はじめに
こんにちは!社会人2年目のGUです!
今回はチームに新しく入ってきた新人メンバの教育において、3か月間行った、毎日15分間の振り返りの際の工夫に関してのお話をしたいと思います。
過去の失敗
自分が新人だった頃、言語化スキルが足りずに大きな失敗をしました。考えていることをうまく伝えられず、チーム内での認識のズレが生じたり、意図が正しく伝わらなかったりして、何度もやり直しが発生しました。当時は何が問題なのかすら言葉にできず、ただひたすら苦労していました。
しかし、経験を積む中で、言語化スキルが開発の現場でどれほど重要かを痛感しました。そして、自分と同じような苦労を新人にさせたくないという思いが強くなりました。
だからこそ、新人が効率的に言語化スキルを身につけるための仕組みを作り、新人がスムーズにチーム開発に入れるようにしたいと考えました。
なぜ言語化スキルが必要なのか
アジャイル開発では、チーム内で迅速かつ効果的にコミュニケーションを取ることが求められます。特に、日々の相談や報告では、課題や進捗を明確に伝える必要があります。
メンバーの言語化スキルが高いと、以下のようなメリットがあります。
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チーム内の誤解を減らせる:タスクの目的や仕様についての認識を統一できる。
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知識の共有がスムーズ:自分の学びを伝えることで、チーム全体のスキル向上につながる。
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問題解決が早くなる:明確な説明ができることで、適切なフィードバックをもらいやすい。
逆に言語化スキルが不足すると、意思疎通に時間がかかり、開発がスムーズに進まなくなります。
課題
新人は考えを言葉で表現する経験が少なく、言語化スキルが身についていないことが多いです。そのため、
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報告が曖昧で、認識のズレが生じる
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課題を適切に伝えられず、解決に時間がかかる
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チーム内での意思疎通がスムーズにいかない
といった問題が発生しがちです。
そこで、新人が言語化スキルを向上させるための方法を模索しました。
施策
世の中で広く行われているプラクティスや、スキル向上のメカニズムに関する研究を調査した結果、言語化スキルを磨くには質の高い言語化を行う、またそれを繰り返し行っていく必要があるということが分かりました。(メタ認知と意図的練習の理論を参照しました。)
そこで、私はチームの中で慣習的に実施されていた「毎日15分の振り返りの時間」を活用し、工夫をしなg新人の日報へフィードバックを行うことで、新人の言語化スキルを引き出すことにしました。
具体的なアプローチ
以下の三つの具体的な対策を行いました。
- 対策① :論理的でないと思ったことは聞きなおす
- 対策② :行動だけでなく、深掘りし行動の裏にある考えや理由を聞く
- 対策③ :内省と学びの促進を目的とした質問を行う
対策① :論理的でないと思ったことは聞きなおす
進捗の説明を論理的にさせる質問
Q: 計画通りに進んでいる?順調?
A: 順調だと思う。
Q: なんで順調と言える?本当に予定通り進められる?明日は会議があるから、今日より時間が取れないよね?
A: ...(答えられず)
- 上記のように質問をすることで論理的でない回答をしていることを新人メンバに自覚してもらうことができました。
- メンバも聞きなおされることを防ぐため、一回目で論理的な回答になるよう意識するようになりました
- 実際、一回目で納得のいく論理的な回答をおこなってくれるようになったのを実感。
対策② :行動だけでなく、深掘りし行動の裏にある考えや理由を聞く
Q: UT実装を行っていく中で分からないことがあったときはどのように行動していますか?
A: 分からないことはすぐに質問しています
Q: 具体的にはどのような考えで質問していますか?
A: ...ちょっと考えるので待ってください。えっと...相手は、自分がどこまで分かってどこから分からないということが分からないと思います。そのため~
- 上記の質問に回答することを通して、自身の行動の考え方を正しく認識して成長できました。
対策③ :内省と学びの促進を目的とした質問を行う
対策③-1 会議の意義を考えさせ、その活用方法を追及させる質問
「初めてMTGに参加しましたがどのような意義がありましたか?」
「勉強会で学んだことを、どう業務に生かせますか?」
対策③-2 原因を追究させ、次の失敗を防ぐための質問
「指摘を多くもらったとのことですが原因はなんだと思いますか?」
「遅れの原因は何でしたか?」
対策③-1
・ 初めの1、2週間はすぐに回答が出てこなかったが質問時すぐ会議の意義を答えてくれるようになりました。
・ これは活用方法を考えながら会議に参加するようになったという証拠
対策③-2
・新人が課題に対する自己認識を深め、解決方法を自分の言葉で表現できるようになりました。
・振り返りの際に、改善点や次のアクションを明確に伝えられるようになりました。
成果
この取り組みの結果、新人は以下のような成長を見せました。
論理的な思考力の向上
- 進捗報告や課題の説明で、根拠を明確に伝えるようになりました。
- 日々、「論理的な根拠を意識する」という声が新人から聞かれるようになりました。
問題解決能力の向上
- 難しい課題に対して、どのようにアプローチし、解決策を導き出すかを言語化できるようになりました。
自己改善意識の向上
- 自分の課題を言語化し、次にどう活かすかを考える習慣がつきました。
指導における注意点
論理的な回答を求めるといっても、あまりに詰めるような質問をすると、新人のストレスになったり、関係の悪化を引き起こす恐れがあります。そのため以下のことを気を付けました。
- いきなり質問に入るのではなく、適宜「難しいかもしれないけど...」とワンクッション置いた質問をする。
- やわらかいトーンで話す。
まとめ
この取り組みを通じて、新人が言語化スキルを向上させ、チーム開発にスムーズに適応できるようになりました。
また、自分自身も新人に指導する中で、多くの気づきを得ることができました。新人への問いかけを通じて、自分の考えを整理し、より良い質問の仕方を学ぶことができました。
今後もこの方法を継続し、新人が効率的に言語化スキルを身につけられる仕組みを改善していきたいと考えています!
参考文献
- 日本科学教育学会研究会研究報告/13 巻 (1998-1999) 2 号/メタ認知能力を伸ばすhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jsser/13/2/13_KJ00002785373/_article/-char/ja/ , (参照 2025-02-21).
- 教育心理学研究/57 巻 (2009) 2 号/学習方略としての言語化の効果
目標達成モデルの提案—, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/57/2/57_2_237/_article/-char/ja , (参照 2025-02-21).