本記事は、クラスター Advent Calendar 2025 の12日目の記事です。
前日は、すぎしーさんの「Claude Code での Unity 開発の振り返り (2025年)」でした。クラスター社のtech blogでは最近AI関連の投稿が多いので、そちらも合わせて読むとクラスター社でのAI活用の現在地が分かりそうです。
こんにちは、クラスター株式会社のFUKUDAです。
クラスターでは、clusterのクリエイター向けメディア『Creators Guide』の運営などを担当しています。その辺りは過去の記事で詳しく紹介しているので、興味あれば、ぜひご覧ください。
- Cluster Creators Guide運営四方山話 - Qiita
- 「写経」で(なんとなく)雑に学ぶclusterのスクリプト──Creators Guideベータ版を盛り上げたい! - Qiita
最近はCreators Guideの運営と共にクラスターの教育事業に関わることが多くなりました。
clusterは教育機関での利用を無償化していることもあり、有難いことにclusterを活用している学校も多いです。
その中で、「Unityでのワールド制作について学びたい」という声を多くいただくこともあり、自分が授業をする機会が増えてきました。
「バーチャル空間の制作をしたい人の役に立つ」という意味では、Creators Guideで発信することも授業で教えることも共通点があるので、授業をすることで色々な学びがあります。
(そういえば、かつてやっていた「Cluster Workshop」はまさに授業のような取り組みでした)
ワールド制作は色々なことができる分、どこから始めて良いか分からない面があるのだと思います。そこで今回は、授業をする際に意識している「はじめてUnityでワールド制作をする際に意識しておくと良いこと」を書いてみます。
ワールド制作の魅力は「3Dの創作をすぐに複数人で体験できること」
まず自分自身が授業をするにあたって、clusterのようなソーシャルVRで創作することのメリットについて考えています。
現代では、色々なツールが出てきており、さまざまな形の創作が気軽に挑戦できる環境が整ってきています。3Dの分野でもBlenderのような無料のモデリングツールがあり、条件を満たせばUnityのようなゲームエンジンを無料で利用することができます。
その中で、clusterのようなソーシャルVRを活用するメリットは「3Dの創作をすぐに複数人で体験できること」にあります。
3Dモデルをつくったなら、せっかくなら色々な角度から見て欲しいですよね。なんなら、一緒に見ながらこだわりについて話したいですよね。そうした体験を比較的すぐできるのがソーシャルVRなのです。
3Dの創作において、clusterのようなソーシャルVRを使うメリットをざっくりまとめると以下のような感じです。
-
インタラクティブな3Dコンテンツをつくりやすい
- ファーストパーソン(一人称視点)や体験するためのアバターの設定、UIをつくり込む必要がない。アップロードするだけで、インタラクティブな3Dコンテンツをつくることができる
-
複数人で体験できる
- アップロードするだけで、clusterのワールドであれば最大25人、clusterのイベントであれば最大50人で同時に体験可能
-
マルチデバイス
- アップロードするだけで、スマホ・PC・VR機器(PCVR・Quest単体)からのアクセスが可能
- 違うデバイスの人でも同じ空間に入ることができる
- アップロードするだけで、スマホ・PC・VR機器(PCVR・Quest単体)からのアクセスが可能
他にもメリットとしては、clusterでは日常的にサービスを利用しているユーザーがいるため、3Dコンテンツをアップロードすることでフィードバックをもらいやすい環境であると言えます(宣伝は必要だと思いますが)。
また、clusterのワールド制作はUnityを使用するためUnityの知識を活用することができます。もちろん、Blenderで制作した3Dモデルを活用することもできます。
いわゆる「メタバース」という視点ではなく「3Dコンテンツをつくるプラットフォーム」として考えると、clusterでは、制作におけるメリットが多くあります。
(そもそも3Dの創作がどういう風なメリットを持つのか、はclusterが無償配布している「Cluster Educators Guide」で少し解説しています。必要情報を記入いただければ、ダウンロードできるので、興味ある方はぜひ!)
まずはワールドアップロード!
