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「あまりに暑いので,140年分の気温をProphetで分析した」を掘り下げてみた -考察編-

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概要とおさらい

東洋経済ONLINEの記事(東京の夏が「昔より断然暑い」決定的な裏づけ-過去140年の日別平均気温をビジュアル化)
を受けて、気象庁HPにある140年気温のデータを用いた時系列分析をしようと思いました。しかし、

@haltaro さん
あまりに暑いので,140年分の気温をProphetで分析した

という投稿で一歩早く分析がされていたので、
「あまりに暑いので,140年分の気温をProphetで分析した」かったが、先を越されていたので掘り下げてみた

という記事を書きました。本投稿は、その続編になります。
詳しくは上記の2記事を参照ください。

簡単に復習をすると、時系列フィッティングの結果、

  • 東京の平均気温は長い目で見れば上昇傾向だが、ここ数年は低下傾向にあった
  • 最高気温はここ数年上昇傾向、最低気温は低下傾向にあった
  • 最高気温と最低気温の傾向が混ざり、最終的に平均気温は減少傾向に見えた

ということが分かりました。
この結果について、できる範囲で考察していこうと思います。

※図が多く、ページスクロールが少々大変ですがご容赦ください。

考察

気温上昇の考察 -地球温暖化とヒートアイランド現象-

まず、一般的に議論されている気温上昇の原因について考えてみます。

地球温暖化については、言わずもがなですね。
大気中に温室効果ガスが増えたことにより、地表の熱が逃げづらくなり、気温が上がる減少です。世界的に問題視されています。

ヒートアイランド現象とは、都市特有の現象です。
土の地面に草花や木々が生えている状態と比べて、コンクリートの地面に建物が立っている都市は、以下のような要因でヒートアイランド現象が起きると言われています。

  • 人工的な構造物からの熱輻射が増える
  • エアコンや工場、自動車などからの人工排熱が増える
  • 構造物の密度が高く、風通りが悪くなるため熱が逃げにくい
  • 構造物の密度が高く、天空率が低いため、夜間の放射冷却が阻害される

環境省HP-ヒートアイランド現象の要因について

前回の記事で@sumomoneko さんからコメントをいただきましたが、東京は日本で最も都市化している地域であり、間違いなくヒートアイランド現象が起きていると考えられます。

下記の図のように、都市化が進んでいる地域と進んでいない地域では、1901-1930年の平均気温を基準とした温度偏差に差が見られます。

図3 : 大都市と都市化の影響が比較的小さいとみられる15地点平均の年平均気温及び日本近海で平均した年平均海面水温の長期的な変化
(気象庁HP ヒートアイランド現象と地球温暖化は違うのですか?より抜粋)

fig_03.png

この差が都市化の影響じゃないか、というわけですね。
この観点は面白そうです。東京の気温変化と、都市化していない地域の気温変化を比べてみましょう。

比較対象地点

都市化している地点が東京だけでは、都市化の影響なのか、東京に特有なのかを判別できない恐れがあります。そこで、都市化した地点として、

  • 名古屋

を選びました。
次に、「都市化の影響の比較的小さいとみられる15地点より、ともに太平洋が近く緯度軽度的にも近い、

  • 銚子

を選びました。
加えて、前回記事で@maru3さんに、富士山や北海道、沖縄との比較についてコメントをいただきましたが、それに則って、極端な気候の地点として以下も追加します。

  • 富士山
  • 稚内
  • 石垣島

それぞれ、航空写真で見てみましょう。

Google Mapで見た東京の航空写真
Screen Shot 2018-07-28 at 19.43.57.png

Google Mapで見た名古屋の航空写真
Screen Shot 2018-07-28 at 22.52.06.png

Google Mapで見た銚子の航空写真
Screen Shot 2018-07-28 at 19.43.34.png

Google Mapで見た富士山の航空写真
Screen Shot 2018-07-28 at 19.49.44.png

Google Mapで見た稚内の航空写真
Screen Shot 2018-07-28 at 19.50.16.png

Google Mapで見た石垣島の航空写真
Screen Shot 2018-07-28 at 19.50.45.png

東京、名古屋とその他の地点では、一見しても都市化に差があるように見えます。
石垣島の海がとてもきれいです。

次に、気象庁から取得した各地点の気温データの概要です。

matome.png

地域によって気温計測の始まった日が異なります。
東京は2012/12/2から観測条件が変わっています。
名古屋は1923/1/1 ~ 1931/12/31の期間に観測条件が変わりましたが、1932/1/1以降はもとの観測条件に戻ったようです。
あとの4地点には観測条件の変化がありませんでした。

各地点の気温データを時系列フィッティング

前回の記事と同じ条件でデータを用意し、Prophetで同条件のフィッティングを行いました。
ところどころ作図がうまく行っていないところがありますが、内容を書ききることを優先したので、ご容赦ください。今後の課題ですね...。
縦軸の単位は℃です。

東京の気温推移(トレンド成分)
tokyo.png

名古屋の気温推移(トレンド成分)
nagoya.png

銚子の気温推移(トレンド成分)
chosi.png

富士山の気温推移(トレンド成分)
fujisan.png

稚内の気温推移(トレンド成分)
wakkanai.png

石垣島の気温推移(トレンド成分)
ishigaki.png

平均気温、最高気温、最適音ごとにまとめようとも思ったのですが、地点によって気温がかなり違い、グラフが縦方向に間延びしてしまうので、地点ごとにまとめました。
石垣島は1900年初頭に何があったんでしょうか...かなり最低気温が下がっています。

