はじめに
データ分析を進める際、データの分布や変数同士の関係をまず確認するために、「散布図」を作成することも少なくないです。
二つの変数(例えば「身長」と「体重」など)の関係を見る際には、基本的には二次元の散布図を作成します。しかし、実際の業務や研究で扱うデータは、三つ以上の変数が複雑に絡み合っていることが多くあります。
「二次元の散布図を何枚も並べたり、散布図行列を作成するのもいいけれど、三つの変数の関係を立体的にひと目で確認したい…」
そんな時に頼りになるのが、今回ご紹介する「三次元散布図」です。
本記事では、三次元散布図の基本的な考え方から、JMPでの具体的な操作手順、そしてデータの広がりを視覚的に捉える「確率楕円体」の見かたまで、分かりやすく解説していきます。
※今回の内容はYouTube動画でもご紹介しています。
三次元散布図とは?
三次元散布図は、三つの変数の関係を一度に可視化できるグラフです。二次元散布図では確認しづらいデータの構造や傾向を把握しやすく、三次元空間でのクラスター(互いに近い位置に集積しているデータの集合)や外れ値の発見にも役立ちます。
また、グラフを回転しながら観察することで、三つの変数同士の関係を直感的に理解できます。そのため、探索的データ解析や多変量解析の前段階として利用するメリットがあります。
この便利な三次元散布図ですが、Microsoft Excel(以下、Excel)などのツールでは作成に手間がかかったり、標準機能では作成しづらかったりという不便があります。
この点、統計ソフト「JMP(ジャンプ)」を使えば、簡単に時間をかけず三次元散布図を作成できるので、以下にご紹介します。
JMPで三次元散布図を作成する手順
それでは、実際にJMPを動かしながら三次元散布図を作ってみましょう。今回はJMPに最初から用意されているサンプルデータ「Iris.jmp(アヤメの測定データ)」を使用します。
手順1:サンプルデータを開く
- JMPを起動し、上部メニューから[ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択します
- サンプルデータの一覧から「Iris.jmp」を探して開きます
※ このデータには、三種類のアヤメ(setosa, versicolor, virginica)について、「がくの長さ」「がくの幅」「花弁の長さ」「花弁の幅」という四つの測定値が記録されています。
手順2:「三次元散布図」プラットフォームを起動する
- JMPの上部メニューから [グラフ]>[三次元散布図] を選択します。
- 起動ウィンドウが開いたら、左側の列一覧から「がくの長さ」「がくの幅」「花弁の長さ」の三つを選択し、中央の [Y, 列] ボタンをクリックします。続けて、「花弁の幅」を選択し、[重み]をクリックします。
- [OK] ボタンをクリックします。

これだけの簡単な操作で、立体的な三次元散布図が画面に描画されます。
※今回は[重み]に「花弁の幅」を入れることで、データ点のサイズ(大きさ)で第4の変数である「花弁の幅」を表現しています。
JMPの三次元散布図には、次の特徴があります。
・軸への自動割り当てのルール
起動ウィンドウの[Y, 列]で指定した順序によって、各軸に自動的に割り当てられます。
・第1変数(最初に選んだ列) → X軸
・第2変数(2番目に選んだ列) → Y軸
・第3変数(3番目に選んだ列) → Z軸
・四つ以上の変数を選んだ場合
起動ウィンドウで四つ以上の変数を[Y, 列]に入れて[OK]を押すことも可能です。その場合、最初は上位三つが表示されますが、グラフ下部の軸のドロップダウンリストをクリックすることで瞬時に表示する変数の組み合わせを次々と切り替えることができます。
分析結果の観察と便利なインタラクティブ操作
グラフが作成されたら、さっそくマウスを使ってグラフを動かしてみましょう。JMPの三次元散布図は、直感的に操作できる工夫がたくさん盛り込まれています。
1.グラフを回転させてみよう
先ほどお伝えした通り、三次元散布図は回転させてこそ真価を発揮します。
1)マウスで手動回転する
散布図の空白の部分(データ点や軸がない場所)をクリックしながらドラッグします。ドラッグした方向にグラフがクルクルと回転します。
※注意:データ点や軸の上でドラッグすると、データ点だけが選択されたり軸のスケールが変更されたりするため、必ず何もない空白領域をクリックしてください。
2)自動で回転させ続ける
キーボードの Shift キーを押しながら空白部分をサッとドラッグしてマウスボタンを放してみてください。すると、ドラッグしたスピードに合わせて、グラフが自動で回転し続けます。
2.軸やスケールを微調整する
「もう少し特定の場所を拡大して見たい」「軸の範囲を区切りの良い数値にしたい」という場合は、軸を直接操作できます。
• 軸の平行移動: 軸の中央付近にカーソルを合わせ、ドラッグすると軸の位置をスライドできます。
• スケールの拡大・縮小: 軸の端にカーソルを合わせ、ドラッグすると表示範囲を伸び縮みさせることができます。
• 数値での詳細設定: 軸線上の真ん中あたりをダブルクリックして開いたウィンドウで最小値・最大値を数値で直接入力したり、目盛りラベルの表示/非表示を設定できます。
確率楕円体の表示と見かた
三次元散布図に慣れてきたら、ぜひ使っていただきたいのが「確率楕円体」の表示機能です。
確率楕円体とは?
データ点が多変量正規分布に従っていると仮定したとき、その分布の○%(例えば75%や95%)が含まれる範囲を、三次元の楕円体として視覚化したものです。
JMPでの表示手順(グループ別に描く方法)
今回は、アヤメの種類(setosa, versicolor, virginica)ごとに色分けした確率楕円体を描いてみましょう。
- 三次元散布図レポートの左上にある赤い三角ボタンをクリックします。
- メニューから[確率楕円体]を選択します。
- 別のウィンドウが開くので、[次の列の値ごとに行う]を選択します。
- グループ分けの変数として「種類」を選択します。
- パラメータを設定します。
o 「累積確率」: 楕円の中に含めたいデータの割合を設定します。(例:0.75 と入力すると、仮定した分布の75%が入る大きさになります)
o 「透明度」: 楕円の表面の透け具合を設定します。(大きい値を指定すると、楕円体が不透明になり、小さい値を指定すると透明度が増します。) - [OK]をクリックします。
すると、画面上に、アヤメの種類ごとの色で分けられた、三つの立体的な楕円体が表示されます。
グループごとの楕円体が空間の中でどのような位置関係になっているかを見て、データの分布状況を直感的に読み取ったり、楕円体の外側に存在する外れ値を確認したりすることで、本格的な分析前にデータそのものを深く理解するのに役立ちます。
まとめ
JMPの「三次元散布図」を使えば、三つの変数の関係をマウス操作だけで立体的に可視化できます。
Excelなどのツールでは手間がかかる、あるいは標準機能では作成しづらい三次元散布図ですが、JMPなら数クリックで作成でき、グラフを回転させながらデータの分布や外れ値を直感的に確認できます。
さらに「確率楕円体」機能を使うと、グループごとのデータの散らばりを視覚的に比較でき、外れ値の発見が容易です。
三次元散布図は、多変量解析や探索的データ分析の前段階で、変数間の関係性やクラスター構造を把握するために有効なグラフであり、統計ソフトJMPならコードを書かずにこの分析を実現できます。
JMPを試したことのない方には、30日間全機能を無料で使えるトライアル版をご用意しているので、ぜひこの機会に試してみてください!