インドで開催された UiPath DevCon India 2026 に参加してきたのでレポを書いていきます。
今回は「Coded Apps」編です。個人的にこのセッションが今回イチバン刺さったかもしれません。
セッション時間は約 70 分と今回の中でも最長クラス。low-code/no-code が当たり前の UiPath プラットフォームで、「あえてコードで書く」という新アプローチが何を解決するのか——プロダクト概要・設計思想からデモ・ロードマップまでみっちり語られました。
TypeScript や React を触ったことがある方、または RPA・AI 自動化に関わっている方はもちろんのこと、カスタムAppは全然わからないって人には特に刺さる内容でしたので詳しくレポートします!!
目次
- そもそも Coded Apps って何? — プラットフォームの中での立ち位置
- 設計を支える 3 つのコア原則
- 低コードに別れを告げる時か? — low-code vs pro-code の話
- Coded Apps が持つ 6 つのメリットと Skills エコシステム
- アーキテクチャ:TypeScript SDK と UI ウィジェット
- 実際に何が作られているか:3 つのユースケース
- ライブデモがヤバすぎる!! — Claude で 15 分でアプリを作る
- 今後のロードマップ
- まとめ
- おわりに
1. そもそも Coded Apps って何? — プラットフォームの中での立ち位置
セッション冒頭、UiPath プラットフォームの自動化サーフェス全体像から説明がありました。
- RPA/API ワークフロー(決定論的なタスク自動化)
- AI agents(coding agents や外部エージェントのオーケストレーション)
- DO/IHP(ドキュメント処理)
- Maestro/BPMN/Maestro Flow(エンドツーエンドのつなぎ役)
これだけの技術を組み合わせても、まだ欠けているものがある——というのが出発点でした。
「これらの技術はどれも個別タスクの自動化としては優れています。でもビジネスが求めるのはエンドツーエンドの複雑なプロセスオーケストレーションでもあって、そこには必ず人間による検証・介入が発生するんです」
IXP で処理したドキュメントのレビュー、ケース管理のダッシュボード、申請者情報の 360 度ビュー——こうした「人間が使う UI」をどうプラットフォームに組み込むか。
従来は low-code キャンバスがそのギャップを埋めてきましたが、今こそコードによるネイティブな UX 構築を可能にする時だ、というのが Coded Apps の出発点です。
スライドだと一番上の Modern, Agent-Native User Experience のレイヤーに、CODED APPS と PRO CODE という赤枠が新規追加されているのがわかります。これが今回の主役!!
2. 設計を支える 3 つのコア原則
Coded Apps の設計思想は 3 つの原則で整理されています。スライドのキャッチコピーは「One platform. Two ways to build.」。
原則 1:Same Backbone(同一バックボーン)
Coded App を UiPath エコシステムに公開すると、プラットフォームレベルで設定済みの認証・SSO、Data Fabric API、Orchestrator API、Action Center API、ガバナンスポリシー、IP 制限、ネットワークポリシー、監査ログをすべて自動継承します。
「企業はこれまで、エコシステム外で作られたシャドー IT(野良アプリ)に悩まされてきました。外部デプロイされたアプリはセキュリティやガバナンスの観点で『運用上の大きなリスク(頭痛の種)』になりがちですが、Coded Apps はプラットフォームの境界内で動くため、その心配が一切ありません」
ガバナンスをゼロから実装しなくていいってのは、企業システムにとって相当でかいメリット。
原則 2:Code, not canvas(コードファースト)
TypeScript・React・npm・Git・CI/CD、そして VS Code・Cursor などの IDE、Claude・Codex・Cursor などの AI agents——開発者がすでに使い慣れたツールスタックをそのまま使います。ビジュアルキャンバスは使いません。
「コードで構築できるアプリの複雑さは無限大です」
そうそうこれだよこれ!!
