私の卒論でお世話になった AMD KR260 をお借りできる機会をいただいたので,これを機に KR260 のセットアップ方法を備忘録としてここに残そうと思います.
使用環境
私は以下の環境でセットアップを行いました.
| セットアップ PC | 評価ボード |
|---|---|
| MacBook Pro | AMD KR260 |
目標
KR260 をヘッドレスで運用し,必要最低限の環境を構築する
ISO イメージのダウンロード
KR260 を動かすには専用の ISO イメージが必要となる.以下のサイトから KR260 用の Ubuntu ISO イメージをダウンロードしてください.
2025/11/24 現在では Ubuntu 22.04 版と Ubuntu 24.04 版 をサポートしていますが,
私は Ubuntu 22.04 を使用しました. というのも Ubuntu 24.04 に対応したパッケージは現在開発段階らしいです.
ISO イメージの書き込み
ダウンロードした ISO イメージを KR260 付属の microSD カードに書き込みます.macOS の場合は balenaEtcher などがおすすめです.
書き込んだ SD カードを KR260 の microSD カードスロットに差し込んでください.
書き込みを行うとき,圧縮されたイメージファイルをそもまま SD カードに書き込もうとするとエラーが発生します.そのため圧縮ファイルを解凍してから SD カードに書き込むようにしてください.
USB シリアル経由で KR260 に接続する
初回セットアップで最も直感的にセットアップできる方法として KR260 にキーボードやモニターを接続して GUI セットアップで行うことですが,私はそれが面倒なので USB シリアルを使い KR260 をセットアップしました.方法は次の通りです.
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Mac のターミナル.app を開き,以下のコマンドを実行する.
ls -1 /dev/tty.* -
KR260 と Mac を microUSB ケーブルで接続する.
このときまだ KR260 の電源を入れないでください.KR260 は電源ボタンを持ちません.電源アダプタを指した習慣に起動します.
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もう一度手順1のコマンドを実行するとシリアルポートが増えているのがわかる.
ls -1 /dev/tty.*実行結果
... /dev/tty.usbserial-XFL15BUKQKX10 /dev/tty.usbserial-XFL15BUKQKX11 /dev/tty.usbserial-XFL15BUKQKX12 /dev/tty.usbserial-XFL15BUKQKX13 -
以下のコマンドを実行して 対象のポートに 115200bps で接続します .ここでは末尾が1のポートに接続しましたが,人によっては異なるかもしれません.
screen /dev/tty.usbserial-XFL15BUKQKX11 115200するとターミナルがスクリーンとして機能します.しかし KR260 の電源を入れていないため真っ黒なままです.
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この状態で KR260 の電源アダプタを差し込んで KR260 を起動してください.すると以下のように起動ログが表示され,いづれ
kria login:が表示されます.
これで初回アクセスは完了です.
パスワードの設定
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kria login:と表示されたらubuntuと入力してエンターキーを押します. -
Passwordを表示されたらubuntuと入力してエンターキーを押します. - 以下のようなメッセージが表示されたら
Current password:に初期パスワードubuntuを入力してください.You are required to change your password immediately (administrator enforced). Changing password for ubuntu. Current password: - 初期パスワードを入力したら新規パスワードを入力してください.
New password: - もう一度新規パスワードを設定して初期設定は完了です.
以下のようなプロンプトになれば成功です.
Retype new password:ubuntu@kria:~$
ネットワークへの接続について
KR260 は 4 つの Ethernet インターフェースがありますが,すべてのインターフェースが使えるわけではありません.
以下の PS と書かれているインターフェースのみ Ubuntu 側が利用できます.
- PS(Processing System):ARM コア(CPU)を指す.
- PL(Processing Logic):ZYNQ FPGA を指す.
システムの更新
- 最新の環境にするため以下のコマンドを実行します.
sudo apt update && sudo apt upgrade -y - しばらくすると以下のような画面が表示されますが,デフォルトで選択されている
keep the local version ...を選択してエンターキーを押します.
- またしばらくすると以下のように更新のために再起動する旨の案内が表示されるので OK を押します.
- 次に再起動するサービス一覧が表示されます.特に問題がなければ TAB キーを押して OK を選択してエンターキーを押してシステムを再起動します.
- 再起動が終わり,プロンプトが表示されたら更新完了です.
ubuntu@kria:~$
必要なパッケージのインストール
以下の主要なパッケージをインストールします.
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net-tools :
ifconfigコマンドを使えるようにする - ssh : SSH を有効にする
- neofetch : スペックを確認するときにたまにつかう
- nano : ターミナル内で利用可能なテキストエディタ
- git : Git を使うためのコマンドライン
sudo apt update &&\
sudo apt install -y \
net-tools \
ssh \
neofetch \
nano \
git
次に PL 側から PS を操作するときに使う xlnx-config をインストールします.
sudo snap install xlnx-config --classic --channel=2.x
作業が完了したら一度電源を切ってもう一度起動させることをお勧めします.
Ubuntu 24.04 環境では xlnx-config は対応していない.
現時点(2025/11/24)において xlnx-config は Ubuntu 24.04 に対応していません.
SSH する
- SSH をインストールしたら,KR260 の IP アドレスを以下のコマンドで確認します.
ifconfig - macOS の別のターミナルから SSH してログインできたら成功.
または DNS を使いログインします.
ssh ubuntu@XXX.XXX.XXXssh ubuntu@kria.local
次回は Linux PC に Vivado をインストールする備忘録を紹介します.