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聞こえない立場で経験したアジャイル開発の記事を書きます(後編)

Last updated at Posted at 2025-12-03

そんなこんなで、ここからは「おっさんが実際にアジャイル開発現場に入ってどうだったのか」という話をしていきます。

前編はこちら

結論から言うと、アジャイルは「良い面も悪い面も、とにかく【スピード】に乗るかどうかが勝負」みたいなことをみんなが思っていました。

■ 転職先はアジャイル開発が【主】。そして顧客は口を揃えてこう言うのだ。

転職した先の会社では、
「うちはアジャイルでやってます」
「アジャイルが今の主流なんですよ」
という言葉が常に聞こえていました(おっさんは聞こえんけど空気で分かる)。

さらに顧客側も、

「最近はアジャイルが流行りだから」
「スピード感ある開発がいいんですよ」

と、軽いノリでアジャイルを求めてくるんですね。

でも、ここでおっさんは思ったんです。

「いや、そこ理解して言ってる?」

アジャイルって【流行りだからやるもの】ではないんです。
やり方と文化と目的がセットで初めて成立するものなのに、「アジャイル=速く作れる」くらいの感覚で導入されると、だいたい現場が荒れます

そして案の定、荒れました。(そらそうだよ)

■ アジャイルをきちんと理解しないとこうなる(例を2つ)

これはおっさんの会社でのことについてです。
他の会社ではちゃんとやってるところも多いだろうなー。

(例1)仕様が“毎日変わる”のを「アジャイルだからOK」と勘違いする

アジャイルは「変化に対応する」のが強みです。
でも、

「昨日言ってた仕様?あれ、やっぱやめた」
「今日の打ち合わせでこの機能の優先度変えました」

こういうのが毎日起きると、ただの無計画開発です。

これはアジャイルではなく、
ただ計画が無いだけ。

本来は、スプリント(期間)内のタスクは固定し、その中で改善していくはずなのに、スプリント自体が毎日グネグネしていると、開発者は地獄

おっさんも 「優先度がコロコロ変わる宇宙」 に放り込まれ、正直ついていけなかった。

(例2)「会話中心=ドキュメント不要」と勘違いしてカオスが生まれる

アジャイルは
「会話で進める」「ドキュメントを最小限にする」
という考えがあります。

でもこれ、誤読されがちなワーストNo.1。

「議事録?不要でしょ」
「設計書?そんなのいらんいらん」
「口頭で伝えたからOK」
と、すべての情報が(空気)で消えていく。

結果、
・誰も仕様を正しく覚えていない
・誰も決定した内容を把握していない
・顧客すら「言った/言ってない」で揉める

こういう音声文化の暴走が起きる。

聞こえる人同士でさえ情報が乱れるのに、
聞こえないおっさんは当然、もっと混乱します。

ちなみに!!
「アジャイル開発ではドキュメントを最小限にする」なんて言われてますが、違うよ!!
【価値のあるドキュメントに絞る】
【ドキュメント作成を目的にしない】
ってだけだからね!

■ おっさんは耳が聴こえないので、こういうところに困った(例を3つ)

ここからは、聞こえない立場ならではの【困った話】を正直に書きます。

(困った例1)会話の速さについていけず、気づいたら仕様が決まっている

アジャイルの会議はとにかく速い。

・1つの議題に30秒〜1分
・次の議題へ即移動
・冗談を挟みつつ温度感で決める
・最後に「あ、じゃあこれで決まりねー」

この「それで決まりねー」の瞬間、おっさんはまだ1つ前の議題を読んでる。

情報が走り抜けていくのだ。

ただこれはおっさんの会社でのことなので、他のところではちゃんとしてる会社もあるだろうなー(2回目)

