■JMPでは誤差バーの位置をずらすことができる
JMPの「グラフビルダー」では、折れ線グラフに誤差バーを追加した際に、複数の系列の誤差バーが重ならないようにずらして表示できます。
以下は、3つの系列(青、赤、緑)に対して平均の時間的推移を示す折れ線グラフですが、それぞれの平均値に対する標準誤差を誤差バーとして表示しています。
このとき、複数の誤差バーが重なるので、これらを視覚的に分けるために位置を調整する必要があります。例えばMicrosoft Excelでは、異なる系列のデータ点を元の値から少し変更してグラフ上での位置を調整する必要があります。
一方、JMPでは、「誤差バーのオフセット」という機能を使って、これらの誤差バーを簡単に調整できます。
そこで、本ブログでは身近なデータを使って、この機能の効果をアピールしてみます。
■「最近の若い人は背が高いねえ」という見解は本当なのか?
年配の方々の中には、「最近の若者は、私たちの世代と比べて背が高い」と感じる方がいらっしゃいます。これは、テレビで見るスポーツ選手の影響かもしれませんが、一般的に、日本の若者、特に男子学生(小学生、中学生、高校生)の平均身長がそのように推移していっているのかを調べてみます。
ここでは、文部省の学校保健統計調査の結果を利用してみます。
1970年度からおよそ10年おきに、男子学生11歳(小学生)、14歳(中学生)、17歳(高校生)の調査対象者に平均身長、標準偏差データとして取得し、JMPのデータテーブルにまとめてみました。
※2020年度、2021年度のデータも公開されていますが、コロナの影響により調査期間がそれ以前の年度と異なるようなので、ここでは2019年度のデータを最新のデータとして用いています。
データを見るだけでは傾向が読み取りにくいので、年度ごとの身長の推移を折れ線グラフにしてみましょう。
細かい操作方法は省略しますが、JMPの「グラフビルダー」で、標準偏差を誤差バーとした平均値の折れ線グラフを描くと次のようになります。
※11歳、14歳、17歳は、それぞれ小学校、中学校、高等学校の最終学年になるので、グラフ右上の凡例には小学校、中学校、高等学校と記載しています。
小学校のデータは問題ありませんが、中学校と高等学校の誤差バーが重なってしまいます。このため、データのばらつきをより明確にするためには、誤差バーの位置を調整することが望ましいです。
このとき、JMPでは「グラフビルダー」の左上にある赤い三角ボタンから、 [誤差バーのオフセット] を選択することにより、以下のダイアログボックスでオフセットを指定できます。オフセットの値を大きくするほど、ずらす幅が大きくなります。
位置を調整した後のグラフです。誤差バーをずらすことによって、1970年度の中学校のばらつき(標準偏差)は、他の年度と比べ大きいことがわかります。
全体的に、小・中・高校生の身長の平均は同様の傾向を示しており、2000年度以降はほぼ横ばいの状態が続いています。
17歳の男性では、その後身長の伸びが停滞し、現在の日本人男性の平均身長は約170cmで、これは過去数十年間ほぼ変わっていません。したがって、若い世代の身長が伸び続けているわけではないことがわかります。
ある記事によると、出生体重の減少が身長の成長に影響を与えているとされています。確かに、最近は以前に比べて低出生体重の赤ちゃんが増えたと聞きますので、今後もしばらくは同様の傾向が続くのかもしれません。
■17歳男性の平均身長の推移
最後に、17歳男性に対する1年ごと(1960年度~2019年度)の身長の推移を折れ線グラフと平滑線で描いたものを示します。
1995年度あたりから平均身長の伸びは横ばいになり、その後、若干ではありますが減少傾向を示しているのです。男性の身長は高ければ良いとは限りませんが、将来のことを考えるとこの傾向は注目すべきことです。
by 増川 直裕(JMP Japan)
Naohiro Masukawa - JMP User Community
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