はじめに
こんにちは!半年ほど前に自作PCに挑戦し、いくつかのコンペで使用しました。この記事では、Kaggler目線での自作PCの入門方法や体験談について紹介します。クラウドとの比較、パーツ選定のポイント、使用感などを共有できたらと思います。
クラウドサービスについて
最初に結論を言ってしまうと、ほとんどのケースにおいてクラウドの方がお得に計算リソースを用意できます。
(突然の記事コンセプトの崩壊)
クラウドサービスの候補としては、Kaggleとの親和性が良いColabが最もオススメです。KaggleとColabはどちらもGoogle関連のサービスです。
また、Colab Pro(月額1,179円)やColab Pro+(月額5,767円)ユーザーは、Kaggle上でのGPU使用時間をそれぞれ週15h、 30h増やすことができるメリットもあります。Kaggle上のGPUだけでは物足りなくなってきたけど、そこまでお金をかけたくない場合は、Colab Proあたりから手を付けるのが良いと思います。
少し昔のposfie(旧Togetter)になりますが、Kaggle上のリソースとColabだけでKaggle Masterになったという方もそこそこ居るみたいです。私自身、Kaggle Masterになるまでは、Kaggle上のリソースとColabとLLM APIに対する比較的少額の課金(総額でもお年玉くらいのイメージです)のみで全てのメダルを獲得しました。コンペ選択を工夫すれば、計算リソースは節約できると考えています。
また、その他に手軽な価格帯で計算リソースを利用できるクラウドサービスとして、RunpodとVast.aiがあります。
好みで選択するのが良いと思います。参考になりそうな記事を下記に示します。
自作PCについて
前章で、ほとんどのケースにおいてクラウドの方がお得と述べました。それでも、なぜ自作PCに挑戦したかを下記に記します。きっかけとなったのは、Runpodを使って『Santa 2024』に参加していた時の経験です。このコンペは、常にGPUで計算を回し続ける必要があり、クラウド料金がかなり増えてしまいました。これからも多くのコンペに参加し続けるつもりだったので、そろそろ自由に使える自作PCを用意したいと思うようになりました。
Kaggle用のオンプレGPUマシンを用意する最大のメリットとしては、『従量課金のメンタルモデルから定額使い放題のメンタルモデルへ変化』です。この現象は、Claude Codeが登場した際に流行した理由に似ていると思います。従量課金制の場合は、どうしても計算リソースを節約する方向に寄ってしまい、解法選択に影響が出ることがあります。(電気代は除いて)使い放題になることで、真の意味で眼の前の課題のみに向き合うことができるようになったと思います。
自作PC購入前の調査として、クラウドサービスでGPUをレンタルするのがオススメです。自分の場合は、RunpodでRTX 5090をレンタルして使用感を理解しました。『Drawing with LLMs』に参加している際に、Kaggle上のGPUの7倍以上高速に計算が完了し、試行回数を大幅に増やすことができることに感動し、RTX 5090の購入を決意しました。
どのGPUを選択するかの参考になりそうな記事を下記に示します。Kaggle上のVRAMが16GBなので、それ以上のGPUから選択することがオススメです。
まとめると、これからも複数回Kaggleに参加し続けるのであれば、自作PCに軍配が上がると考えています。自分の観測範囲では、金メダル獲得を目指しているKagglerや賞金ハンターのKagglerの自作er率が高い気がします。想定使用回数やリセールバリューも加味して、クラウドサービスとどっちがお得か判断して頂ければと思います。クラウドサービスの場合は毎回環境がリセットされてしまいますが、自作PCの場合はモデルファイルなどを残しやすいことも自作PCのメリットかと思います。メインは自作PC、スポットでクラウドサービスを使うなどの方法も有力です。
PCパーツ購入にあたって
自作PCを組むためには、PCパーツ(10種類ほど)を選定する必要があります。クラウドサービスでの事前調査から、グラボはRTX 5090に決定しました。互換性のあるパーツを順番に選定する必要があります。下記の記事を参考にある程度の候補を絞って、実店舗に伺いました。店員さんの助けも借りながら、必要なパーツを選定しました。