デイリースクラムの場合は15分が平均なので、それを考えると1つの議題に1分はあながち間違いでもないだろうが…

(困った例2)「空気で理解してね」が通用する文化

アジャイルでは「チームの空気」「雰囲気」「声色」が判断材料になることがあります。

・本音と建前
・誰が反対しているか
・誰が納得していないか
・声の強さ弱さ
こういう音声のニュアンスが判断に影響している。

しかし、おっさんにはその空気のログが取れません。

結果、
「あれ?なんでこの方針になったの?」
ということが本当に多い。

(困った例3)「みんなの発言が同時進行」になると完全に詰む

・複数人が同時に喋る
・途中で誰かが割り込む
・さらに誰かが笑いながら別の案を出す

会社の文字起こしでは、同時並行の流れをすべて追うことは不可能。

アジャイルは議論の熱量が高いぶん、
会議がラジオの早口合戦みたいになることもしばしば。

おっさん、普通に置いていかれます。ポカーンです。

■ 聴こえない人がアジャイル開発をするために何に気を付ければ良いか

困った話だけで終わると暗いので、最後は未来の話をします。

おっさんなりに考える「聴こえない人がアジャイル開発に参加するために必要なこと」をまとめました。
ちなみに、これは会社内でも普及させて今は何とか出来ています。

(1)情報を必ず“残す文化”を作る

アジャイルは“会話中心”だけど、
聴こえない人には
「決定事項は必ず文字で残す」
がないと致命的。

・議事録
・タスクボード
・スプリントバックログ
・決定メモ

これが揃うだけで参加率が段違いに上がる。

(2)「会議のスピードを落とす」という配慮は必要

アジャイルでもスピードが落ちるわけではなく、
「情報の共有のスピード」を整えるだけ。

・発言の順番を明確にする
・話す人を一人にする
・重要部分はチャットにも書く
こういうちょっとした工夫で全く違う世界になる。

おっさんの場合は、今は音声ではなく全て文字でやってもらっています。
チームメンバーとも話をし、全員文字でやるようにお願いしています。
その結果、例えば笑うシーンの時は「笑」のリアクションボタン(TeamsやSlackで会話の時に使うアレです)を使ったりするので話の内容、雰囲気が掴みやすくなりました。

また、会話もみんなにチャットでしてもらうということは、タイピングが速い人遅い人が出てくるので、それを考慮して話し合いの時間も長く取ってもらいました。

自分のタイピングが遅い人は時間が長くなることについて何も文句言ってこないですからね笑
このくらい強気でいけばいいわけです。

(3)聴こえない側も“自分の理解方法”を明確に伝える

企業に求めるだけでなく、
自分も情報伝達の仕方をはっきりさせることが大事。

・字幕が必要
・手話通訳が必要
・チャット併用が必要
・議事録が必須
など、最初に整理して伝えることが重要。

これができれば、スムーズに開発に入れる。
おっさんは数か月、音声中心の会議で呆然としていたのですが、これではいけない!と思い、チームメンバーを招集して色々と話し合い、文字で会議をしてもらうことに落ち着きました。
大変助かっています。

(4)アジャイルの本質は「個人よりチーム」

アジャイルの核心は
「チームが一緒に価値を届けること」
です。

音声でのスピードに合わせられないから参加できない、ではなく、
チームが合わせればいいだけの話。

おっさんは思います。

聞こえる聞こえないに関係なく、
アジャイルはチームの成熟が試される開発手法なのだと。

だから強気でいったらよろしい。
音声中心でないとダメだ?そんなことはありません。
むしろ音声中心だとログの取りこぼし、言った言わないの喧嘩などもあるじゃないですか!
顧客とも揉めるし・・・もういやはや・・・ですよ。

おっさんは声を大にして言いたい!

「文字でやる・文字で残すということは、自分自身を守ることにもつながる!」

だから「聞こえないからアジャイル開発は無理なんだ」と思わないで堂々としていこう!

■ まとめ:アジャイルは「聞こえない人に向かない」のではなく、「聞こえる前提で進むと地獄」になるだけ

アジャイル開発は、聞こえないおっさんにとって
良いところも悪いところもある開発手法です。

でも、
聞こえないことがアジャイルを難しくしているのではなく、
【アジャイルを誤解したまま進めるチーム文化】
【音声中心】
が難しさを生んでいるだけ。

・情報が残る
・スピードが調整される
・視覚的な共有が増える
これだけで、聞こえない人でも十分に活躍できます。

アジャイルが聴こえる人専用の手法だと思っている現場は、
まだアジャイルの成熟度が足りないだけ
です。

聞こえないおっさんとしては、
「アジャイルは、聞こえない人も参加できるし、むしろ強みを出せる場所でもある」
と最後に言っておきたい。

そして本音を言うと、ウォーターフォール時代は良かったなぁ‥‥と思うわけです笑
だって落ち着いて会議できるし、じっくり顧客とも話し合って意見を拾って上に持って行って相談とかもできるわけですからね。
早く早くと急かされて焦ることもない。
何故アジャイル開発なんてものが生まれたんだよ!と思うのが本音です笑

でも、慣れるのが大事なので、おっさん頑張りますよ。

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