実際の業務要件はローコードAppsだと叶えられないこと多いからね。
原則 3:Same lifecycle(共通ライフサイクル)
Coded App は他のアーティファクト(RPA ワークフロー、Maestro フローなど)と同じライフサイクルに従います。エコシステムに公開すれば検索可能になり、Maestro・agents・ケース管理・human in the loop サーフェスにネイティブ統合されます。
そして重要なのが、Coded Apps は追加アドオンではなくデフォルトで利用可能という点です。
3. 低コードに別れを告げる時か? — low-code vs pro-code の話
このセッションで最も印象に残ったのが、low-code と pro-code の比較が「5 年前(2019-2020)」と「今(2024-Now、AI + Vibe Coding 時代)」でどう変わったか、という 2 枚のスライドでした。
5 年前:low-code が圧勝だった
5 年前の判断基準だと、pro-code は速度・スキル要件・ガードレールすべてに ❌ がついていて、Best Fit は「Custom apps, specialist teams」(カスタムアプリ、専門チーム)に限定されていました。
「Code was the bottleneck. Low-code removed it.」
スライド下部のメッセージがすべてを物語っていますね。コードを書くこと自体がボトルネックで、それを low-code が解決した——だから明確に low-code が正解だった、というロジック。
今:欠点がすべて ✅ に裏返った
そして次のスライドで状況が一気にひっくり返ります。
「かつて pro-code の弱点だったものが、今ではすべてグリーンのチェックマークに変わっています。いちばん大きな変化は必要スキルです。pro-code アプリを作るのに、もうバックエンド・フロントエンドに精通している必要はありません。意図を言葉で伝えて、エージェントのアウトプットをレビューして、会話をステアリングできれば——それだけで本番デプロイ可能な Coded Apps が作れます」
Skills Required の項目が「JS/フロントエンド必須」から「English + Intent + Review」に変わっているのがエグい!!逆に low-code 側には ⚠️ や ❌ がつき始めて、「Limited, slower to evolve」と評価が下がっているんですよね。
スライド下部のメッセージはこれ:
「AI removed the cost of writing code – not the value of having it.」
(AI はコードを書くコストを取り除いた——だが、コードを持つことの価値は取り除いていない)
いいね、このフレーズ
判断マトリクスはこうなる
結果、推奨される選択肢はこう変わりました:
| シナリオ | 推奨 |
|---|---|
| コードに精通した経験豊富な開発者チーム | Coded Apps |
| コードを始めたばかりで coding agent が使える | Coded Apps(pro-code から始める) |
| 市民開発者・ビジネスユーザー、コードに不慣れ | low-code のまま |
| 組織に Cursor・Claude などの coding agent がない | low-code のまま |
4. Coded Apps が持つ 6 つのメリットと Skills エコシステム
6 つのメリット
スライドで挙げられた 6 つのメリットはこちら:
- Control — UI のレンダリング方法、状態管理、すべてを自分でコントロールできる
- Complexity — low-code では困難だったマルチページアプリ、ロールベースの表示切り替えなど
- Flexibility — 独自の UI ライブラリ、カスタムデータビジュアライゼーション、インタラクティブなパターンを持ち込める
- Customization — 独自ブランディング、テーマ、UX パターンの適用
- Reusability — アプリ間で共有できる再利用可能コンポーネントの作成
- Pro-Dev Lifecycle — versioning・testing・debugging・evaluations、CLI、SDK、Marketplace の skills
Skills — coding agent に渡す「指示セット」
特に 6 番目の「skills」がこの後のデモで重要な役割を果たします。
UiPath Marketplace に公開された skills は、任意の coding agent が読み込める「バンドルされた指示とスクリプトのセット」 で、Coded Apps の構築方法、TypeScript SDK の使い方、デバッグ手順、公開手順までを内包しています。
スライドに並んでいるカタログを見ると、Coded Workflows / RPA Workflows / Maestro Flow / Platform / Coded Agents / Coded Apps / Servo / Project Discovery Agent の 8 カテゴリ。インストールは npm -g install @uipath/cli と uip skills install の 2 コマンドだけ。
Claude Code・Cursor・OpenAI Codex CLI が公式サポート、Windsurf・Cline・Aider・Continue.dev もマークダウン対応 coding agent なら動作。すべて MIT ライセンスのオープンソース(github.com/UiPath/skills)。
あたりまえのオープンソース!
5. アーキテクチャ:TypeScript SDK と UI ウィジェット
技術構成は明快です:
- フロントエンド:TypeScript + React(通常の SPA)
- バックエンド接続:UiPath TypeScript SDK — Maestro BPMN、Maestro Case Management、Agents (UiPath or External)、Orchestrator jobs (RPA)、Data Fabric entities すべてに対応
- 認証:UiPath Auth 内蔵、複数の認証メカニズムをサポート
- 設計:Coding agent accessible — LLM フレンドリーに API を整備
ホスティングは UiPath hosted / 3rd party hosted の両方が可能。ドキュメントは https://uipath.github.io/uipath-typescript/getting-started/#vibe-coding にあります(vibe-coding という URL がイカしてる)。
ボイラープレートを書かなくていい UI コンポーネント
SDK に加えて、オープンソースの UI ウィジェットも公開されています。スライドではコード片付きで 4 つ紹介されていました:
-
<DataTable>— Data Service エンティティの CRUD・diff レビュー・choice sets(ag-Grid ベース) -
<MultiFileUpload>— Orchestrator Storage Bucket へのドラッグ&ドロップ、型・サイズバリデーション込み -
<ValidationStation>— ドキュメント検証コンポーネント、宣言的 props で埋め込み -
<ConversationalAgentChat>— 会話型エージェント用のストリーミングチャット UI(ファイル添付・ツールコール可視化対応)
スライドのキャッチコピーが「Skip the boilerplate, keep the control.」。CDN キャッシュでスケール問題も発生しません。データ自体はすべてバックエンド API からリアルタイム取得です。
6. 実際に何が作られているか:3 つのユースケース
ここからは登壇者が交代して、顧客が実際に構築しているアプリの紹介に移りました。大きく 3 種類に分類されます。
ユースケース 1:Action Center タスクアプリ
human in the loop シナリオで、承認・却下などのアクションを取るための UI です。
デモで出てきたのは「Loan Underwriting」のレビュー画面。Priya Sharma さんの $100K ローン申請、FICO 650 のサブプライムケースを、Profile / Application File / Credit Report の 3 タブで切り替えながらレビューします。APPROVE / REJECT ボタンが常に画面右下にあり、コンテキスト切替なしで判断できるのが強み。
「カスタマイズされた UI に必要な情報がすべて集約されているので、割り当てられたタスクに対してそのまま承認・却下の判断を下せます」
これは楽になる!!