Kaggle向けの自作PCにおいては、グラボが最重要パーツとなります。世の自作erのほとんどはゲーミング目的なので、この点が少し異なるかもしれません。ゲーミング目的であれば有線LANを使うことが多いですが、Kaggle目的であれば無線Wi-Fi搭載のマザーボードを選定することが便利だと思います。
CPUやストレージもなるべく良いものを選定しました。マザーボード、電源ユニット、ケースなどはある程度自動的に候補が絞られました。
『ローカルLLM実践入門 第7章 ローカルLLMが快適に使える 最適なパソコンを自作しよう』には、ローカルLLM向けの自作PCのパーツ選定について参考になる記述があります。自分はこの書籍に色々とメモしながらパーツを選定しました。ローカルLLMに興味がある方にオススメの書籍です。
自作PCの組み立て
マザーボードに付属のクイックスタートガイドと『PC自作の鉄則!2025』を手元に置いて組み立てました。後者の書籍は自作PCに挑戦する場合は必読と言えるほどオススメです。
2025verの発売日が2024年12月16日なので、この記事が公開される約2週間後には2026verが発売されているかもしれません。例年12月の中旬に発売されているみたいです。
マザーボードにパーツを順番に接続し、最小構成で動作確認していきます。マザーボードには、どこまで動作しているかを知らせるランプがあったので、『テスト駆動組み立て』で進めました。よくわからない手順については、パーツ名をYouTubeで検索したり、写真を撮ってChatGPTに聞いたりすることで疑問点を解消しました。
そもそも論ですが、自作PCにはBTO(Build To Order)という方法があり、パーツ選定だけして受注生産することが簡単かもしれません。自分は勉強目的もあったので、BTOではなく、自身で組み立てすることにしました。心配な方はBTOパソコンをオススメします。
半年使用してみた感想
「自作PCによって勝てるようになりましたか?」というのは気になるところだと思います。
結論としては、コンペの総合ランキングは、自作PC導入前のTop300から、半年でTop100入りを達成しました!
(自作PCとチームメイトに圧倒的感謝!)
以下にここ半年間で参加した主なコンペについての体験談を記します。
コンペの参加中に自作PCを組み立てた『Drawing with LLMs』は、セットアップなどに苦労したことに加えて、解法選択を間違えて普通にKaggleで敗北を喫しました。ギリギリメダル圏外でした。リソースによって手数が増えたとしても、それで勝てるかは別問題ということを実感しました。
自作PCによって大きく変わったのは、参加できるコンペの幅が広がったということです。『MAP - Charting Student Math Misunderstandings』のように、LLMの学習が必要なコンペに気軽に参加できるようになりました。今まではLLMの推論のみで上位に入れるコンペなどに参加することで、リソース不足が致命傷にならないように工夫していましたが、その必要が無くなりました。結果は7位チーム金メダルでした!
『NeurIPS 2025 - Google Code Golf Championship』はGPUを必要としないコンペでしたが、それでも自作PCの効果は大きかったです。色々なスクリプトを常に走らせ続けていたのですが、これはノートPCでは難しかったと思います。CPUもある程度良いものを選定しておいて良かったです。結果は15位チーム銀メダルでした!
おわりに
最後まで読んで頂きありがとうございました!この記事をきっかけに、自作PCに興味を持つ方が増えたら嬉しいです。振り返ると、自作PCへの挑戦はもっと早い段階、例えば学生時代の長期休みなどで経験しておけば良かったと感じています。また、冒頭のクラウドサービスについての章でも述べましたが、基本的にはクラウドの方が適しているケースの方が多いです。自作PCはまとまった初期投資が必要なので、無理のない範囲で検討してください。Kaggleは専門知識や工夫が勝敗を分ける世界であり、決してPay to Winではありません。予算が限られていても、創意工夫次第で十分に勝機を掴めます。
本記事は以上です。皆様の良いKaggleライフを応援しております。
参考にしたもの