目次
1. 5G UE登録の概要
1.1. 5Gシステムアーキテクチャ(UE、gNB、5GC)の概要
5Gシステムは、ユーザーエクイップメント(UE)、次世代ノードB(gNB)を含む無線アクセスネットワーク(RAN)、および5Gコアネットワーク(5GC)内の様々なネットワーク機能(NF)から構成される。5GCはサービスベースアーキテクチャ(SBA)として設計されており、アクセスおよびモビリティ管理機能(AMF)、セッション管理機能(SMF)、認証サーバー機能(AUSF)、統合データ管理(UDM)、ポリシー制御機能(PCF)、ユーザープレーン機能(UPF)、データネットワーク(DN)などのNFがモジュール化されている。このモジュール性は、独立した容量拡張、進化、およびオンデマンド展開を可能にし、以前の世代からの大きな変化を示している [1]。
これらのNFは、明確に定義されたサービスベースインターフェース(SBI)を介して相互作用し、エンドツーエンドの通信サービスを集合的に提供する。例えば、AMFはUEと5GC間のモビリティおよび接続管理を担い、SMFはPDUセッションの確立、変更、解放を管理し、UPFはユーザーデータプレーンを処理する [1]。
1.2. UE初期登録の目的と重要性
UEの初期登録は、UEが5Gネットワークに存在することを確立し、サービスを承認し、モビリティ追跡を可能にするための重要なプロセスである [3]。この手順は、UEがネットワークアクセスを獲得するための基本的な要件である。
登録の主な目的は多岐にわたる。これには、新規UEの初期アクセスを容易にすること、UEがトラッキングエリア(TA)間を移動する際のモビリティを管理すること、UEの能力変更をネットワークに通知すること、非活動期間中にネットワーク接続を維持するための定期的な更新を実行すること、および緊急事態における限定的なサービスアクセスを可能にすることが含まれる [3]。
1.3. レポートの範囲と目的
本レポートは、5G UEが電源投入された瞬間から、システム情報ブロック(SIB)の受信、初期登録、そして最終的に登録済み待機状態(RM-REGISTERED、CM-IDLE)への移行に至るまでのイベントシーケンスを詳細に記述することを目的としている。
主要な目的は、この複雑なプロセスをメッセージシーケンスチャートによって包括的に提示することである。このチャートは、3GPP仕様に厳密に準拠した詳細な技術的説明によって補完される。これには、正確なメッセージ名、インターフェース定義、プロトコル名、およびUu(無線)およびN2/NF-NFインターフェース全体で使用される特定のチャネルタイプが含まれる。
2. メッセージシーケンスチャート:UE電源投入から待機状態まで
1.図
2.2 5G UE登録フローの詳細分析
A. UE電源投入と初期アクセス(セル選択とSIB取得)
UEが電源投入されると、5Gモデムはセル探索手順を開始する。この手順では、UEは近隣のgNBによって送信される同期信号ブロック(SSB)をスキャンし、初期の時間および周波数同期を適切なセルと確立する [1]。SSB内では、UEは物理セルIDとフレームタイミングを決定するために、プライマリ同期信号(PSS)とセカンダリ同期信号(SSS)を復号する。続いて、SSBの一部である物理ブロードキャストチャネル(PBCH)を復号し、マスター情報ブロック(MIB)を取得する。MIBは、物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)上のシステム情報ブロックタイプ1(SIB1)の場所へのポインタを含む重要なスケジューリング情報を提供する。SIB1には、ランダムアクセスチャネル(RACH)構成などの初期アクセスに不可欠なパラメータが含まれる [1]。
この段階では、UEはRM-DEREGISTERED状態(まだコアネットワークに登録されていない)およびCM-IDLE状態(アクティブな接続がない)にある [1]。高層のシグナリングやネットワークとの相互作用は、物理層でのこの厳密な手順に依存している。SSB、PBCH、SIBの復号が成功することは、その後のすべての通信プロセスの絶対的な前提条件となる。この基礎的なステップがなければ、UEはネットワークへの接続プロセスを開始することさえできない。これは、5G通信スタック全体が、堅牢で正確な物理層の同期と必須のシステム情報の取得に根本的に依存していることを示している。
3.2. ランダムアクセスチャネル(RACH)手順
RACH手順は、UEがgNBとのアップリンク同期を確立し、初期の専用アクセスリソースを要求するためにUEによって開始される。これは競合ベースのプロセスであり、複数のUEが同時にアクセスを試みる可能性がある [4]。
