製造業の現場において、「なぜか今月は歩留まりが悪い」「特定のロットで不良が多発している気がする」といった違和感に直面することは少なくありません。
しかし、その違和感を「誰もが納得するエビデンス」に変えるためには、製造過程で得られたデータを整理し、適切な統計手法で可視化する必要があります。
この可視化に役立つグラフの1つに「モザイク図(モザイクプロット)」があります。
これはカテゴリカルデータ(名義尺度)の関係性を視覚的に把握するのに最も適した手法の1つですが、一般的なスプレッドシートでこれを描こうとすると、データの再構成や特殊なグラフ設定にかなりの時間を費やすことになります。
本来、エンジニアの仕事は「グラフを描くこと」ではなく、「データを分析し、考察すること」のはずです。準備にばかり時間を取られ、肝心の考察が疎かになっては本末転倒と言わざるを得ません。
そこで本記事では、JMPを使って複雑な下準備なしに素早くモザイク図を作成し、分析により多くの時間を作る方法をご紹介します。
※JMPユーザーではない方も、ぜひ下記トライアル版で実際に試してみてください。
モザイク図による可視化の醍醐味:面積で伝えるインパクトの大きさ
製造現場を例に挙げましょう。歩留まり改善という課題について、私たちが知りたいのは単なる不良率という「比率」だけではありません。その不良が全体に対してどれほどの重みを持っているのかという「損失の規模」です。
例として、以下の2つのロットを比較してみましょう。
- ロットA:10個中1個不良(10%)
- ロットB:1,000個中50個不良(5%)
不良率という「率」だけを見れば前者の方が高いですが、実際に失われた製品数を見れば、50個の不良を出している後者の方が、工場の収益に与えるマイナスのインパクトは大きくなります。
このような場合、モザイク図(モザイクプロット)の特長である「グラフの四角形の大きさが、そのまま実際の数を表している」という点が活きてきます。
- 横幅: そのカテゴリ(例えば原材料ロット)のサンプルサイズを表す
- 縦幅: そのカテゴリ内での各水準(合格・不合格)の割合を表す
つまり、大きく広がった四角形(上の例では、Lot Cの不合格)を見つけるだけで、「改善した際のメリットや影響度が大きく、かつ問題がある箇所」を一目で特定できるのです。
スプレッドシートではこの便利なモザイク図が標準搭載されていないことが多いのですが、JMPならば簡単に作成できます。
JMPによるモザイク図(モザイクプロット)のデモ
実際にJMPでどのような分析が行われるのか、原材料ロットと歩留まりの関係について、仮想データを使用してシミュレーションしてみましょう。
分析の手順
「二変量の関係」プラットフォームを起動し、以下の変数を割り当てます。
- Y, 目的変数: 最終判定(合格 / 不合格)
- X, 説明変数: 原材料ロット(Lot A, B, C, D)
今回、YとXはどちらも列をカテゴリとして扱う名義尺度ですが、JMPではこのような場合、モザイク図などの分割表分析のレポートが表示されます。
モザイクプロットから読み取れる「異変」
実行すると、即座にモザイク図が表示されます。特筆すべきは、視覚的な「グラフ」、数値による「表」、そして判断の裏付けとなる「検定」が1つのレポートとして統合されている点です。
グラフを見て違和感を覚え、すぐに表で実数を確認し、検定結果で確信を得る―この一連の思考プロセスをウィンドウの切り替えなしに完結できるのが、JMPの実務における大きな強みです。
① 視覚(モザイク図)で「気づき」を得る
まずはモザイク図を眺め、不合格品で面積のバランスが崩れている箇所を探します。視覚情報は、数値の羅列よりも早く、印象深く、脳に「異常」を伝えることができます。
Lot Cは、四角形の「横幅(生産数)」が他のロットよりも明らかに広く、不合格品の縦幅も大きく下に伸びて不合格の領域を広げています。
パッと見ただけでも、Lot Cの不合格品の数が非常に多く、生産ライン改善のポイントになりそうなことが分かります。
② 数値(分割表)で「裏付け」を取る
モザイク図のすぐ下には「分割表」が表示されています。ここで具体的な数値をチェックしてみましょう。
Lot Cの4行目のセル(「行%」)を見ると、「不合格」が「30.00」と表示されています。これはLot Cの合計60個のうち、不合格品が占める割合(18/60)をパーセンテージで示しています。
「Lot Cの不合格率は30%か。他が10%以下なのに比べて明らかに高いな」といった、図で感じた違和感を具体的なパーセンテージと度数で確認することで、実感を持ってグラフで得た感覚の裏付けを取ります。
③ 統計的判断(検定結果)で「確信」を得る
さらに視線を下に動かすと、そこには「検定」レポートが表示されています。ここで注目すべきは、「p値」です。
統計学では、まず「全てのロットの歩留まりは、本当は同じはずだ(差があるように見えるのは、たまたまだ)」という仮説(帰無仮説)を立てます。p値はこの仮説が正しいと仮定したとき、今回のような差が偶然に生じる確率を計算したものです。
もしp値が有意水準 0.05(5%)を下回っていれば、それは「各ロットの歩留まりに差があるように見えるのは、単なる偶然のばらつきである」という理屈が通らなくなったことを意味するとされています。
モザイク図を見て「Lot Cの不良が多いな」と感じたとしても、それが誤差の範囲内であれば、対策を打つべきではありません。
しかし検定結果が有意であれば(p値が0.05未満)、「全体として、ロットによって良否の出方に明確な差がある」と統計的に裏付けられたことになります。
レポートに戻ってみましょう。分割表の下の「検定」を見るとp値は0.05より小さい「0.0047」と表示されており、有意差があることが確認できました。
これにより、モザイク図で視覚的に捉えたロットによる歩留まりのバラツキが、単なる偶然の範囲内(誤差)ではないことが統計的に裏付けられます。
この検定結果を起点に詳しく精査することで、現場の主観的な気づきを、客観的な根拠に基づく検討すべき改善事項へと引き上げることができるのです。
まとめ:ツールを動かす時間を、現場を変える時間へ
モザイク図による可視化は強力ですが、グラフを描くこと自体に時間を費やし、肝心の分析や対策がおろそかになっては本末転倒です。
JMPを活用すれば、作図の手間は最小限で済みます。浮いた時間は、データの本質を深掘りし、より多くのインサイトを得るために使えるようになるはずです。
慣れない計算やグラフの加工に時間を割くのはもうやめて、現場の歩留まりを劇的に改善する一歩を踏み出してください!


