ノーコード開発
筆者略歴
本題に入る前に、まずは筆者の自己紹介を。
いわゆる「コの業界」でそれなりの期間、禄を食んでいるエンジニアです。普段は企画・設計といった上流工程から、ゴリゴリと手を動かすコーディングまで一通りこなしています。
本当に1行もプログラミングコードを書かずにアプリが作れるのか?
最近、IT界隈で「ノーコード開発」という言葉を頻繁に耳にします。なんでも、プログラミングコードを一切書かずにアプリケーションが作れるとか。
長年キーボードを叩いてきた身としては「本当か?」と疑ってしまう話ですが、これは試してみる価値がありそうです。
そこで今回は、コーディングAIとして名高い Claude code と、設計の相棒として Google Gemini を使い、この命題が真実かどうかの検証に挑みました。
実際に作ったもの~Spotify Playlist Manager
選んだ理由
AIに「Hello World」を書かせても、その真の実力は測れません。
せっかくなので、ある程度実用的で、少し難易度の高いものに挑戦しようと考えました。そこで選んだのが、Spotify APIと連携し、プレイリストを管理するWebアプリです。
まずは第1段階として、大量の曲が溜まったプレイリストから、不要な曲を効率的に削除する機能の実装を目指します。
開発環境
AIとの開発は場所を選びません。そこで、どんなマシンでも同じ環境をすぐに再現できるよう、開発環境はDockerで構築することにしました。正確には、VSCodeのdevcontainer機能を利用しています。
これにより、Windows (WSL2)、Ubuntu、macOSのいずれの環境でも、リポジトリをクローンするだけで全く同じ開発環境が手に入ります。
開発環境は以下のリポジトリで公開しています。devcontainer.jsonで使用するユーザー名を変更するだけで、すぐに開発を開始できます。もちろん、Claude codeも自動でインストールされるように設定済みです。
Maxプラン
ここで現実的な話を一つ。
Claude codeを本格的に利用するには、Anthropic社の有償プラン(Maxプラン)が必須です。
参考までに、今回のアプリ開発(約3日間)だけで発生したコストは $81 でした。
これを従量課金で運用し続けていたら…と考えると、少し恐ろしくなります。

今回はひとまず$100分のクレジットを購入して臨みましたが、ヘビーなやり取りを続けた結果、しばしば Claude Opus 4 の利用回数制限に達しました。AIとの本格的な協業には、それなりの投資が必要だと心得ておきましょう。
設計
「非エンジニアの人は設計なんてするの?」という素朴な疑問はあるかもしれません。
しかし、私のようなエンジニアにとって、設計なしに開発を始めることなどあり得ません。それはAIがコーディングするとしても同じです。
そこで今回は、設計書を Google Gemini に作成してもらいました。
まず、作りたいものを考えて箇条書きにします。それをGeminiに渡して要件定義書を作ってもらいました。次にこの要件定義書をGeminiに渡して外部仕様書を作り、外部仕様書を元に詳細仕様書、画面仕様書、試験仕様書を作ってもらいました。生成された設計書は、かなり厳密でしっかりとしたものでした。さすがはAIです。
驚くべきはそのスピード。
設計全体に要した時間は約2時間でしたが、その内訳は、私が要件定義を考えて実装したい内容を列挙するのに1時間50分、Geminiが設計書一式を出力するのにわずか10分でした。
実装
Geminiが詳細設計書まで作ってくれましたが、蓋を開けてみれば、Claude codeは外部仕様書(≒要件定義)を読み込ませただけで、ほぼ完璧なアプリケーションを実装してしまいました。
もちろん、細かい修正依頼は何度か行いましたが、最初にしっかりとした設計(特に要件)を固めていたおかげで、手戻りなく、スムーズに動くものが出来上がりました。
今後は、AIへの指示の出し方を工夫することで、さらに効率化できるかもしれません。これは次なる課題です。
できたものを見て
実作業時間と中身を見て驚愕
コーディング(AIへの指示出し)、動作確認、READMEの作成まで含めて、実作業時間は4時間足らず。
それでいて、出来上がったものはほぼ要求通り。ライトモード/ダークモードの切り替え機能もしっかり実装してくれました。
この品質のものを、自分の手で1行もコーディングせずに作れてしまったという事実に、ただただ驚愕するばかりです。


非エンジニアがこれを作れるか?
結論から言うと、「条件付きで作れる」 と思います。
その条件とは、以下の2つです。
-
どんな物が欲しいのかを、具体的かつ明確に文章で表現できること。
- つまり、しっかりとした「要件定義」を書ける能力が必須です。曖昧な指示では、AIも動きようがありません。
-
ポート番号、リダイレクトURL、APIトークンといった基本的なIT用語を理解し、自身でアカウント取得や設定作業を行えること。
- これらはAIが代行できない、人間が行うべき作業です。
今回、プログラムコードには一切触れていません。
したがって、上記2つの条件をクリアできれば、非エンジニアの方でも同程度のアプリケーションを開発することは十分に可能だと感じました。
作成したもの
今回作成した開発環境とアプリケーションは、以下のリポジトリで公開しています。
- devcontainer開発環境
- Spotify Playlist Manager