- Msg1(ランダムプリアンブル)PRACH上: 5Gモデムは、SIB1で設定されたプリアンブルのセットからランダムなプリアンブルを選択し、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)上で送信する。Msg1を送信すると、UEはgNBからの応答を待つためにタイマーT300を開始する [4]。
- Msg2(ランダムアクセス応答 - RAR)PDSCH上: gNBは、プリアンブル(Msg1)を検出すると、ランダムアクセス応答(RAR)で応答する。このRARは物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)上で送信され、その受信は特定のRA-RNTI(Random Access-Radio Network Temporary Identifier)を使用して物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)上で示される。RARには、UEにとって重要な情報が含まれる:タイミングアドバンス(アップリンク送信タイミングを補正するため)、アップリンクグラント(Msg3のリソース割り当て)、および一時的なC-RNTI [4]。
-
Msg3(RRC接続要求)PUSCH上(UL_CCCH、SRB0): Msg2で提供されたアップリンクグラントを利用して、5GモデムはRRC接続要求メッセージを物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)上で送信する。このメッセージは、アップリンク共通制御チャネル(UL_CCCH)上のシグナリング無線ベアラ0(SRB0)を介して伝送される。RRC接続要求には、
ue-Identity
(ランダムな数値、通常39ビットで、競合解決に使用される)とestablishmentCause
(例:初期登録のためのmo-Signalling)が含まれる。このメッセージは、セグメンテーションをサポートしない透過モードRLCを使用するため、メッセージサイズが厳密に制限されている(例:48ビット、TS 38.331)[4]。 -
Msg4(競合解決)PDSCH上(DL_CCCH、SRB0): gNBはPDSCH上で競合解決メッセージを送信する。このメッセージは、C-RNTI(競合が暗黙的に解決された場合)または一時的なC-RNTIを使用してアドレス指定される。その目的は、UEのプリアンブルが正常に検出され、Msg3が他のUEとの競合なしに受信されたことを確認することである。UEがこのメッセージを正常に復号し、その
ue-Identity
がMsg3で送信されたものと一致する場合、競合は解決され、UEはRRC接続確立に進むことができる [4]。
RACH手順は、共有無線媒体における競合を管理するための5Gの洗練されたアプローチを示している。Msg2のアップリンクグラントを介したアップリンクリソースの動的割り当てと、Msg4による明示的な競合解決メカニズムは、特に多くのUEが存在する高密度なネットワーク環境において、効率的で堅牢な初期アクセスを確保するために不可欠である。SRB0が共通制御チャネル(CCCH)上で使用されることは、専用でセキュアな通信経路が確立される前に、最小限の非セキュアなベアラが初期に確立されることを明確に示している。
3.3. RRC接続確立
競合解決が成功した後、gNBはRRC Setup
メッセージをUEに送信する。このメッセージは、UEをRRC IdleモードからRRC Connectedモードに移行させる上で極めて重要である(TS 38.331 [4])。その主な機能は、専用制御チャネル(DCCH)を介して動作するシグナリング無線ベアラ1(SRB1)を確立することである。SRB1は、その後のRRCメッセージの完全性保護と暗号化をサポートするように設計されている。このメッセージを受信すると、UEはT300タイマーを停止する [4]。RRC Setup
メッセージには、radioBearerConfig {srb-ToAddModList}
やmasterCellGroup { cellGroupId, rlc-BearerToAddModList, mac-CellGroupConfig, physicalCellGroupConfig}
などの設定詳細が含まれる [4]。
5Gモデムは、RRC Setupの成功を、新たに確立されたSRB1を介してUL_DCCH上の物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)でRRC Setup Complete
メッセージを送信することで確認する。このメッセージは、RRC接続の確立が成功したことを確認する。特に、初期登録の場合、このRRC Setup Complete
メッセージは、UEからの最初の非アクセス層(NAS)メッセージであるREGISTRATION REQUEST
をピギーバックする [4]。このバンドル化は、ASとNASの手順を組み合わせることでシグナリングを最適化する。
