「CUDAがないとAIが動かない」「cuDNNのバージョンが合わない」「cuBLASルーチンでエラーが出た」
ディープラーニングを始めると、こんなエラーメッセージや技術用語に必ず出会う。PyTorchやTensorFlowを動かすだけなら「なんか知らんけど必要なやつ」程度の認識でも困らないかもしれない。でも、いざトラブルが起きると途方に暮れることになる。
このシリーズでは、GPUコンピューティングの世界で避けて通れない「三銃士」について、その正体から関係性、なぜ必要なのかまでを徹底解説する。
シリーズ記事一覧
第1回: CUDAってなんだ?
GPUを「計算機」として解放した革命児。NVIDIAが2007年にリリースした並列コンピューティングプラットフォームの全貌を解説。
こんな人におすすめ:
- GPUプログラミングを始めたい人
- 「CUDAとは何か」を根本から理解したい人
- nvidia-smiやnvccの意味を知りたい人
第2回: cuBLASってなんだ?
1979年生まれのBLAS(線形代数ライブラリ)をGPU向けに最適化したNVIDIAの高速行列演算ライブラリ。なぜ自作せずにライブラリを使うべきなのかも解説。
こんな人におすすめ:
- 行列演算の高速化に興味がある人
- 科学計算でGPUを活用したい人
- 「BLASって何?」という疑問を持っている人
cuBLASってなんだ?―― 行列演算を爆速にする縁の下の力持ち
第3回: cuDNNってなんだ?
ディープラーニング専用の最適化ライブラリ。畳み込み、アテンション、プーリングなどニューラルネットワーク固有の操作を高速化する。cuBLASとの違いも明確に解説。
こんな人におすすめ:
- ディープラーニングの裏側を知りたい人
- PyTorch/TensorFlowのパフォーマンスを最適化したい人
- cuBLASとcuDNNの違いがわからない人
cuDNNってなんだ?―― ディープラーニングを加速するAI専門の塾講師
三者の関係性:30秒でわかる図解
┌─────────────────────────────────────┐
│ アプリケーション(PyTorch、TensorFlow など) │
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↓
┌─────────────────────────────────────┐
│ cuDNN │ ← ディープラーニング専用
└──────────────────┬──────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────────────┐
│ cuBLAS │ ← 汎用線形代数
└──────────────────┬──────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────────────┐
│ CUDA Runtime / Driver │ ← GPU実行環境
└──────────────────┬──────────────────┘
↓
┌─────────────────────────────────────┐
│ NVIDIA GPU │ ← ハードウェア
└─────────────────────────────────────┘
簡単に言えば:
- CUDA = 「OS」のような基盤
- cuBLAS = 「数学の教科書」
- cuDNN = 「AI専門の塾講師」
クイックリファレンス
| 名称 | 正式名称 | リリース年 | 一言でいうと |
|---|---|---|---|
| CUDA | Compute Unified Device Architecture | 2007年 | GPUで汎用計算をするための「土台」 |
| cuBLAS | CUDA Basic Linear Algebra Subprograms | 2007年 | GPU用の高速行列演算ライブラリ |
| cuDNN | CUDA Deep Neural Network library | 2014年 | ディープラーニング専用の最適化ライブラリ |
よくあるトラブルと対処法
バージョン確認コマンド集
# CUDAのバージョン確認
nvcc --version
# GPUの認識確認
nvidia-smi
# PyTorchからCUDAが見えているか確認
python -c "import torch; print(torch.cuda.is_available())"
# cuDNNのバージョン確認
python -c "import torch; print(torch.backends.cudnn.version())"
よくあるエラーと原因
| エラーメッセージ | 主な原因 |
|---|---|
CUBLAS_STATUS_EXECUTION_FAILED |
CUDAとcuBLASのバージョン不整合 |
CUDNN_STATUS_NOT_SUPPORTED |
cuDNNのバージョンが古い/新しすぎる |
invalid device function |
コンパイル時のCUDAアーキテクチャ指定ミス |
詳細なトラブルシューティングは各記事で解説している。
このシリーズを読むと得られること
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エラーへの耐性: 謎のCUDAエラーに遭遇しても、何が起きているか推測できるようになる
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最適化の視点: パフォーマンスを上げるためにどこを見ればいいかわかる
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技術選択の判断力: なぜこれらのライブラリが必要なのか理解し、適切に選択できる
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ドキュメントを読む力: 公式ドキュメントの構造がわかり、必要な情報を探せるようになる
「なんか知らんけど必要なやつ」から「正体を知っている仲間」へ。このアップグレードが、あなたのAI開発を一段上のステージに導いてくれるはずだ。