LeSS Yoakeとは?
LeSS Yoake は、Large Scale Scrum(LeSS)に関する国内唯一の5日間カンファレンスで、国内での認知と探求を目的としています。昨年はLeSSの考案者である Craig Larman 氏と Bas Vodde 氏が Keynote を務め、AI や LeSS 導入プロセスに関する講演が行われました。今年は Certified LeSS Trainer である Lv Yi 氏と Viktor Grgic 氏が Keynote を担当し、より実践的な知見が共有されました。
本記事では、
因果ループ図は描けるようになったのに、業務改善に活かせない…
という課題を感じていた私が、登壇準備や実験、フィードバックを通して得た
「システム思考を対話のツールとして活用する」という気づき と、登壇までのプロセスを共有します。ワークショップ設計やシステム思考の実践で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
因みに因果ループ図はこんな感じのものです。
登壇のテーマはシステム思考
今回の登壇テーマはシステム思考にしました。
システム思考は LeSSの10個ある原則 のひとつでもあり、書籍「学習する組織」 でも紹介されています。興味を持っている方が多いテーマだと感じた一方で、
自分自身の理解をより深め、実践できる形にしたい
という思いが一番の理由でした。
システム思考は対話のツールだった
システム思考に初めて触れたのは5年ほど前で、「学習する組織」を読んだことがきっかけでした。社内研修で因果ループ図の描き方を学び、課題整理に利用するようになりました。
ただ、
描けるようになったものの、改善に繋がらない
という状態が続き、次第に使わなくなっていきました。
「何かが足りない」と感じていたものの、その正体が分からなかったんです。
転機になったのが Craig Larman 氏の認定 LeSS プラクティショナー研修です。研修では因果ループ図を使いながら、LeSS の意図や背景(例:バックログが1つである理由)を説明していきます。その中で印象に残った言葉があります。
「第三者に見せても意味がない」
「モデルは間違っている。が、たまに役に立つ」
この言葉から、
システム思考は“自分が整理するためのツール”ではなく、対話のためのツールだった
と気づきました。
登壇に向けた検討と実験
登壇内容は、因果ループ図を実際に描いてもらうワークショップ形式にしました。ただ、過去の経験から、実際に描こうとすると線が引けないケースも見ていたため、どの程度のヒントが必要なのかを確かめるため、いくつか実験を行いました。
※以降はシステム思考の知識を前提とした記載があります
- 部署向けレクチャ
- 有識者との壁打ち
- 社内向けワークショップ
部署向けレクチャでの実験
グループを2つに分け、ヒント量の違いによる成果を検証しました。
-
Aグループ
- 要素のみ提示し、リンクを描いてもらう
- 結果:引けない要素が残り、意図しないリンクも発生
- 気づき:リンクを引く行為そのものが難易度高い
-
Bグループ
- 要素とリンクを提示し、種類(+/−)だけ判断してもらう
- 結果:全て妥当な種類を記述
- 気づき:このレベルまでヒントがあれば成立する
スクラムフェス仙台 でも同様に、リンクの種類判別は可能という結果が得られました。
有識者との壁打ちでの気づき
LeSS Yoake の発起人でもあり、認定スクラムトレーナーでもある江端さんに、実験結果や課題感を共有したところ、次のコメントを頂戴しました。
- 出来ないという気づきも価値
- ちょっと難しい方がよい
- カンファレンスは「きっかけ提供」の場
それまで私は、
どう成功体験を作るか
に意識が向いていましたが、
出来なくても良い
という視点は大きな転換でした。
社内向けワークショップ実施
これまでの実験を踏まえ、掛ける以下のアジェンダで社内開催しました。
- 描き方レクチャ
- ワークショップ1:ダイエットの因果ループ
- ワークショップ2:バックログ増加の影響
しかし、ワークショップ1が終わらず、ワークショップ2に着手できないなど、進行が上手くできませんでした。参加者の反応は悪くなかったものの、オブザーバー参加いただいた江端さんから、多くのコメントを頂戴しました。
- 終了基準が分からない
- ワークショップ1は細かくStepを踏むべき
- 各ワークショップの目的を明確化
- スライドの文字が多い
- 質問が少なくなる構成にする
- シチュエーションは限定した方が簡単
- デモがあると良い
- 経験をライブラリ化する ※
- 重要な点は抑揚や間で伝える
※ワークショップを実践した際に、設計意図に沿った反応が得られたか、参加者それぞれどのような反応の違いがあったか、よく躓きやすいポイントはあるか、などの経験をライブラリ化することで、ワークショップを設計するときに参考や、イメージトレーニングに使える。
登壇内容(最終版)
これらの気づきを踏まえ、最終版の登壇内容では次の改善を行いました。
- ワークショップを2つに分離
「描き方」と「難易度の高い題材」 - 描き方をStep化
- スライドを必要最小限に
- サンプルを分かりやすいものに置換
登壇後のFeedback
登壇自体は問題なく完了し、参加者からも好意的な感想を頂けました。一方で運営の方からは熱いフィードバックを頂戴しました。
- サンプルに不要な情報があり、思考の邪魔になる(先のStepの内容が含まれていた)
- ワークショップ全体のメッセージを明確にすべき
- 登壇者の主張を入れることが大事(参加者は差分で理解が深まる)
- Set & Conclusion が大事
- 複数のStepを同時に進める方法であったため、置いていかれるグループもあった
LeSS Yoake 2025登壇で得たもの
今回の登壇準備と実践を通して、
- システム思考の理解が深まった
- ワークショップ設計の課題が明確になった
- 次に向けた改善点が見えた
という収穫がありました。
特に大きかったのは、
システム思考で成果を出すためには、因果ループ図を描くことよりも、対話が生まれる“場の設計”が重要である
という気づきです。
描けない場面や詰まる場面こそが対話のきっかけになり、理解の差分や認知のズレが顕在化します。今回の経験を通じて、
図の完成度ではなく、参加者同士のやり取りから気づきが生まれること
がシステム思考の本質だと実感しました。
より良い形にブラッシュアップしたワークショップを、またどこかで提供できればと思います!
さらに学びたい方へ
登壇にあたり、各種リソースを探したのですがその中でも、The Systems Thinkerというサイトが非常に有用なリソースでした。
Introduction to Systems Thinking 導入の資料
Systems Thinking Basics システム思考に関する基本資料
Systems-Archetypes-Basics システム原型に関する資料
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