Fivetran は、データの ELT (Extract → Load → Transform) プロセスにおける「Transform」部分を支援する Transformations において大きく2つのアプローチを提供しています。
① Pre-built Data Models(事前構築済みデータモデル)
- Quickstart Data Models:Fivetranのダッシュボードから、ワンクリックで使えるデータモデル。コーディング不要で、BIツールに即接続可能な「分析向け整形済みデータ」が手に入ります。
- Fivetran Data Models(dbtパッケージ):dbt Coreプロジェクトに取り込んで使える、よりカスタマイズ可能なモデル。ソースの正規化からテスト・ドキュメント・変換処理・スケジュールなどが整っています。
② Integrations(統合型変換)
- Fivetran Hosted dbt Core:Fivetran上でdbt Coreをホストし、SQLによる変換を管理・実行。
- dbt CloudやCoalesceとの連携:Fivetranでデータ同期後に、これら第三者ツールへの変換実行をトリガーすることで、ワークフローの一元管理が可能に。
整理すると以下の感じです。
ソリューション | 目的・価値 | ユースケース例 |
---|---|---|
Quickstart Data Models | ・迅速な分析投入・開発工数削減 ・一貫した指標を自動整備 |
・マーケティングROASを即可視化 ・GenAI向けのテキストデータ≪ベクトル化≫モデル投入 |
Fivetran Data Models(dbt) | ・ドキュメント・テスト付きの信頼性高い変換 ・バージョン管理やSQLカスタマイズ |
・SaaSごとの典型的分析パターンを標準化→Salesforce受注、QuickBooks元帳分析など |
Integrations(dbt Core/Cloud/Coalesce) | ・変換の履歴・スケジュール一元管理 ・高度なオーケストレーション |
・Fivetranでデータ同期→dbt Cloudで複雑な変換→通知・ログ管理までFivetranで可視化 |
「Quickstart Data Models」に関してFivetranブログを参照してもう少し深く整理します。
1. Quickstart Data Modelsとは?
-
「Quickstart Data Models」は、raw dataの上に重ねる、業務即活用可能な変換レイヤーです。
-
モジュール化され、BIツール(Power BI, Tableau, Sigmaなど)に即プラグインできる分析用のデータプロダクトとして設計されています。
-
特長は以下の通り:
特長 説明 Prebuilt(事前構築済み) 開発に数週間〜数ヶ月かかる処理を即利用可能 Fivetranとデータコミュニティによって維持管理 ユーザーは、スキーマやユースケースの進化に合わせて有用性を高めるため、Fivetranチームと協力することがあります 型有りだが柔軟対応 標準課題を即解決、さらに自社独自要件の拡張もOK Gartnerの「データ製品」の定義と一致 キュレーションされたデータ、メタデータ、テンプレートを含むことで、即時の価値を提供します
2. なぜ注目されるのか?
- マーケ/営業/CS/経理などの現場では、複数ツールやAPIから指標を組み合わせる必要があり、レポート作成に遅延や不整合、意思決定のブレーキが発生しがちでした。
- Quickstart Data Modelsは、Fivetranが同期した正規化済みデータを即座に業務ニーズにマッチするモデルに変換するため、「迅速・信頼・一貫性ある分析基盤」の提供が可能です。
3. 実際のユースケース:マーケティング活用
-
課題例(デジタル広告分析):
- Google、Meta、TikTok、LinkedInなど複数チャネルの広告データ(支出/インプレ/クリック/コンバージョン)をチャネル横断で広告費対効果(ROAS)を分析することが困難。データは異なるプラットフォームに分散しており、命名規則は標準化されておらず、アトリビューションロジックもプラットフォームごとに異なっている。
-
ad_reporting Quickstartデータモデルの利用例:
- Google、Meta、TikTok、LinkedInなど複数チャネルの広告データ(支出/インプレ/クリック/コンバージョン)を一元化可能。
- 標準フィールドとROAS(広告費対売上比)計算を含む統一データモデルとして提供。
→ 分析や比較がすぐに可能 → マーケ施策や支出管理を最適化
4. 対象業界とユースケースの広がり
Quickstart Data Modelsはあらゆる業界・規模に対応可能なように設計されています。
参考:
- 金融:トランザクションモデル、会計処理
- Eコマース:マーケティングアトリビューション、商品ファネル分析
- B2B SaaS:顧客ジャーニー分析、営業パイプラインレポート
- メディア/エンタメ:視聴者エンゲージメント、コンテンツパフォーマンス
- 小売:在庫予測、オムニチャネルマーケティング分析
→ 技術的/非技術的チーム双方に分析への敷居を下げ、迅速な意思決定を支援
5. 利用価値と効果まとめ
- 変換作業のほぼ自動化:共通指標(広告/ソーシャルレポートなど)に対し、再発明の必要なし。
- 時間を“作る”:データチームは生成ではなく、インサイト抽出や意思決定に集中可能
6. エンジニア視点でのメリット
- BIや分析基盤にすぐつなげられる:ダッシュボード構築に直結。
- 自社の拡張ロジックにも対応可:標準モデルに自社データや計算ロジックを重ねるだけ。
- dbt等と連携が可能:既存dbtプロジェクトとの統合も対応(Quickstartまたはプロジェクト形式選択可)
- 高速なPoC実施:クイックスタートで即利用可能、検証〜本番移行もスムーズ。
参考リンク(URL付き)
-
元記事:Unlocking the power of data products with Fivetran’s Quickstart Data Models
https://www.fivetran.com/blog/unlocking-the-power-of-data-products-with-fivetrans-quickstart-data-models -
dbt対応:Quickstart Data Models と Fivetran データモデルの違い・使い分け
https://fivetran.com/docs/transformations/quickstart