です。
働くことに障害のある方の就職情報サイト「LITALICO仕事ナビ」の開発を行っているエンジニアです。

今回は最近マーケターと一緒に取り組んでいる「データマートの整備・再構築」について書こうと思います。

背景・課題

LITALICO仕事ナビでは、エンジニアが記述したSQLを元に作成・更新されるテーブルをデータマートとし、事業運営に活用してきました。

データマートのテーブルは、事業の急成長に合わせて改修を重ねてきた結果、データの全容を把握することが難しくなっている状態でした。

また、データマートのテーブルをGoogleスプレッドシートに繋げ、それをまたスプレッドシート上で計算をし数値を算出するということをしており、ダッシュボードが重くなり、気軽に分析が行えない状態でもありました。

加えて、サービス立ち上げから長く事業を牽引されてきてデータマートの全体像を把握していた分析者の異動が決まり、とうとうデータマートの整備に本腰を入れて取り組まなければならない状況となりました。

やったこと

この状態で、新たに主に手を動かして分析を行うことになるマーケターと私の2名でデータマートの再構築を始めることになりました。

具体的には以下のことを行いました。

①既存のテーブルの中からターゲットを絞って定義を可視化し"完全に"理解する

LITALICO仕事ナビではいくつかのサービスをご提供させていただいていますが、その中の1つに、障害者雇用求人を探されている求職者と障害者雇用求人を出している企業をマッチングする人材紹介サービスがあります。

この人材紹介サービスの「求職者の方の会員登録から企業に内定されるまでの履歴の分析基盤」を構築することを最初のターゲットとしました。いきなり一から全てのテーブルを見にいくのではなく、優先順位をつけ、最初のターゲットを達成する上で必要そうなテーブルをピックアップし、各テーブル・カラムの正確な定義をまとめた定義書を私の方で作成しました。

スクリーンショット 2025-12-18 23.29.51.png

「求職者の方へヒアリング担当者の行動ログのテーブルからカウントした架電数と、求職者の方の情報をまとめたテーブルからカウントした架電数が一致しないが、これはどういうケースで異なる数値になるのか」や「途中で求職者の方につく担当者が変わった場合にこの値はどうなるのか」などの細かいレベルでの厳密な定義をしっかり話し、マーケターと私、お互い完全に理解するようにしました。

逆にこれをどのように使いどういう観点で何を分析しようとしているのか、現在だとどこは使いにくいのかを教えてもらい、「使われ方」についても理解を深めました。

②BIツールTableauの導入

スプレッドシートを用いたダッシュボードの構築がデータ量の観点で限界だったこと、マーケターがTableau使用に慣れていたこと、他部署でTableauの導入実績があり社内での同一BIツールのノウハウ蓄積・共有の観点からもTableauを選定し導入を行いました。

私自身はTableauの使用経験がなかったので、自分でも分析ダッシュボードを作ってみることで、使用方法のキャッチアップを行いました。当時は自分が分析業務まで行うわけではないものの興味があったので色々いじっていたというのが一番の動機だったのですが、後から振り返るとやっておいて良かったと感じます。理由は後述します。

スクリーンショット 2025-12-18 23.46.30.png

③新規テーブル作成・カラム追加

テーブルを可視化してTableauでの分析を開始しました。すると、分析者にとって欲しいカラムが今のテーブルにはなかったり、そもそも新しいテーブルを作らないと分析したいことができなかったりすることが分かってきました。

マーケターの要望を聞き、かと言ってただ言われた通りにカラムを追加するのではなく、「分析者が本当に必要なもの」を考えて提案し議論して仕様を決めていきます。

project_comedy_l.gif

ここがデータマート構築の一番難しいところでもあり、面白いところだなと感じています。

④毎日分析者と話す

①〜③をやっていきながら、とにかく毎日マーケターと話していました。週2回は1on1で話す、それ以外もチャットでずっと話しています。

「分析者が本当に必要なもの」を考える上でこれが一番効いたと思いました。始めは「データの定義の確認」や新しいカラムを追加するときも「カラムの定義」をしっかり話し、擦りあわせて開発を行っていました。擦り合わせの回数が増えていくことで私の分析業務への解像度が上がり、要望を聞いてから最終的に反映されるまでにリードタイムがどんどん短くなっていき、徐々に信頼関係を構築することができてきました。そうなるとお互い毎日困りごとや詰まっていることを気軽に話せる関係になっていき、さらに改善スピードが上がっていく好循環を作れたと思います。

【取り組み初期】

  • マーケター「このテーブルにこういうカラムを追加したいです!」
  • 私「背景詳しく聞かせていただいて、その後仕様擦り合わせさせてください!」(この後背景を聞いて細かい仕様の話をむっちゃして認識を擦り合わせる)

【今】(※もちろんいつもこう上手くいくわけではないです)

  • マーケター「このテーブルにこういうカラムを追加したいです!」
  • 私「もしかしてこういうことに困ってます?それならこういうカラムを追加すれば目的は果たせて、かつ定義がシンプルなので他の分析にも使いやすいし、追加もすぐにできるんですが、こうしませんか?」
  • マーケター「それでいきましょう!」(すぐ決まる)

Tableauのキャッチアップもここで効いていました。「これはTableauの機能を使ってもらえれば大丈夫」「これはデータマートにカラムを追加しないと分析できない」ということがある程度理解できたことで、分析者のニーズも叶えられてなるべくシンプルな仕様にできるよう努められたと思います。

取り組みの成果

マーケターの分析があってこそですが、事業課題の特定→仮説立案→検証のサイクルが明らかに早くなりました。その成果に自分も少しは貢献できたかなと感じ、嬉しく思っています。

スクリーンショット 2025-12-19 9.39.21.png

「分析者が本当に必要なもの」がわかるために必要だったこと

データマートの設計は教科書的な解・唯一の正解があるわけではないので、多くの現場で悩みながら取り組んでいるテーマだと思っています。

今回の取り組みで、良いデータマートの設計のためにデータエンジニアには「分析者と同じことで悩めるようになる」ことが求められると学びました。その前提として、知識のインプット・関心ごとの把握は絶対です。その上で「相手の関心ごとに対して同じくらい一緒に考える」ということが必要だなと感じました。

そしてこれは「良いプロダクトを創る」ために「ユーザーへの高い解像度での理解が必要」ということと全く同じ話だと思いました。

おわりに

最近取り組んでいる「データマートの整備・再構築」について書かせていただきました。

この取り組みは現在も継続中のものになります。引き続きより良いサービスづくりのため、その土台となる分析基盤の整備を続けていきたいです。

以上、「LITALICO Advent Calendar 2025」カレンダー2の20日目の記事でした。明日は @zacky_50 さんの記事になります。お楽しみに!

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