📖 はじめに
UiPath の RPA テスト機能について、「どの製品を活用すると、どんなテストができるようになるのか」「それによって現場で何が楽になるのか」にフォーカスし、サッと全体像を掴めることを意識して解説します。
RPA開発者・保守担当者に関わる方の参考になれば幸いです。
🗺 全体像:UiPath RPAテストの構成と役割
UiPath の RPA テストは、Studio(テスト作成や開発者テスト)・Test Robot(無人実行)・Test Manager(管理)という役割分担で構成されている
本記事では理解しやすさを優先し、役割ごとに分けて説明していきます。
🔁 UiPath Studio を使う(最小構成)
まずは UiPath Studio 単体で実現できるテストから。
「まずはここから始める」という意味で、最も導入ハードルが低く、効果を実感しやすい領域です。
どんなテストができる?
UiPath Studio だけでも、テストケースをワークフローとして作成し、業務 RPA を自動テストできる。そしてテスト実行時に、どのワークフロー/アクティビティが実行されたかをカバレッジとして確認できる。
- 複数のテストケースワークフローが、状態を変えながら RPA ワークフローを自動テスト
- データを切り替えながらの繰り返しテスト(Data Driven Test)
- テスト実行時に通過した 全ワークフロー/全アクティビティ/全セレクター記述子をカバレッジとして可視化
【図:Studio 単体でのテスト構成】
もう少し具体的に言うと
-
正常系・異常系を分けたテストケースを ワークフローとして管理できる
-
引数やテストデータを変えることで、
- 金額違い
- 入力項目の有無
- 分岐条件
などを一括で検証できる
-
「この修正で、どこが実行されたか/されていないか」が目に見える
活用のポイント
-
変更・拡張時の再テストを高速化
- 手動確認を最小限に抑えられる
-
実行カバレッジの保証
- 未実行ロジックを把握しやすい
- ※Studio 再起動でカバレッジ表示が消える点には注意
-
リファクタリングや仕様変更時の心理的安全性
- 「壊していない」という根拠を持てる
👉 開発者自身のためのテストとして非常に相性が良い
🔁 Test Robot を使う(実行環境の拡張)
※ 補足(重要):現在、Test Robot を利用したテスト実行には Test Manager の利用が前提となります。
本章では理解しやすさのために活用観点で役割を分けて説明していますが、
製品構成としては「Test Manager + Test Robot」がセットになる点にご注意ください。
次のステップは Test Robot。
Studio で作ったテストを、実際の無人実行環境(UR)で回すための構成です。
【図:Studio 実行と Test Robot 実行の違い】
Studio 実行は開発者 PC 前提、Test Robot 実行は無人環境での回帰テストに向いている
どんなテストができる?
- Studio で作成したテストケースを 無人ロボット(UR)で実行
- 変更影響を確認するために、いつでも・何度でも自動回帰テスト
活用のポイント
- ワークフロー修正・バグ対応後の影響確認
- UiPath バージョンアップ時の事前検証
- 業務アプリ側のバージョンアップ影響確認
- ロボット端末変更時の差分検証
👉 「環境が変わっても動くか?」を確認するためのテスト
🔍 Test Manager を使う(テストの可視化・統合)
最後は Test Manager。
テストを「作る・実行する」だけでなく、管理・分析するフェーズに入ります。
どんな管理ができる?
- 自動化した テストケースの一元管理
- テスト実行端末(Robot)への 実行指示
- 無人テストのスケジュール実行
-
テスト結果・エビデンスの蓄積
- 無人実行でもアクティビティカバレッジ可視化
- Studio 実行の結果も格納可能
- AI による検索・テスト分析
- 要件管理・バグ管理ツール(Jira 等)との連携
活用のポイント
-
テストケースの見える化
- 何を、どこまで、誰がテストしているか
-
テスト計画と実行の分離
- 実行は自動、管理は集中
- 過去結果のトレーサビリティ確保
- テスト管理・分析コストの削減
👉 個人のテストから、チーム・組織のテストへ
🧠 実体験から:RPAテストが真価を発揮したケース
ここからは、私自身の体験談を少し共有します。
扱っていたのは、
- 読み込む 入力データの種類が多く
- 業務システム側の 値や状態によって分岐が多発
- 正常系だけでなく、エラーハンドリング/リカバリー処理も多岐にわたる
- 業務拡張に合わせて 段階的に機能追加
- 場合によっては 最適化・リファクタリングが必要
という、いわゆる大規模・複雑な RPA プロセスでした。
何が一番大変だったか
正直に言うと、
- どこまでテストできているのか分かりにくい
- 1か所直すと、どこに影響が出るか読みにくい
- 手動ではとても 全パターンを確認しきれない
という状態で、再テストが最大のボトルネックでした。
RPAテストを入れて何が変わったか
このような状況で、UiPath の RPA テスト(Studio + Test Robot)を本格的に使い始めました。
特に効果を感じたのは以下です。
-
分岐・例外パターンを含めたテストケースをワークフローとして資産化できた
-
カバレッジを見ながら、
- どのロジックが実行され
- どこが未検証なのか
を客観的に把握できた
-
修正やリファクタリング後も、
膨大なテストパターンを自動で再実行できた
結果として、
「変更しても大丈夫か?」
という不安が、
「テストがあるから、まず直してみよう」
に変わりました。
【図:RPAテスト導入前後の変化】
手動中心の再テストから、自動回帰テストとカバレッジ可視化による安心な変更へ
テスト自動化は“守り”ではなく“攻め”の資産
このテスト自動化の仕組みは、
- 単なる品質担保
- 保守のためのコスト
ではなく、
- 安心して手を加えられる
- 継続的に改善できる
という意味で、非常に価値の高い資産になっています。
特に大規模な RPA ほど、
- 分岐が増える
- 例外が増える
- 人の記憶に頼れなくなる
ため、RPA テストの効果は 後半になるほど効いてくると実感しています。
🧩 まとめ:段階的に広がるUiPath テスト
- Studio:開発者向けの自動テスト
- + Test Robot:実行環境を含めた回帰テスト
- + Test Manager:組織的なテスト管理と可視化
Studio → Test Robot → Test Manager と、課題に応じて段階的に活用
UiPath の RPA テストは、
テストを頑張るための機能 ではなく、
変更に強い自動化を続けるための仕組み
だと感じています。
この記事が、次の一歩を考えるヒントになれば嬉しいです。




