はじめまして、りょーつといいます。高専出身の博士課程1年生です。研究の専門は力学や機構学ですが,Qiitaでは主に制御工学や数学に関する記事を書いています。今週は,高専に通っていた頃にお世話になった数学の先生から教わった,$n$次元球の話をまとめてみようと思います.
目次
1.はじめに
2.N次元球の体積の漸化式
3.N次元球の体積の一般解
4.おわりに
1. はじめに
今回はN次元球の体積を計算してみたいと思います.N次元$(N > 3)$の球は図で可視化することはできませんが,円や球の方程式を高次元に拡張したものとして,以下のベクトル方程式で表現できます.
|| \boldsymbol{x} ||
=
r,
\ \ \ \
\boldsymbol{x} \in \mathbb{R}^N
\tag{1}
なお,$r$はN次元球の半径を意味しています.この可視化できないものの体積をどのように定義するのか,というのが今週の記事の主なテーマとなります.
さわりの部分は以前の記事で解説したのでそちらをご覧ください.今回は上記の記事で得られた以下の漸化式を解いていきます.
V_n
=
2r V_{n-1}
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^n \theta \ d\theta
\tag{2}
なお,$V_n$はN次元球の体積,$r$は球の半径を表しています.導出過程は前回の記事を参照ください.
本稿では(2)式を解くことをメインとします.
2. N次元球の体積の漸化式
本稿でやることはいたってシンプルです.ウォリス積分を活用して,(2)式の一般解をもとめることになります.ウォリス積分の結果より,
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^n \theta \ d\theta
=
\begin{cases}
\frac{(n-1)!!}{n!!} \frac{\pi}{2} & (n = 2k) \\
\frac{(n-1)!!}{n!!} & n = (2k + 1) \\
\end{cases}
\tag{3}
であることは既知とします.
(2)式の添え字を1つデクリメントすると,
V_{n-1}
=
2r V_{n-2}
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^{n-1} \theta \ d\theta
\tag{4}
がえられます.(2)式に(3)式を代入して整理すると以下のようになりますね.
V_{n}
=
2r
\bigg\{
2r
V_{n-2}
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^{n-1} \theta \ d\theta
\bigg \}
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^n \theta \ d\theta
=
4r^2 V_{n-2}
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^{n-1} \theta \ d\theta
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^n \theta \ d\theta
\tag{5}
ここで面白いことに,(5)式に出てくる2種類のウォリス積分が相殺しあいます.
具体的には以下のような形式です.$n$が偶数の時$n-1$が奇数,$n$が奇数の時,$n-1$が偶数になることに注意しましょう.
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^{n-1} \theta \ d\theta
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^n \theta \ d\theta
=
\begin{cases}
\frac{(n-1)!!}{n!!} \frac{\pi}{2}
\cdot
\frac{(n-2)!!}{(n-1)!!}
& (n = 2k) \\
\frac{(n-1)!!}{n!!}
\cdot
\frac{(n-2)!!}{(n-1)!!} \frac{\pi}{2}
& n = (2k + 1) \\
\end{cases}
\tag{6}
右辺に注目すると,場合分けしたとしても,結局$\pi/2$が1回ずつ登場して結果が同じになることが分かります.また,階乗を約分することができるので,以下のように簡略化できます.
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^{n-1} \theta \ d\theta
\int_0^\frac{\pi}{2}
\mathrm{cos}^n \theta \ d\theta
=
\frac{(n-1)!!}{n!!}
\frac{(n-2)!!}{(n-1)!!} \frac{\pi}{2}
=
\frac{\pi}{2n}
\tag{7}
この結果を(5)式に代入してみましょう.すると以下の結果が得られるはずです.
V_n
=
\frac{2 \pi r^2}{n} V_{n-2}
\tag{8}
これにより,N次元球の体積を求める漸化式が得られました.
3. N次元球の体積の一般解
今回は雑に(8)式の一般解を導出します.まずは傾向を見るために(8)式を少し展開してみましょう.1段飛ばしの漸化式になっているので,まずは$n$が偶数で,$n = 2k$の場合について考えてみましょう.(8)式は以下のように表されます.
V_{2k}
=
\frac{2 \pi r^2}{2k} V_{2(k-1)}
=
\frac{\pi r^2}{k} V_{2(k-1)}
\tag{9}
(9)式を展開します.
V_{2(k-1)}
=
\frac{\pi r^2}{k-1} V_{2(k-2)}
\tag{10}
V_{2(k-2)}
=
\frac{\pi r^2}{k-2} V_{2(k-3)}
\tag{11}
\vdots
V_{4}
=
\frac{\pi r^2}{2} V_{2}
\tag{12}
なお,$V_2$はいわゆる円の面積であり,以下の式で表されます.
V_{2}
=
\pi r^2
\tag{13}
円の面積を2次元球の体積$V_2$とみなすことについてはこちらの記事にまとめてあります.
(9)~(13)式を1つにまとめると,$n = 2k$のときは以下のように体積$V_n$が求まります.
V_{2k}
=
\frac{\pi r^2}{k}
\frac{\pi r^2}{k-1}
\frac{\pi r^2}{k-2}
\cdots
\frac{\pi r^2}{3}
\frac{\pi r^2}{2}
\cdot
\pi r^2
=
\frac{\pi^k}{k!}r^{2k}
\tag{14}
では$n = 2k - 1の$場合についても解説したいのですが,そのためにはガンマ関数$\Gamma(m)$の知識が必要になってきます.長くなってしまいそうなので奇数の場合も含めた一般解は次回の記事で示そうと思います.
4. おわりに
今週の記事では$n = 2k$(偶数)の場合におけるN次元球の体積を計算しました.来週は$n=2k-1$の場合を含むより一般的な解について説明しようと思います.
今週も最後まで読んでいただき,ありがとうございました!