RACH中に共通制御チャネルで使用されるSRB0から、専用制御チャネルで使用されるSRB1への移行は、UEの接続ライフサイクルにおける重要な進展を意味する。SRB1は、より堅牢で本質的に安全な制御プレーンシグナリングのための専用チャネルを提供し、共有され基本的なCCCHを超えた機能を提供する。この進展は、通信を拡張し、安全な交換に備える上で不可欠である。NAS REGISTRATION REQUEST
がRRC Setup Complete
メッセージ内にピギーバックされることは、5Gにおける主要な最適化技術であり、ネットワークエントリープロセス全体を合理化し、シグナリングオーバーヘッドを削減する。
3.4. 非アクセス層(NAS)登録開始(5GMM)
3.4.1. REGISTRATION REQUEST(UE -> gNB経由AMF)
REGISTRATION REQUEST
は、3GPP TS 24.501で定義されている初期NASメッセージ(5GMM)に分類される [11]。前述のとおり、これはRRC Setup Complete
メッセージ(Uuインターフェース)内にカプセル化され、その後、gNBがAMFに送信するINITIAL UE MESSAGE
(NGAPプロトコル、N2インターフェース)内にカプセル化される [4]。
メッセージ内容(TS 24.501 [3]):
REGISTRATION REQUEST
には、ネットワークにとって重要な情報が含まれる。
- Registration Type: 登録の理由を示し、例えば「Initial Registration」(UEがRM-DEREGISTERED状態の場合)、「Mobility Registration Update」、「Periodic Update」、または「Emergency Registration」などがある [3]。
- UE Identity: 初期登録時には、UEは加入者永続識別子(SUPI)を保護するために加入者秘匿識別子(SUCI)を提供する。以前に登録されている場合は、5Gグローバル一時UE識別子(5G-GUTI)が使用されることがある [3]。
- Security Parameters: その後の認証およびセキュリティ設定に必要な情報 [3]。
- Requested NSSAI: 望ましいネットワークスライスを示すネットワークスライス選択支援情報 [3]。
-
Establishment Cause: シグナリング接続要求の理由、例えば
mo-Signalling
またはmo-Data
[3]。 - その他、UE Capabilities、PDU Session Status、DRX parameters、UE policy containerなどのオプションパラメータ [3]。
3.4.2. AMF選択とINITIAL UE MESSAGE(gNB -> AMF)
gNBは、UEからREGISTRATION REQUEST
を受信すると、適切なAMFを選択する。この選択は、UEの位置、要求されたNSSAI、およびオペレーター定義のポリシーなど、いくつかの要因に基づいて行われる(TS 23.501 [3])。gNBがAMFを直接決定できない場合、指定されたフォールバックAMFに要求を転送することがある [3]。
次にgNBは、選択されたAMFにINITIAL UE MESSAGE
(NGAPプロトコル、TS 38.413, N2インターフェース)を送信する [4]。このメッセージは、特定のUEに関するRANから5GCへの最初の通信として機能する。これには、カプセル化されたREGISTRATION REQUEST
NASメッセージ、RAN UE NGAP ID(RAN内でUEコンテキストを一意に識別するためにgNBによって割り当てられる)、RRC Establishment Cause、およびUEの位置情報が含まれる [4]。RAN UE NGAP IDは、AMFがgNB上のUEコンテキストを参照するために不可欠である [4]。
3.4.3. UEコンテキスト転送とID要求(オプション)
UEが再登録しており、サービス中のAMFが変更された場合(例:AMFサービスエリア間のモビリティのため)、オプションのUE Context Transfer手順(TS 23.502)が発生することがある。これには、新しいAMFが、古いAMFまたは中央の非構造化データストレージ機能(UDSF)から必要なUEコンテキスト情報を取得することが含まれる [3]。
AMFがUEのSUCIを保持していない場合(REGISTRATION REQUEST
で提供されなかったか、コンテキスト転送で取得できなかった場合)、N1インターフェースを介してUEにIDENTITY REQUEST
(5GMM, TS 24.501)を開始する。UEは、HPLMNの公開鍵を使用して導出されたSUCIを含むIDENTITY RESPONSE
