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宇宙×クラウド: Amazon Leo に出会った re:Invent2025 体験記

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はじめに

2025年12月1日から5日にかけて、ラスベガスで開催されたAWS re:Invent2025に参加してきました。

前日にメイン会場のベネチアンへ到着し、会場登録を済ませた際、1階のホールでまず目に入ってきたのは、巨大な惑星を模したオブジェでした。広々とした空間の中で暗い青色の球体が静かに浮かび上がるように設置されており、その印象はその場を離れたあとも頭の中に残っていました。

特に惹かれたのは、このオブジェが“Amazon Leo”と呼ばれているという点です。会場の象徴としての存在感を感じており、「この新サービスやコンセプトが、今回のre:Invent全体のテーマにどのように関係しているのか知りたい」という気持ちが自然と湧いてきました。

IMG_2246.jpeg

Amazon Leoとは何か

Amazon Leoという名前には詳しくありませんでしたが、実はかつて「Project Kuiper」と呼ばれていたそうです。Amazonによる低軌道衛星インターネットネットワークでLeoは今のブランド名です。なぜLeoなのかでいうと、Low Earth Orbit(低地球軌道)の頭文字に由来しており、低軌道を周回する衛星コンステレーションを表現しているそうです。

2025年11月に正式に名称が「Amazon Leo」にリネームされたばかりなので、今回のre:Inventで十分な存在感を放ちました。

スクリーンショット 2025-12-07 22.20.30.png

なぜAmazonが衛星インターネットに

そもそも、なぜAmazonが衛星インターネットに手を出したでしょうか?実は世界には固定通信のインフラが十分に整っておらず、地理的条件や経済的理由から高速インターネットにアクセスできない地域がまだ多く存在します。こうした“デジタルデバイド”を埋める手段として、低軌道(LEO)衛星によるインターネットにアマゾンが目を付けたようです。

さらに衛星インターネットは地上回線に依存しないため、

.自然災害によって地上インフラが損傷した地域
.船舶・航空機などの移動体通信
.山岳地帯や海上など遠隔地

といった、地上ネットワークが整備しづらい場面でも利用できるという強みがあります。

AWSとAmazon Leoの関係性

人工衛星は、打ち上げ後に宇宙空間で遭遇し得るさまざまな状況に対して設計・検証を行う必要があります。例えば、

.低軌道での軌道計算
.衛星間通信のレイテンシー
.地上局への接続負荷
.極端な気象条件

などを、事前にシミュレーションしておく必要があります。

こうした複雑なシミュレーション環境を構築する際に、AWSの大規模な計算資源が活用されているそうです。実際、re:Inventでも「AWSを使って宇宙をシミュレーションする」というテーマは複数のセッションで言及されていました。

スクリーンショット 2025-12-07 22.22.56.png

以下のアーキテクチャ図は、サーバーレスを中心とした構成になっています。

まずAPI Gatewayを使用してシミュレーションを実行するエントリーポイントを作成します。
それに、EC2 を利用してシミュレーションコードを読み込み、環境を起動することもできます。
さらに、Step Functionsによって各コンポーネントをワークフローとして連携することが可能です。
加えて、コードをAWS Graviton上で実行できる点も重要なポイントです。

スクリーンショット 2025-12-07 22.33.57.png

ユースケース

海上風力発電所の遠隔監視というユースケースがre:Inventで紹介されました。海洋の中央に設置された風力発電所を考えてみます。海上は通信インフラが十分に整っていないため、一般的なネットワーク手段だけでは設備の監視が困難です。しかし、AWSとAmazon Leoを組み合わせることで、遠隔からの監視と運用が可能になります。

まず、発電所のセンサー情報をAWS IoT Coreに送信し、そのデータをAmazon Timestreamに蓄積することで、時系列データとして分析・可視化できるようになります。

さらに、設備で事故や異常が検知された場合は、そのイベントをトリガーとして、たとえば Amazon EKS上で異常処理のワークフローを自動実行するといった連携も実現できます。

次に重要になるのが、「それが本当に現地で発生している事象なのか?」を確認する点です。しかし、海上の風力発電所は物理的にアクセスしづらく、人的確認にはコストと時間がかかります。

ここでAmazon Leoが本領を発揮します。遠隔風力発電所にアンテナを設置し、Amazon Leo経由で AWSに直接接続することで、海上にある発電設備をリアルタイムに、安全かつ確実に遠隔監視できるようになるというわけです。

結果として、海上風力発電所がAWSに常時接続され、状況把握、監視、制御、異常対応まで、一連のオペレーションをクラウド上で完結できるようになります。

スクリーンショット 2025-12-07 23.01.52.png

感想

今回のre:Inventを通じて、AWSが単なるクラウドサービスを提供する企業にとどまらず、宇宙・通信・インフラといった領域へ本格的に踏み込んでいることを強く実感しました。特に Amazon Leoのような低軌道衛星ネットワークは、既存のインターネットの常識を大きく変え得るポテンシャルを感じさせました。

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