ワールド制作を始める時におすすめしているのが「まず最初にアップロードすること」です。
最初のアップロードは、床が置いてあるだけでもOKです。なぜ最初にアップロードするのがおすすめなのか、理由を下記に記していきます。
環境構築などのエラーを早めに検知できる
Unityのインストールなどの環境構築から始めた場合に「必要なビルドをインストールできてない」などの問題は、ワールドアップロード時にはじめて分かる場合があります。
めちゃめちゃつくり込んで「いざアップロード!」という時に、それでアップロードできなかったら、ちょっと悲しいですよね。もちろん、その時に修正すればいい話なのですが、スムーズにアップロードできた方が気持ち良いので、最初にアップロードして問題ないことを確認するのが吉だと思います。
進捗を体験しながら制作を進められる
BlenderやUnityのエディタ画面上で3Dの空間が立ち上がっていくのも楽しいですが、できた空間の中に入って体験すると、より一層進捗の実感が高まります。
ワールドは、一回アップロードしたワールドに対して再度アップロードすることで更新できます。更新の際は、自動的にワールドに入室し直すので、更新を反映させながらどんどん制作を進めることができます(ワールドの規模が大きくなってくると難しい場合もあるかもしれませんが!)。
もしかしたらアバターで歩き回ることで、エディタ画面で制作を進める時には考え付かなかったアイデアを思いつくこともあるかもしれません。
友達と共有しつつ、つくると楽しい
先に言ったように、clusterのようなソーシャルVRでのワールド制作の魅力は「すぐに複数人で体験できること」です。
最初にアップロードすれば、その時点で複数人が体験できるようになるので、みんなでワールドの進捗を確認しながら制作を進めることが可能になります。友達からフィードバックをもらったり、お互いの進捗を見ながら制作を進めていくと、制作がさらに楽しくなるのではないかと思います。
通常は複数人で体験するためにはワールドを公開する必要がありますが、「不特定多数の人に制作途中のものを見られたくない」という人は、「テスト用スペース」を使うことで、非公開の状態であっても特定の人とワールドに入れるようにできます。(以下の記事で使い方を解説しています)
既存のモデルやアセットを置くだけでもOK
ワールド制作というと「3Dモデルを自分で用意しなきゃいけないの?」と思うかもしれませんが、今は色々なところで3Dモデルを入手できるようになっています。
有料のものを購入して使うこともできますし、無料で配布している例もあります。
そうしたものを組み合わせるだけで、オリジナルのワールドを制作することができます。
まずは、配布されているアセットやモデルを組み合わせてワールド制作をしてみて、よりこだわりたい人はオリジナルモデル制作に挑戦してみるという進め方が良いのではないかと思います。
Creators Guideだけでもいっぱいあります
自分が運営しているCreators Guideでも、色々なアセットを配布しているので、clusterでのワールド制作に挑戦してみたい方は、まずそちらを使ってみてください!
3Dモデルだけではなくて、ギミック付きのアセットも配布しているので、clusterのギミックでどういうことができるかを知る入り口にもなると思います。
まずは、さまざまなテンプレートが入ったテンプレートプロジェクトを導入してみるのがおすすめです(下記の記事で導入方法を案内しています)。
無料のモデルやアセットは色々あります
他にも、色々なモデルやアセットを入手することができます。中には、無料のものも。
代表的な入手場所としてはUnity Asset StoreやBOOTHがあります。
Unity Asset StoreはUnity公式が提供しているアセットストアで、さまざまなアセットを入手することができます。例えば、綺麗なスカイボックスが入った「AllSky」などは有名ですね。
ただ、Unity Asset Storeは、clusterのようなソーシャルVRだけではなくゲーム制作も想定されているので、すべてのアセットがclusterでそのまま使えるわけではないことに注意する必要があります。特にレンダーパイプラインやシェーダーには注意です。また、clusterではC#のスクリプトは使えません。
もうひとつ代表的なものとしてBOOTHがあります。
BOOTHは、元々は広くクリエイターが利用できるオンラインショップですが、出品のしやすさなどからソーシャルVRで活動するクリエイターの方々がよく使うサービスになっています。
なので、Unity Asset Storeと異なり、ソーシャルVRに最適化されたモデルやアセットを見つけることができます。「cluster」というタグも使われているので、そこから探せばclusterに適したものが見つかる可能性が高いです。ぜひ探してみてください。
また、博物館や研究機関が3Dスキャンのデータなどを公開している例もあります。
このように色々な形で3Dモデルやアセットを入手することができます。0から3Dモデルをつくらなくても自分の思い描く世界をつくることができる可能性もあるので、ぜひ、まずはどんな3Dモデルやアセットがあるかをリサーチしてみて気になるのがあれば、どんどん試してみましょう!
※利用する際には、それぞれの3Dモデルやアセットの利用規約を確認し、規約に反しない形で利用するようにしましょう!
つくりたいものをつくるのが重要!
記事や授業を通して教えられることはたくさんあるのですが、やはり取り組むにあたって最も重要なのは「何をつくりたいか」です。
つくりたいものがない状態で技術や知識だけ増やしていっても、上手く活かせないことが多いですし、何よりモチベーションが上がらないと思います。
なので、ワールド制作を始める時は、まずはつくりたいものを思い描いた上で、そのためにどんな技術や知識、データが必要なのかを考え、制作を進めていくのが一番です。
「これをつくりたい!」という思いがあれば、周りの人がお手伝いできる幅も広がると思うので、ワールド制作に挑戦してみたい人は、まずはその思いを明確にするところからスタートしてみると良いかもしれません!(もちろん技術や知識を身につけていく楽しさもあると思うので、そういう始め方でも良いと思います!)


