SIerのプロジェクト運営を疑似体験できる研修用ボードゲームをAIと作ってみた
はじめに
新人研修や若手研修で、こんなことを感じたことはないでしょうか。
- 「要件定義を疎かにすると後で痛い目にあう」と説明しても、いまいちピンときていない
- 「なぜ結合試験が必要なのか」を、工程表の説明だけで納得してもらうのは難しい
- 座学やケーススタディだけだと、どうしても「聞いたことがある知識」で終わってしまう
プロジェクトマネジメントの勘所は、実際に自分で意思決定をしてみないと、なかなか実感として身につきません。かといって、新人にいきなり実案件のかじ取りを任せるわけにもいきません。
そこで、「システム構築案件の受注から納品までを、自分の判断で運営してみる」体験ができるボードゲームを作ってみることにしました。工程の流れ、要員の配置、人材育成の判断——プロジェクトマネジメントに必要な考え方を、盤面の上で一通り体験できるようにする、という狙いです。
※本記事の内容は個人の見解であり、所属組織の公式見解ではありません。
どんなゲームか
タイトルは仮で「PROJECT BUILDERS」としています。プレイヤーはIT企業の部門責任者となり、システム構築案件を受注し、人材を確保・育成しながらプロジェクトを運営していく、ワーカープレイスメント系のボードゲームです。
案件を受注する、必要な人を集める、現場に配置する、納品する——この一連の流れを、実際のシステム開発の工程(要件定義・設計・開発・テスト)にできるだけ忠実な形でゲームに落とし込んでいます。
中でも地味にこだわったのが、案件ボードの構造です。よくある「進捗が0%→100%に伸びていくバー」ではなく、V字モデルをそのまま盤面にするという作り方をしています。
提案
□
(営業またはPM)
要件定義 受入試験
□
(SE以上)
設計 結合試験
□
(SE以上)
開発 単体試験
□
(PG以上)
「□」は進捗マスではなく、人を置く席です。要件定義を担当した人が、そのまま受入試験も担当する。設計をした人が、そのまま結合試験も担当する。この「V字の左右を同じ人が受け持つ」という当たり前のようで説明しづらい構造を、盤面を見るだけで直感的に理解できるようにしています。
小さな案件をコツコツこなす堅実な会社にするか、大きな案件に人を集中させて一発逆転を狙うか。人を育てるか、即戦力を雇うか、派遣で凌ぐか。そういった、実際のプロジェクト運営で誰もが直面する意思決定を、盤面の上で体験できるようにしています。
AIと一緒に作った
今回、企画からルール設計まで、ほぼ全工程をAI(Copilot / Claude)と対話しながら進めました。
「こういう学びを得られるようにしたい」「このルールだと狙いとズレそうだが、どう思うか」といった相談を投げると、たたき台を返してくれる。それに対してこちらが「もっとこうしたい」と返す。これを何十往復も繰り返しながら、ルールを1つずつ固めていきました。一人で盤面とにらめっこして考えるより、圧倒的に速いペースで試行錯誤できたのが実感です。
特に面白かったのは、「このルールで本当に狙った学びが得られるか」をAIに実際にシミュレーションさせて検証したことです。頭の中で「これでうまくいくはず」と思っていたルールが、数値で検証してみると全然うまくいかない、ということが何度もありました。
「大きな案件に挑戦する意味を持たせたかったのに、シミュレーション上では誰も手を出さない」「要員が足りない状況を、なあなあで済ませられてしまう」——机上で考えているだけでは気づけなかった落とし穴を、AIと一緒に数を回して検証することで、次々とあぶり出すことができました。このあたりの詳しい話は、また別の機会に書きたいと思います。
ルールブックを公開します
現時点のルールブック(Ver 0.15・PDF)を、Googleドライブで公開しています。
利用条件は次のとおりです。
- 研修・教育を目的とする非営利の利用は自由です。
- 有償の研修・サービスでの利用、内容の改変、再配布は、事前にご相談ください。
© 2026 長谷川律幸
今後の展望
現時点ではまだ設計段階で、実際に人が集まってプレイしたことは一度もありません。次のステップとして、実際に新人・若手を交えたテストプレイを行い、
- 説明込みでどれくらいの時間がかかるか
- 要員配置や契約・育成の判断が、プロジェクトマネジメントの学びとしてちゃんと伝わるか
- ゲームとしての面白さと、研修としての学びのバランスが取れているか
といったことを確かめていく予定です。実際に遊んでみての気づきは、また記事にまとめたいと思います。
もし「うちの部署でも試してみたい」「研修ネタとして興味がある」という方がいれば、ぜひ声をかけてください。