ユースケース 2:プロセスアプリ(ダッシュボード)
自動化パフォーマンスの KPI メトリクス、360 度ビューを提供するダッシュボードです。
ライブで紹介されたのは「SNAP Benefits Applications Dashboard」(米国の食料支援プログラム申請のダッシュボード)。Adrian Cole さんの申請ケースを開くと、Applicant Details・AI Agent Review・Verification 状況が左ペインに集約され、右ペインには Claims Assistant の会話型 AI が常駐しています。
このチャット欄、起動した瞬間に 「Adrian Cole さんの SNAP 給付申請」というコンテキストが自動伝達されていて 、ユーザーが申請者名を改めて指定する必要が一切ない。AI が自動で Claim Summary・Next Steps をマークダウンで返してくれます。これが Vibe Coding で作れるってすごくないですか?!
「PDF は Orchestrator のストレージバケットから、コメントは Data Fabric から取得しています。AWS S3 や EC2 にも普通に接続できる」と説明があり、要は 「普通の Web アプリケーション」 だという話なんですよね。
ユースケース 3:会話型エージェントアシスタンス
ユースケース 2 のアプリ内 Ask AI ボタンがまさにこれ。UiPath 会話型エージェントとアプリ UI コンテキストがネイティブに繋がっています。
また、コーディング経験ゼロの CNC メンバーが構築したモバイルアプリも紹介されていました。フィールドエージェントが自動化トリガーや会話型エージェントへの質問をモバイルから実行できる仕組みで、Coded App は「普通の Web ページ」なのでモバイルブラウザでもそのまま動きます。UiPath 認証を通じて、そのユーザーがアクセスできるプロセスだけ表示される設計なのも安心!!
7. ライブデモがヤバすぎる!! — Claude で 15 分でアプリを作る
セッションのハイライトがライブデモです。
空のフォルダから始まる
まず VS Code を開くと、Demo フォルダの中身は .claude 設定ファイルのみ。コードは 1 行もない、本当に空の状態からスタートします。Claude Code v2.1.142、モデルは Opus 4.7(1M context)。
Skills のセットアップ
# UiPath CLI のインストール
npm -g install @uipath/cli
# Skills のインストール(使用する coding agent を選択)
uip skills install
/skills コマンドで利用可能な skills の一覧が表示されます。スクリーンには 12 個の Skill がロード済み:
-
frontend-design— 美しい UI を作るための設計指示 -
uipath:uipath-coded-apps/case-management/agents/maestro-flow/platform/rpa/servo -
uipath:uipath-diagnostics/feedback/human-in-the-loop/planner
各 Skill は 60〜90 トークン程度、必要なときだけ Claude が自動ロードします。
プロンプトだけでアプリが生成される!!
入力したプロンプトはほぼこれだけ:
「ケース管理の上に Coded App を構築して。ローン組織のケースがあります。Outlook のようなレイアウトに合わせるために 3070 の画面幅にしてほしい。テナントは [URL]」
Claude(auto モード)は:
- Coded App 構築に必要な skills を読み込む
- プロンプトの URL から組織・テナント・ステージング環境を自動判別
- 必要なスコープを自動特定
- React + TypeScript のプロジェクト構造を生成
- TypeScript SDK から適切なライブラリを取得
- 認証コードをデフォルトで追加
約 17〜18k トークンで、Outlook ライクなレイアウト(左ペインにケース一覧、右ペインに詳細)のアプリが完成しました。
「このコードは人間が書いたものではありません。Coding Agent が自力で判断し、デフォルトで認証機能まで組み込んでくれています。開発者が明示的に何かを設定する必要は一切ないのです」
この一言、会場でも笑いと驚きが混ざったような反応が起きていました。わかる!!
