概要
仮説検定は、母集団の母数(平均・比率など)に関する仮説をデータから検証する方法です。
- 帰無仮説(H₀: null hypothesis):現在の前提・仮定(例:母平均 μ = μ₀)
- 対立仮説(H₁: alternative hypothesis):帰無仮説と異なる仮定(例:μ ≠ μ₀, μ > μ₀, μ < μ₀)
- 検定量(Z, T)を算出し、分布表(標準正規分布表や t 分布表)の棄却域に入るかで判断する。
仮設検定における各分布の使用判断フロー
数式
仮説の立て方
-
両側検定(母平均がある値と異なるか?)
$$
H_0 : \mu = \mu_0 \quad \text{vs} \quad H_1 : \mu \neq \mu_0
$$ -
片側検定(上側)(母平均が大きいか?)
$$
H_0 : \mu = \mu_0 \quad \text{vs} \quad H_1 : \mu > \mu_0
$$ -
片側検定(下側)(母平均が小さいか?)
$$
H_0 : \mu = \mu_0 \quad \text{vs} \quad H_1 : \mu < \mu_0
$$
検定統計量
-
母分散既知 or 大標本(中心極限定理) → 標準正規分布を使用
$$
Z = \frac{\bar{X} - \mu_0}{\sigma / \sqrt{n}}
$$ -
母分散未知・小標本 → t分布を使用
$$
T = \frac{\bar{X} - \mu_0}{S / \sqrt{n}} \quad \sim t_{n-1}
$$
数式の説明
-
帰無仮説と対立仮説
- 帰無仮説は「差がない」ことを表す基準。
- 対立仮説は「差がある/大きい/小さい」を表す主張。
-
検定量(Z, T)
- 標本平均 $\bar{X}$ と仮定値 $\mu_0$ の差を、標準誤差で割った値。
- この値を標準正規分布表や t 分布表と比較する。
-
棄却域の考え方
- 両側検定:$\lvert Z \rvert > z_{\alpha/2}$ のとき H₀ を棄却。
- 片側検定(上側):$Z > z_\alpha$ のとき H₀ を棄却。
- 片側検定(下側):$Z < -z_\alpha$ のとき H₀ を棄却。
問題例
問題1(両側検定・標準正規分布)
ある製品の重さの母平均が $\mu_0 = 50$ g であるとされている。
標本サイズ $n=100$、母分散 $\sigma^2 = 25$ が既知で、標本平均 $\bar{X} = 51$ g だった。
有意水準 5% で、母平均が 50 g と異なるといえるか?
解き方
-
仮説の設定:
$H_0 : \mu = 50$, $H_1 : \mu \neq 50$ -
検定量:
$$
Z = \frac{51 - 50}{5 / \sqrt{100}} = \frac{1}{0.5} = 2.0
$$ -
棄却域:
両側検定、5% → $z_{0.025} = 1.96$ -
判定:
$Z = 2.0 > 1.96$ → H₀を棄却。
母平均は 50 g と異なる。
問題2(片側検定・t分布)
あるクラスの数学の平均点が $\mu_0 = 70$ 点とされている。
10 人の標本調査で、平均 $\bar{X} = 74$、標本標準偏差 $S = 6$ が得られた。
有意水準 5% で「平均点は 70 より大きい」といえるか?
解き方
-
仮説の設定:
$H_0 : \mu = 70$, $H_1 : \mu > 70$ -
検定量:
$$
T = \frac{74 - 70}{6 / \sqrt{10}} \approx 2.11
$$ -
棄却域:
自由度 9 の t 分布。5% 片側 → $t_{9, 0.05} \approx 1.83$ -
判定:
$T = 2.11 > 1.83$ → H₀を棄却。
平均点は 70 より大きいといえる。