(5GMM, TS 24.501)で応答する [3]。この手順は、AMFがUEの永続的な識別子を取得するために重要であり、その後の認証プロセスに必要となる。
3.4.4. 認証とセキュリティ設定(5GMM、5GSM)
認証とセキュリティ設定は、UEの正当性を検証し、ネットワークとのセキュアな通信を確立するための重要なステップである。
a. AUSF選択
AMFは、UEの認証を実行するためにAUSFを選択する [3]。この選択は、UEのSUPIまたはSUCIに基づいて行われる(TS 23.501 [3])。AMFは、Nausf_UEAuthentication_Authenticate Request
(HTTP/2, TS 29.509)をAUSFに送信し、認証プロセスを開始する [8]。
b. 認証手順(5G-AKA)
AUSFは、UEの認証を実行するためにUDMと連携する。
- AUSFは
Nudm_Authentication_Get
(HTTP/2, TS 29.503)をUDMに送信し、認証データを取得する [3]。 - UDMは、UEのUSIMに格納されている共有秘密鍵と、UDM/ARPFに格納されている同じ情報を使用して、認証ベクターを生成する [9]。
- 認証パケットはNAS認証メッセージ内にカプセル化され、UEとAMF間でN1 NASトランスポートメッセージとして交換される [8]。
- 認証が成功すると、AUSFは関連するセキュリティ情報をAMFに提供し、SUCIが使用された場合はSUPIをAMFに返す [8]。
5G-AKA(Authentication and Key Agreement)は、4GのEPS-AKAを強化し、より堅牢なユーザー認証と強力なデータ認証を提供する [9]。
c. NASセキュリティモードコマンド手順
認証が成功すると、AMFはUEとのNASシグナリングの暗号化と完全性保護を確立するためにNASセキュリティモードコマンド手順を開始する。
-
AMFがセキュリティを開始: AMFは、K_NASintを使用してNASシグナリングの完全性保護を開始する。AMFは、セキュリティアルゴリズムを指定し、完全性検証のためのNASメッセージ認証コード(NAS MAC)を含む
SECURITY MODE COMMAND
(5GMM, TS 24.501, TS 33.501)をUEに送信する [9]。このメッセージは、新しい5G NASセキュリティコンテキストを使用して完全性保護される [10]。AMFはまた、K_NASencを使用してUEからのアップリンクNASメッセージの復号を開始する [9]。 -
UEがコマンドを処理: UEは、自身のK_NASintを使用して
NAS SECURITY MODE COMMAND
の完全性を検証する。その後、アップリンク暗号化(K_NASenc)、ダウンリンク復号(K_NASenc)、および両方向の完全性保護(K_NASint)を開始する。UEは、NAS MACを含むSECURITY MODE COMPLETE
(5GMM, TS 24.501, TS 33.501)メッセージで応答する [4]。 - AMFがセキュリティを完了: AMFは、K_NASintを使用してUEからのNAS MACを検証する。その後、K_NASencを使用してUEへのダウンリンクNASメッセージの暗号化を開始し、双方向のNASセキュリティを完了する [9]。この手順により、UEとAMF間のすべてのNASメッセージが完全性保護され、暗号化されるようになる [11]。
d. ASセキュリティモードコマンド手順
NASセキュリティが確立された後、gNBはUEとの無線アクセス層(AS)シグナリングおよびユーザーデータのセキュアな通信を確保するためにASセキュリティモードコマンド手順を開始する。
-
gNBがセキュリティを開始: gNBは、K_RRCintを使用してRRC完全性保護を開始する。gNBは、アルゴリズムと完全性メッセージ認証コード(MAC-I)を指定する
RRC Security Mode Command
(TS 38.331, TS 33.501)をUEに送信する [4]。また、K_RRCencを使用してRRCダウンリンクメッセージの暗号化を開始する [9]。 -
UEがコマンドを処理: UEは、自身のK_RRCintを使用して
RRC Security Mode Command
の完全性を検証する。その後、RRC完全性保護とダウンリンク復号を開始する。UEは、自身のMAC-Iを含むRRC Security Mode Complete
(TS 38.331, TS 33.501)メッセージで応答する [4]。また、K_RRCencを使用してRRCアップリンクメッセージの暗号化を開始する [9]。 - gNBがセキュリティを完了: gNBは、UEからのMAC-Iを検証する。その後、K_RRCencを使用してUEからのRRCアップリンクメッセージの復号を開始し、双方向のRRCセキュリティを完了する [9]。
