また新しい略語かよ...
前回の記事を読んで、なんとなくAIO/LLMOの概念は理解できた。でも調べれば調べるほど、新しい略語が出てくる。
SEO、AIO、LLMO、GEO、GAIO、AEO...
もうやめてくれ。
わかる。本当にわかる。IT業界の人たちは略語を作るのが好きすぎる。でも、安心してほしい。実は、これらの多くは「ほぼ同じことを指している」。
この記事では、混乱しがちな用語を整理して、「結局何がどう違うのか」をクリアにしていく。
まずは大前提:SEOとは何だったのか
すべての出発点はここ。SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)。
これは、Googleなどの検索エンジンで上位表示されるための施策。キーワードを適切に使い、質の高いコンテンツを作り、他サイトからリンクを集める。検索結果の1ページ目、できれば上位3つに入ることが目標。
例えるなら、高速道路の看板広告みたいなもの。
たくさんの車(=ユーザー)が通る場所に、目立つ看板を出す。看板を見た人が、出口で降りてあなたの店に来てくれる。看板の位置が良ければ良いほど(=検索順位が高いほど)、お客さんが来る。
シンプルだよね。
でも、AIの登場で状況が変わった。
AI時代の変化:検索しなくなる人々
若い世代を中心に、検索エンジンを使わない人が増えている。
「東京でおすすめの居酒屋は?」とChatGPTに聞く。
「最新のマーケティングトレンドは?」とPerplexityに聞く。
「うちの会社に合うCRMツールは?」とClaudeに聞く。
AIが直接答えてくれるから、わざわざGoogle検索して複数のサイトを見比べる必要がない。
つまり、高速道路を通らず、直接AIという「コンシェルジュ」に聞く時代になった。
あなたの看板がどんなに立派でも、高速道路を通る人が減れば、意味がない。
AIO:一番広い概念
AIO(AI Optimization)は、文字通り「AI全般を使った最適化」。
これは非常に広い概念で、以下すべてを含む:
- AIチャットボットによる顧客対応
- AIによるWebサイトのパーソナライゼーション
- AIを使った広告運用の最適化
- AIによるコンテンツ生成
- そして、AIに自社情報を引用してもらう施策(←これがLLMO)
料理で例えるなら、AIOは「レストラン全体の経営改善」。厨房の効率化も、接客の改善も、メニュー開発も、広告戦略も、ぜんぶ含まれる。
ただし、実際には「狭い意味でのAIO」として、LLMOとほぼ同じ意味で使われることも多い。文脈で判断するしかない。
LLMO:今一番ホットな概念
LLMO(Large Language Model Optimization)は、「大規模言語モデルへの最適化」。
具体的には:
- ChatGPT
- Google Gemini
- Anthropic Claude
- Perplexity
こうした「会話できるAI」が回答を生成するとき、あなたの会社の情報を引用・参照してもらうための施策。
例えるなら、雑誌記者に取材してもらう活動に近い。
記者(=AI)があなたの会社について記事を書くとき、「このブランドは信頼できる」「この情報は正確だ」と思ってもらえるように、情報を整理し、提供する。
SEOが「自分で看板を立てる」施策だとしたら、LLMOは「メディアに取り上げてもらう」施策。
GEO:LLMOとほぼ同じ
GEO(Generative Engine Optimization)は、「生成AIエンジンへの最適化」。
これはLLMOとほぼ同じ意味。なぜ別の言葉があるかというと、研究者やコンサル会社がそれぞれ独自に名付けたから。
実務上は、「LLMOとGEOは同じもの」と考えて問題ない。どちらの用語を使っても、「AIに引用されやすくする施策」を指している。
例えるなら、「宅配便」と「宅配サービス」みたいなもの。呼び方が違うだけで、やってることは同じ。
その他の派生用語
混乱を避けるため、簡単に触れておく:
GAIO(Generative AI Optimization) = 生成AI全般への最適化。LLMOよりやや広い概念だが、実質ほぼ同じ。
AEO(AI Experience Optimization) = AIを使った「顧客体験」の最適化。LLMOよりも、ユーザー体験全体にフォーカスした概念。
AI SEO = SEOとLLMOを統合した施策全体を指す呼び方。
正直、これらの細かい違いを覚える必要はない。重要なのは、「AIに自社情報を正しく理解してもらい、引用してもらう」という本質を理解すること。
SEOとLLMOの決定的な違い
ここが一番大事。比較してみよう:
SEO(検索エンジン最適化)の場合
- 対象: 検索エンジン(Google等)
- 目標: 検索結果で上位表示されること
- ユーザー行動: 検索→クリック→閲覧
- 成果指標: 検索順位、クリック率
- 順位の意味: 1位が圧倒的に有利
LLMO(大規模言語モデル最適化)の場合
- 対象: 大規模言語モデル(ChatGPT等)
- 目標: AIの回答に引用されること
- ユーザー行動: AIに質問→直接回答を得る
- 成果指標: AI引用回数、言及率
- 順位の意味: 順位に関係なく引用される可能性あり
特に注目すべきは、最後の「順位」の違い。
SEOでは、検索順位が10位だったら、ほとんど誰も見てくれない。でもLLMOでは、検索順位が50位のサイトでも、AIが「この情報は信頼できる」と判断すれば、優先的に引用されることがある。
逆に言えば、検索1位でも、AIが「この情報は不十分だ」と判断すれば、引用されない。
「引用される」とは具体的にどういうこと?
実例を見てみよう。
ケース1:ブランド名の言及
ユーザー:「プロジェクト管理ツールでおすすめは?」
AI:「Asana、Trello、Notionなどが人気です。Asanaは特にチーム協業に強く...」
この場合、Asanaは「引用された」と言える。AIが自社名を挙げ、特徴を説明してくれている。
ケース2:情報源としての引用
ユーザー:「最新のマーケティングトレンドは?」
AI:「2025年のトレンドとしては...(出典:〇〇社のブログ記事)」
この場合、〇〇社のコンテンツが「情報源として引用された」ことになる。
ケース3:引用されない場合
ユーザー:「CRMツールの比較を教えて」
AI:「Salesforce、HubSpot、Zohoなどがあります...」
この場合、あなたの会社のCRMツールが全く言及されなければ、「存在しない」も同然になる。
LLMOはSEOの代わりになるのか?
ならない。
これは重要なポイント。LLMOはSEOの「代わり」ではなく、SEOの「追加」施策。
なぜなら、AIが参照する情報源の多くは、SEO的に評価が高いサイトだから。つまり、SEOで一定の評価を得ていないと、そもそもAIの参照候補にも入らない。
建物で例えるなら:
- SEO = 土台と1階部分
- LLMO = 2階以上の増築部分
土台がしっかりしていないと、上に建物を増やしても意味がない。
だから、「SEOをやめてLLMOに集中する」のではなく、「SEOの上にLLMO施策を積み上げる」というイメージ。
結局、何から始めればいいのか
用語の整理はできた。でも、「で、何をすればいいの?」という疑問が残る。
次の【入門編】で、具体的なアクションプランを解説する。
ここまでで覚えておいてほしいのは:
- SEOとLLMOは別物だが、どちらも必要
- AIO、LLMO、GEOはほぼ同じ意味
- 目標は「AIに引用される」こと
- 検索順位とAI引用は別の評価軸
用語の違いに振り回されず、本質を見よう。