デバッグも自動!!
デモ中にデータが表示されないエラーが発生しましたが、「アプリは実行されているが情報が表示されない」と Claude に伝えるだけで自動修正。原因はケース名の不一致(loan origination と loan origination case)で、正しい名前を特定して修正してくれました。ライブデモでエラーが出るのはドキドキしますが、そのまま修正まで見せてもらえるのは逆にリアルで良かったです。
修正後、画面左ペインに 33 件の Loan origination case-* がずらりと並び、Outlook そっくりのレイアウトで動き始めました。
デプロイもプロンプト一発!!
ローカルで動くのを確認したら、続けてこんなプロンプト:
「すべて準備できた。
demoフォルダにアプリをデプロイして。アプリ名はdevconlivedemo」
Claude は:
- UiPath CLI で認証(
uip login) - nupkg パッケージとしてバンドル(
uip codedapp pack) - Orchestrator へ publish(
uip codedapp publish) - フォルダ名でデプロイ試行 → エラーになるが、自力で
uip orchestrator folders listを実行してフォルダ ID を自動取得 - ID を使って deploy 成功
ローカルで見たものと同じアプリが、組織固有のドメインでライブホストされました。空のフォルダから約 10〜15 分で完全動作するアプリを組織全体に公開できましたよ!!
Data Fabric との統合も即座に
時間の都合でライブではなく事前に構築されたアプリのデモになりましたが、既存アプリに「Data Fabric の loan origination エンティティからデータを取得してチャート表示タブを追加して」とプロンプトするだけで、チャートタブが追加されていました。
8. 今後のロードマップ
現在利用可能なもの(Available today)
スライドにそのまま箇条書きされていたものを書き出します:
- Manage Maestro processes & cases
- Execute and monitor process & case instances
- Create and manage HITL (Human in the Loop) tasks
- Operate on Data Fabric entities
- Start and manage Orchestrator jobs, RPA Workflows, API Workflows
- Manage Orchestrator storage buckets and assets
- Conversational agents chat
- Hosting support on UiPath Apps
近日公開予定(Coming soon 26.6+)
- SDK APIs for Insights(レポート用)
- Agents feedback loop
- SDK support for Integration Service connectors(Snowflake などサードパーティ接続)
- パブリックアプリサポート(外部ユーザーがログインなしでアクセス可能、操作範囲は細かく制御)
9. まとめ
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| 位置づけ | UiPath プラットフォームの UI ギャップを埋める pro-code アプローチ。追加アドオンなし、デフォルト利用可能 |
| コア原則 | Same backbone(認証/SSO/ガバナンス/監査を自動継承)/ Code, not canvas / Same lifecycle |
| 技術スタック | TypeScript + React + npm + Git。VS Code・Cursor など好みの IDE と Claude・Codex などの coding agents |
| SDK | TypeScript SDK で Maestro・Orchestrator・Data Fabric・Action Center など全 API に対応。LLM フレンドリーな設計 |
| Skills | UiPath Marketplace に公開、8 カテゴリ。任意の coding agent が読み込める指示セット。MIT ライセンスのオープンソース |
| 判断基準の変化 | coding agents の台頭で、コーディングスキルなしでも pro-code から始めることを推奨 |
| ユースケース | Action Center タスクアプリ・プロセスダッシュボード・会話型エージェント統合の 3 類型 |
| コスト | アプリ作成・ホスティングは $0。既存の UiPath ライセンスと自動化コストのみ |
| 近日公開 | Integration Service(Snowflake 等)、パブリックアプリ(外部ユーザー対応)、Insights 統合 |
10. おわりに
「キャンバスではなくコード」というメッセージは、RPA プラットフォームの文脈では一見すると逆説的に聞こえます。でもセッション全体を通して見えてきたのは、これは単なるモード追加じゃなくて、coding agents の台頭を前提とした設計思想の転換だということ。
「5 年前と今でスライドがほぼ逆転した」という説明には実感がありました。プロンプトと英語の意図だけで動くアプリを 15 分で作り、組織ドメインにデプロイするデモは、その転換を象徴していますね。
「ガバナンス・セキュリティはどうなるの?」という問いに対し、「プラットフォームレベルで設定したものをすべて継承する、バイパスできない」という設計——これは説得力あります。シャドー IT の問題を意識した設計思想、日本企業にもめちゃくちゃ響くはずです。
個人的には TypeScript SDK のエージェントフレンドリー設計と、オープンソース skills のエコシステムが今後どう広がるかに注目しています。Data Fabric や Integration Service との組み合わせが充実すれば、UiPath を「業務データの統合レイヤー」として使うパターンも十分現実的になってくるのではないでしょうか。
というわけで、みんな Coded Apps 触ろう!!
