この一連のセキュリティ手順は、5Gシステムにおける多層的な保護メカニズムを示している。NAS層とAS層でそれぞれ独立したセキュリティコンテキストを確立することで、各層の通信が適切に保護され、全体的なシステムの堅牢性が向上する。これは、UEからデータネットワークまで、エンドツーエンドのセキュリティチェーンを構築するための不可欠な要素となる。
3.4.5. UDMとPCFの相互作用
認証とセキュリティ設定が完了すると、AMFはUEのサブスクリプションデータとポリシー情報を取得するためにUDMおよびPCFと連携する。
a. UDM選択とサブスクリプションデータ取得
AMFは、サブスクライバー関連情報にアクセスするためにUDMを選択する [3]。AMFは、Nudm_UEContext_Get
(HTTP/2, TS 29.503)をUDMに送信し、UEのサブスクリプションデータを取得する [3]。UDMは、UEのSUPI、許可されたNSSAI、およびその他の登録関連データを含むサブスクリプション情報をAMFに返す [3]。このデータは、AMFがUEのサービスとモビリティを管理するために不可欠である。
b. PCF選択とAMポリシーアソシエーション
AMFは、UEがどのようにサービスされるべきか(例:許可されるネットワークスライス、QoS)に関するポリシー決定を受信するために、PCFとの接続を確立する [3]。AMFは、Npcf_AMPolicyControl_Create Request
(HTTP/2, TS 29.507)をPCFに送信し、AMポリシーアソシエーションを確立する。PCFは、UEのサブスクリプションデータとネットワークポリシーに基づいて、AMFにポリシー規則を提供する。このポリシーアソシエーションは、UEのアクセスとモビリティに関するネットワークの挙動を制御するために重要である。
3.4.6. 登録承認と完了
UDMとPCFとの相互作用が完了すると、AMFはUEの登録を承認し、UEはこれを完了する。
a. REGISTRATION ACCEPT(AMF -> UE)
AMFは、登録が成功したことを示すREGISTRATION ACCEPT
(5GMM, TS 24.501)メッセージをUEに送信する [3]。このメッセージは、N1 NASトランスポートを介して、DL_DCCH上のSRB1を使用して送信される。これには、新しい5G-GUTI、許可されたネットワークスライス(Allowed NSSAI)、およびその他の情報が含まれる場合がある [3]。
b. REGISTRATION COMPLETE(UE -> AMF)
UEは、REGISTRATION COMPLETE
(5GMM, TS 24.501)メッセージをUL_DCCH上のSRB1を使用してAMFに送信することで、登録の成功を確認する [3]。このメッセージは、UEがネットワークに正常に登録され、サービスを受信する準備ができたことを示す。
3.4.7. PDUセッション確立(5GSM)
登録が完了すると、UEはデータネットワークへの接続を確立するためにPDUセッション確立手順を開始する。
a. PDU SESSION ESTABLISHMENT REQUEST(UE -> AMF経由SMF)
UEは、PDUセッションを確立するためにPDU SESSION ESTABLISHMENT REQUEST
(5GSM, TS 24.501)メッセージを作成する [12]。このメッセージは、UL_DCCH上のSRB2を介してN1 NASトランスポートとして送信される。これには、PDUセッションID、要求されたPDUセッションタイプ(例:IPv4、IPv6、Ethernet)、およびSSC(Service and Session Continuity)モードが含まれる [12]。UEが新しいPDUセッションを確立する場合、使用されていないPDUセッションIDを割り当て、PTI(Procedure Transaction Identity)IEを設定する [12]。
b. SMF選択とセッション管理コンテキスト作成
AMFは、UEからのPDUセッション確立要求を受信すると、適切なSMFを選択する(TS 23.501 [13])。AMFは、Nsmf_PDUSession_CreateSMContext Request
(HTTP/2, TS 29.502)をSMFに送信し、UEのSUPI、選択されたDNN(Data Network Name)、PDUセッションID、要求タイプなどの情報を含める [13]。
- SMFは、UDMからセッション管理サブスクリプションデータを取得する(
Nudm_SDM_Get
, HTTP/2, TS 29.503) [13]。 - SMFは、UEの要求をサブスクリプションデータとローカルポリシーに対して検証し、SMコンテキストを作成する [13]。
- SMFはまた、PCFとのセッション管理ポリシーアソシエーションを確立する(
