概要
「理解できる説明」と「納得できる説明」似てるようで違いますよね。
このモヤモヤを言語化し、かつ図として表現することができることに気づいたので、それを記載します。
納得してもらうための説明の仕方だけを知りたい方は、『理解は「縦方向の説明」 ⇦⇨ 納得は「縦と横の説明」』まで飛んでください。
記事を書いた理由
社会人5年目になり、「この人の説明は理解できるけど腑に落ちない」となる時と逆に、「すごく納得できるなぁ」となる時のギャップが激しいと感じていました。何がその差を生んでいるのかをずっと考えており、最近気づきました。
結論、『他の選択肢を提示しているか?』がポイントとなります。
(筆者は最近 プロジェクトリーダーをやるようになりました。プロジェクトの中でメンバーにアイデアを出してもらい、それを筆者に説明してもらうことをたまにするのですが、筆者の頭の中では「君の説明は理解できた。しかし、それをやるためには方法AとBとCとDとEがあるのに、なぜBを選んできたのかがわからない。」ということが多々発生しました。なぜ?という問いが頭の中で生まれてしまうため、メンバーの説明に納得できなかったのです。そういう経験を積んだことで、理解できる説明の仕方と納得できる説明の仕方が違うということと何が違うのかを言語化することができました。)
辞書的な違い
「理解」の辞書的な意味を確認すると、以下のように記載されています。
1. 物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。「—が早い」
2. 他人の気持ちや立場を察すること。「彼の苦境を—する」
3. 「了解」に同じ。
一方で、「納得」の辞書的な意味は以下のように書かれています。
[名](スル)他人の考えや行動などを十分に理解して得心すること。「—のいかない話」「説明を聞いて—する」
「納得する」は、理解することが前提にあるようですね。違いとしては、「十分に理解して」というところがポイントだと思います。ただ理解するだけでは不十分で、理解した上で得心することができることが大事なわけです。
では、"十分に理解し"、その上で"得心する"ためには何が必要なのでしょうか?これの答えが前述したように、『他の選択肢を提示しているか?』なのだと筆者は考えています。
理解は「縦方向の説明」 ⇦⇨ 納得は「縦と横の説明」
理解できる説明と納得できる説明の違いの例
- 左:理解できる説明(縦方向)
- 主張するとき:主張と書かれているボックスに対して、根拠①のみ強く紐づいています
- 手段を選ぶとき:目的と書かれているボックスに対して、手段①のみ強く紐づいています
- 右:納得できる説明(縦方向)
- 主張するとき:主張と書かれているボックスに対して、根拠①②③全て強く紐づいています
- 手段を選ぶとき:目的と書かれているボックスに対して、手段①②③全て強く紐づいています
図だけではわからないので、具体例を使って違いを見てみます。
- 理解できる説明の仕方の場合。
- 主張したいとき:「いまやっている仕事を完遂するには、スケジュールを後倒すべきです。」
- 手段を選ぶとき:「疲れを癒すために旅行する。」
- 納得できる説明の仕方の場合。
- 主張したいとき:「いまやっている仕事を完遂するには、①スケジュールの後倒し、②人員の投下、③作業範囲の縮小の3択があります。その中で今回は①のスケジュールの後ろ倒しが最適です。」
- 手段を選ぶとき:「疲れを癒すために、旅行するか家でゴロゴロするか、マッサージ屋に行くか考えて、結局旅行することにした。」
理解できる説明は、〇〇をやるには□□をするしかない、という説明の仕方になっており、「そうかな..。まあそうかもね」という印象を受けます。一方で納得できる説明は、〇〇をやるには□□と△△と××がありえて、その中で□□が良い、という説明の仕方です。この場合は、(□□が本当に最適かどうかはさておき)「□□がよさそうだ」と思えます。
『□□と△△と××』を提示するかどうかが違いを分けているわけですが、これは言い換えると選択肢を提示していると言えます。
選択肢を提示することで、納得度が高まる理由
理解できる説明は確かに理解できるが、「まぁそうですね」で終わってしまう感覚がある一方で、納得できる説明は「確かにそうだね」という感想をもてます。感覚の違いを生んでいるのは、他の選択肢を提示しているからだと考えます。
何か営業を受けていると仮定しましょう。
"理解"の説明では、「あなたにぴったりなものはコレです!」という説明になります。これだけ言われると「騙されているのではないか?」となんだか疑ってしまいますよね。
一方で、"納得"の説明では、「あなたにはこれとこれとこれが良いと思いますが、(〇〇であることを考えると、)特にこれがおすすめです」という説明になります。この場合は選択肢を提示された上で、(かつ理由づけもされた上で)自分に適切なものを提示してもらえるので、騙されているのではないか、という疑いは薄れます。
さらに別の観点では、納得できる説明は、**擬似的に一緒に考えている感覚を持てる(持ちやすい)**のだと思います。
先ほどの営業の例で言えば、理解の説明を受けるとき、気持ちとしては「(よくわからないけど)この人はそれを自分にお薦めしているんだな。」と他人事になります。やや距離のある説明の受け方となります。
しかし、納得の説明では、「なるほど。3つの選択肢があるのか。自分だったらどれを選ぼうかな。(理由づけやどれがおすすめかを提示された後に)その考え方や比較の仕方なら確かにそれが一番良さそうだな」という動き方になると思います。選択肢が提示されることで、頭の中で自分だったらどれを最適と思うかを考えるようになるため、理解の説明よりも能動的に説明を受けることになります。言い換えると、擬似的に一緒に考えるとも言えます。
騙されているのではないかという感覚の低減、擬似的に一緒に考えている感覚を持たせることができる、という2つの効果があるので、選択肢を提示することで単に説明するよりも深い理解を得られ、納得してもらえる説明が可能となるのだと思います。
そしてこれを抽象化すると、最初に示した絵のように、理解の説明は縦方向のみの説明で完結しますが、納得できる説明の場合は縦も横も説明する形になります。
納得してもらうための説明の仕方のテンプレ
納得してもらうための説明をするためには、言葉としては以下のような言い方が良いと思います。
「Aをするためには、Bをすることが最適である。そもそもAを達成するには、BとCとDという選択肢があり得るが、〇〇という判断軸で最適なものを選択するとBになる。」
プレゼンテーションの場面では、これを図にするのもありだと思います。例えば最初に画像で出したように、ボックスを使って選択肢を提示する、という方法です。
まとめ
- 理解と納得という似たような意味だけれども何かが違う、というものについて言語化と図を使っての説明にトライしてみました。
- 理解できる説明は縦方向のみ(別の選択肢を提示しない)の説明であり、納得できる説明は縦と横の(別の選択肢を提示する)説明でした。
- コンサルタント向けの本では、主張をロジックツリーにまとめなさい、ということが言われていますが、理解できると納得できるの違いを考えると、納得度を高めるためにそれが必要なのだということがはっきりわかります。