富士山はほとんど変化がないものの、すべての地点で言えることとして、少しずつ気温は上昇傾向にあるようです。
ただ、東京(と1900年初頭の石垣島)を除いて、同じ地点での最低気温、平均気温、最高気温の推移は似通ったトレンドを示しています。どうやら、最高気温と最低気温のトレンドの乖離は、6地点の中では東京だけのようです。

ヒートアイランド現象の影響はあるのか

次にヒートアイランド現象ですが、都市部と非都市部について、気温の上昇幅を比較していきます。

まず、各地点について、「1950年までの最低気温のトレンド平均」と、「それ以後の最低気温のトレンド値で最も高い値」について、差分をとった結果です。

trend_min.png

これはトレンド値を更に平均した指標なので、本来であれば生の値を用いるべきで、簡易化された考察です。しかしながら、グラフからも表からも、明らかに東京、名古屋の都市部では特に最低気温の上昇が大きいです。
(石垣島も差分が大きいですが、1900年初頭の急激な最低気温低下に起因していると考えられます。)

一方で、最高気温について同様の比較を行うと以下の結果です。

trend.png

富士山、稚内、石垣島という、都市化から特に離れた地点に比べれば、東京は明らかに大きな差分を持っています。一方で、名古屋より銚子のほうが大きいという結果も出ました。

以上の結果から、今回は以下のように結論づけました。

・最低気温の傾向は都市化による差が見られ、ヒートアイランド現象の影響が予想される
・最高気温の傾向には他の要因が関係している可能性があり、ヒートアイランド現象の
 影響を判断することはできない

ヒートアイランド現象の影響は、あると言えそうです。
最高気温については、より深い考察が必要そうですが、ここまでとしておきます。

東京の最低気温低下の考察

さて、別の問題として、非都市部と比べても、他の都市部(名古屋)と比べても、東京での近年の最低気温の低下傾向は特有なものです。
これはなぜでしょうか。

...考察と銘打っていますが、環境問題の方面に特別明るいわけではないので、正直に言って、この傾向を説明しうるアイデアは思いつかないです。

とはいえ、めげずに一旦調べてみると、日経電子版に以下のような記事がありました。
「地球温暖化のせいで寒冷化…」 なぜそんなことが起こるのか

「地球温暖化によって気温が上昇傾向にあるにもかかわらず、冬には例年にない低気温が観測される」という現象は、世界的にも起こっているようです。
また、このような言及もあります。

地球温暖化とは「地球全体の平均気温が均等に数度上がる」ことではなく、「平均気温の上昇で従来の気候システムが変化し、予期せぬ異常気象が増える可能性が大きくなる」現象だ。それを考えれば、局地的な寒冷化の頻繁な発生は、これからもますます増えていくだろう。
(「地球温暖化のせいで寒冷化…」 なぜそんなことが起こるのかより抜粋)

記事では気温低下の原因としていくつかシナリオが述べられています。

北極の氷が溶けることに起因して、

  • 北からの寒風の吹き込みが増える説
  • (欧州の場合)地球規模での海流が滞り、温かい海流が巡ってこなくなる説

いずれもその真偽は定かではないようですが、温暖化に伴う異常気象が起こりうる状況である、ということのようです。

東京はその影響を受けているのでしょうか。

関連情報 エルニーニョ現象/ラニーニャ現象のせい?

異常気象の際によく話題に上がるキーワードとして、エルニーニョ/ラニーニャ現象があります。

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生します。ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。
(気象庁HP エルニーニョ/ラニーニャ現象とはより抜粋)

また、Wikipediaには、過去に起きたエルニーニョ/ラニーニャ現象のタイミングがリスト化されています。
Wikipedia -エルニーニョ・南方振動

そして、気象庁HPには、エルニーニョ/ラニーニャ現象が起きた際に日本が受ける気候的な影響の調査結果があります。
気象庁HP エルニーニョ/ラニーニャ現象に関する知識

これらの情報を組み合わせれば、何らかの考察が生み出せるかもしれません。

なぜ東京だけ最低気温が減少傾向か?という問題をエルニーニョ/ラニーニャ現象で説明するならば、東京と同じく太平洋側にある銚子にも、まず同じような傾向が現れてほしいところですが、銚子の最低気温は上昇傾向です。

今回はこの問題に、答えを用意することができませんでした。(力尽きました...)
さらなる一手として、より広い地点を考慮することで、新たな気づきを得られるかもしれません。

まとめ

今回の考察によって、

  • 気温は上昇傾向にある
  • 都市部ではヒートアイランド現象によって気温上昇に拍車がかかっている
  • 気温上昇は、異常気象の原因となり、予期せぬ気候変動を招く可能性がある
  • 気象庁すごい

ということが分かりました。
前回の記事で、「夏はますます暑く、冬はますます寒くなる?」と言いましたが、これは正しくなさそうです。

「あくまで全体的には気温は上昇傾向にあり、気温上昇に起因する気候の変動、異常気象が、時折やってくる異常な暑さ/寒さを引き起こす」がより正確な結論だと思います。

長くなりましたが、以上で考察を終わります。

最後まで付きあってくださった方、意見をくださった方、ありがとうございました!

これからも温暖化や異常気象に体調をやられぬよう、がんばりましょう。

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