Npcf_SMPolicyControl_Create Request
, HTTP/2, TS 29.512) [13]。
c. UPF選択とN4セッション確立
SMFは、PDUセッションのユーザープレーンアンカーとして機能する1つ以上のUPFを選択する [13]。SMFは、PDUセッションタイプに応じてUEにIPアドレス/プレフィックスを割り当てる [13]。次に、SMFはN4 Session Establishment Request
(PFCP, TS 29.244)をUPFに送信し、パケット検出規則(PDR)や転送アクション規則(FAR)などの規則を提供する [13]。UPFはN4 Session Establishment Response
で応答し、セッション確立を確認する [13]。
d. PDU SESSION RESOURCE SETUP(AMF -> gNB)
SMFは、N2 SM情報(QoSフロー識別子(QFI)、QoSプロファイル、CNトンネル情報など)とN1 SMコンテナ(PDU Session Establishment Accept
を含む)をNamf_Communication_N1N2MessageTransfer
(HTTP/2, TS 29.518)を介してAMFに送信する [13]。AMFは、この情報を使用してPDU SESSION RESOURCE SETUP REQUEST
(NGAP, TS 38.413)をgNBに送信する [4]。このメッセージには、確立されるPDUセッションのリスト、各PDUセッションのQoSフロー、およびQoSフローの品質属性が含まれる [4]。QFIは、PDUセッション内のQoSフローを一意に識別するために使用され、ユーザープレーンのトラフィック転送処理(例:スケジューリング、アドミッション閾値)に影響を与える [14]。
e. DRB確立(gNB -> UE)
gNBは、AMFからPDU SESSION RESOURCE SETUP REQUEST
を受信すると、ユーザープレーンのためのデータ無線ベアラ(DRB)を確立するためにUEにRRC Connection Reconfiguration
(TS 38.331)メッセージを送信する [4]。このメッセージは、DL_DCCH上のDRBを介して送信され、PDU SESSION ESTABLISHMENT ACCEPT
(5GSM, TS 24.501)NASメッセージも含まれる [4]。UEは、DRBの確立を確認するためにRRC Connection Reconfiguration Complete
(TS 38.331)メッセージで応答する [4]。gNBは、DRBの成功したセットアップをINITIAL CONTEXT SETUP RESPONSE
(NGAP, TS 38.413)メッセージでAMFに通知する [4]。
f. PDU SESSION ESTABLISHMENT ACCEPT(SMF -> AMF経由UE)
SMFは、Nsmf_PDUSession_UpdateSMContext Request
(HTTP/2, TS 29.502)を介してAMFからANトンネル情報を受信し、N4 Session Modification Request
(PFCP, TS 29.244)をUPFに送信して転送規則を更新する [13]。最終的に、UEはSMFからPDUセッション確立を承認するメッセージを受信し、データネットワーク(DN)とのユーザープレーン通信を開始できる状態になる。この時点で、UEはCM-CONNECTED状態に移行し、データトラフィックの送受信が可能になる。
3.4.8. 待機状態への移行(CM-IDLE)
a. UEがCM-IDLE状態に入る
UEがアクティブなデータ転送に関与していない場合、バッテリーを節約するためにアイドルモードに移行する [16]。これは、UEがCM-CONNECTED状態からCM-IDLE状態に移行することを意味する。この状態では、UEはネットワークとのN1 NASシグナリング接続を維持しない [12]。
b. ネットワークがUEコンテキストを維持
UEがCM-IDLE状態に移行しても、AMFはUEの登録コンテキストをRM-REGISTERED状態として維持する [1]。これは、UEがネットワークに登録されたままであり、必要に応じてネットワークからページングされる可能性があることを意味する。ネットワークは、受信する呼び出し、配信待ちのデータパケット、またはUEとの接続を再確立するためのネットワーク要求があった場合に、ページング手順を使用してアイドル状態のUEに警告する [16]。UEは、ページングメッセージを監視するために定期的にウェイクアップし、ページングメッセージに自身の識別子を認識すると、サービス要求手順を開始してアイドルモードから接続モードに移行する [16]。
