※今回の内容はYouTube動画でもご紹介しています。
はじめに
データ分析の現場で、売上や成長率といった時系列データを扱う際、私たちはまずどのようなグラフを描くでしょうか。
おそらく、最も多く選ばれるのは「棒グラフ」や「折れ線グラフ」でしょう。これらは特定の時点における規模の比較や、期間ごとの推移を把握する上で非常に優れた視覚化手法です。
しかし、複数の変数が複雑に絡み合うビジネスの動態を正確に評価しようとしたとき、静的なグラフだけでは、データの背後にある構造的な変化を見落としてしまう可能性があります。
本記事では、一般的な集計用グラフによる可視化では見えてこない、データの中に潜む変化の兆しを、バブルプロットを用いて浮き彫りにする方法を解説します。
棒グラフが映し出す「エース製品」の姿
まず、以下のシナリオを考えてみましょう。あなたは17製品(製品A〜製品Q)を抱える事業部門の分析者です。過去6年間の売上データを集計し、製品ごとの推移を棒グラフで並列表示しました。

[JMPの棒グラフでは、このように多数の変数を同一画面内に配置し、全体像を横断的に俯瞰できる点が大きな特徴です]
ここで、「売上高」の推移に絞って注目すると、以下の理由から、製品Aを最も注力すべきエース製品であると考える方が多いのではないでしょうか。
- 全製品の中で売上規模が突出してトップである。
- 2020年から2025年にかけて、右肩上がりで成長を続けている。
もっとも、現実のビジネスシーンでは、「売上高」だけでなく、投資判断の指標として「前年比成長率(%)」なども併せて多角的に検討するのが一般的でしょう。そして、多くの場合、指標ごとに棒グラフや折れ線グラフを作成し、それらを照らし合わせながら分析を進めるはずです。
しかし、このように指標ごとのグラフを毎回作成して比較する方法には限界があります。扱う指標が増えるほど、情報の「照らし合わせ」に脳のリソースを奪われ、複数の指標が複雑に絡み合う「製品のライフサイクル」の構造な変化を見落としてしまうリスクが高まるからです。
複数の変数の推移をアニメーションで把握できるバブルプロット
もちろん売上高は重要な指標の1つですが、ビジネスの健全性をより深く評価するためには、売上規模だけでなく、収益性(利益率)や市場での存在感(シェア)といった複数の指標を、同時に、かつ連続的に観察する必要があります。
ここで活用できるのが、複数の指標がある時系列データを可視化できる手法の1つである「バブルプロット」です。
JMPの「バブルプロット」を用いることで、売上高、利益率、市場シェアといった複数の要素を、時間軸に沿って「動的」に表現することが可能になります 。これは、一般的なスプレッドシートで作成する静的なバブルチャートにはない大きな特徴です。
データの変化をアニメーションのように可視化することで、市場の推移や各要素の相関関係の移り変わりを直感的に把握できるようになります。
そのため、「静的」な棒グラフだけでは把握しにくかったインサイトが、「動的」なバブルプロットによって初めて発見されることも少なくありません。
バブルプロットによる分析の実行
それでは、JMPを用いてバブルプロットを作成してみましょう。JMPの「バブルプロット」では、時間変数を使ってアニメーションを作成し、時間の経過に伴うパターンや推移を直感的に調べることができます。
JMPユーザーではない方も、ぜひ下記トライアル版で実際に試してみてください。
JMPによるデモ
1. データの準備
今回は、以下の構成のデータをMicrosoft Excelファイルで用意し、JMPで読み込みました。
- 期間: 2020年〜2025年(6年分)
- 項目: 製品名(製品A-Q)、製品カテゴリー、売上高(百万円)、利益率(%)、市場シェア(%)
- レコード数: 102行(17製品 × 6年分)
2.バブルプロットの起動
画面上の「グラフ」から「バブルプロット」を起動し、各列を以下のように割り当てます。
そして、「OK」を押すと、バブルプロットが表示されます。
画面左下の再生ボタン(▶)をクリックすると、2020年からの5年間における各製品(A〜Q)の推移がアニメーションとして展開されます。
バブルのサイズは市場シェアを、座標軸は売上高と利益率を反映しており、各製品が市場で描いた「軌跡」をダイレクトに追跡することが可能です(JMPの「バブルプロット」では、選択したバブルの軌跡を表示することも可能です)。
3.バブルプロットで明らかになった3つの事実
再生ボタンをクリックすると、各製品が市場で描いた「軌跡」が動き出します。ここから、棒グラフでは見えなかった事実が浮かび上がります。
① 主力製品「製品A」:安定した収益源だが、注意が必要
売上規模でトップを走る製品Aは、右側(高売上エリア)を維持していますが、軌跡は徐々に下方(利益率の低下)へとシフトしています。
成熟した製品について、シェアを維持するために利益率が落ち着いてくるのは自然な流れであり、即座に「投資中止」を意味するものではありません。しかし、利益率の低下が著しい場合、それは単なる成熟の結果ではなく、収益構造そのものが悪化しているサインかもしれません。
② 成長株「製品B」:見落としがちな将来のホープ
製品Bは、売上規模こそまだ小さいものの、利益率を高めながら右上方向へ駆け上がっています。特筆すべきは、「バブルのサイズ(シェア)」が年々拡大している点です。
これは、効率的な収益モデルを確立しながら着実に市場への浸透が進んでいることを示しており、将来の柱となる可能性を強く示唆しています。
③ 隠れた危機「製品C」:着実な売上増の裏で市場シェアが急落
棒グラフでは、少しずつ着実に成長しているように見えた製品Cですが、バブルプロットで見ると、売上(X軸)は微増しているものの、バブルのサイズ(シェア)が急速にしぼんでいることが判明しました。
これは「一見すると売上が安定しているようでも、実は市場全体の成長スピードに置いていかれている」状態を示唆しています。このように、サイズの変化を追うことで、単一指標では気づけない競合環境の激化を察知できるのです。
まとめ
データ分析における可視化の役割は、単に数字をグラフという「形」にすることではなく、意思決定を阻害するバイアスを取り除き、重要なインサイトや構造的な変化を浮き彫りにすることにあります。
複数の変数を時間軸に沿って動かせるバブルプロットを活用すれば、棒グラフや折れ線グラフだけでは気づきにくい発見が得られるはずです。
見逃されていた重要なファクトへの到達を可能にするのが、統計ソフトを活用する大きなメリットです。
ぜひ今回の内容を参考に、バブルプロットを日々の業務に取り入れてみてください。