この待機状態への移行は、UEのバッテリー寿命を最適化し、ネットワークリソースを効率的に管理するための重要なメカニズムである。UEは、必要に応じて迅速に接続モードに戻ることができるように、最小限のネットワークコンテキストを維持する。
4. 結論
本レポートは、5G SAネットワークにおけるUEの電源投入から、システム情報の受信、初期登録、そして待機状態への移行に至るまでの複雑なプロセスを、シーケンスチャートと詳細な技術的説明を通じて包括的に分析した。
- 初期アクセス: UEの初期アクセスは、物理層でのSSB、PBCH、SIBの取得から始まり、その後のRACH手順によるアップリンク同期と初期リソース割り当てへと続く。RACHにおけるMsg1からMsg4までのシーケンスは、共有無線媒体における効率的な競合管理の重要性を示している。
-
RRC接続: RRC接続確立では、SRB0からSRB1へのシグナリングベアラの進化が、より堅牢で専用の通信経路を確立する上で不可欠であり、NAS
REGISTRATION REQUEST
のRRC Setup Complete
メッセージへのピギーバックは、シグナリング効率を向上させるための重要な最適化である。 -
NAS登録: NAS登録手順では、UEがSUCIやRequested NSSAIなどの重要な情報を含む
REGISTRATION REQUEST
を送信し、gNBがAMFを選択してINITIAL UE MESSAGE
を転送する。認証とセキュリティ設定は、AUSF、UDM、AMF、gNB間の多段階プロセスを通じてUEの身元を検証し、NASおよびAS層でのセキュアな通信を確立する。この多層的なセキュリティフレームワークは、5Gシステムの堅牢性を確保する上で極めて重要である。 - PDUセッション: 登録承認と完了の後、UEはPDUセッション確立手順を開始し、データネットワークへの接続を確立する。これには、SMFによるセッション管理コンテキストの作成、UPFの選択とN4セッションの確立、そしてgNBによるDRBの確立が含まれる。QFIの使用は、PDUセッション内のQoSフローを識別し、ユーザープレーンのトラフィック処理を差別化するために不可欠である。
- 待機状態: 最終的に、UEは非活動期間後に待機状態(CM-IDLE)に移行するが、AMFはUEの登録コンテキストをRM-REGISTERED状態として維持する。これにより、UEはバッテリー寿命を節約しながら、必要に応じて迅速に接続モードに戻ることが可能となる。
この詳細な分析は、5GシステムがUEの接続性、セキュリティ、およびリソース効率を最適化するために、物理層からアプリケーション層まで、いかに複雑かつ統合されたプロトコルと手順を採用しているかを明確に示している。これらの手順は、現代の高性能モバイルネットワークの基盤を形成し、ユーザーにシームレスで安全な通信体験を提供する上で不可欠である。
5. 引用文献
- 5G Core Basic Concepts ISSUE 3.0, Scribd
- 【English version】3GPP 5G Standalone Access Registration Call flow_Rev3.00_20231012.pdf, SlideShare
- 5G UE Registration:Step-by-Step Guide and AMF Selection Criteria, TechLteWorld
- 5G SA Registration | 5G Call Flow, Techplayon
- 5G Signalling Procedures Part-3 Updated In 2024, Apeksha Telecom
- 3GPP TS 38.413, Scribd
- NGAP/NAS Server, Black Duck
- inside TS 23.316: 5WWC Registration Management procedures, Tech-invite
- Security for 5G - 5G, ShareTechnote
- Rev01_C1-214343_MISC02_SMC_correction.docx, 3GPP
- inside TS 24.501: NAS Security, Tech-invite
- 3GPP TS 24.501, 3GPP
- 3GPP TS 23.502, 3GPP
- inside TS 23.501: 5GS QoS Model, Tech-invite
- inside TS 23.501: 5GS QoS Model, Tech-invite
- Paging in 5G Network, free5GC
- inside TS 23.502: 5GS Registration procedures, Tech-invite
- Authentication and Key Management for Applications (AKMA) in 5G, 3GPP