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磁性流体スピーカー製作への道 その1「ver1~ver4」

Last updated at Posted at 2025-05-12

はじめに

前回の記事では磁性流体スピーカー製作の前日譚を載せました。
以降は具体的な製作譚をまとめていきます。

目次

1.なにつくる...磁性流体スピーカーの仕様を明確にしました。
2.メイン
 2-1. 電源部分の説明
 2-2. オーディオ部分の説明
 2-3. 磁性流体制御部分の説明
3.プリント基板の設計と実装
4.まとめと改善案

1.なにつくる

磁性流体スピーカーを作るにあたって,他の製品と同じでは面白みに欠けます。そこで,私の作る製品の仕様をハッキリさせたいと思います。

【仕様】

1. スピーカーと磁性流体の一体型であること
2. オーディオ信号のうち,左側の信号をオーディオアンプ入力用信号,右側の信号を磁性流体の制御用信号として使うこと
3. 電源はUSB-PD (20V) とする
4. 音量は可変抵抗で調整可能にする
5. 磁性流体は,可変抵抗を用いたローパスフィルターを通過した周波数によって制御するものとし,マイコン等による制御は行わない

以下はそれぞれの仕様の設定理由です。折りたたんであるので読みたい人は広げて読んでみてください。

≪設定理由≫
1および2について

 前回の記事で紹介した製品はどちらも外部の音をマイクで拾い,それに反応して磁性流体を動作させるというものでした。しかしながら,この方式の欠点は反応速度が遅いということです。
以下の画像のSound receiverがそれです。

 そこで音声信号を使って直接磁性流体を制御すれば,この遅延を解消できるのではないかというのがこの試みです。もちろん,物質を動かす以上,質量慣性の影響で多少の遅延は発生しますが,それでもマイク方式に比べて反応速度は良くなると思います。

3について

 スピーカーの駆動だけなら5Vで十分です。問題は磁性流体を駆動するための電磁石。磁性流体をカッコよく動かすためにはそれなりの電圧(電流)を必要とします。そこでAmazonにあった定格電圧24Vの電磁石を使用することとし,USB-PD (20V) を選択しました。ちなみに電磁石のRDC(直流抵抗)は約80Ωです。インダクタは分かりませんでした。
購入した電磁石

「定格24Vなら24V出力のACアダプターを使えばいいじゃん」という声も挙がりそうですが,一般の家庭にそんなものあるわけない(偏見)ので,入手性も良く,多くの家庭にある(だろう)最大65W出力のUSB ACアダプターから20Vをお借りすることにしました。

4について

 今回,音質はそこまで気にしません。ノブを回した音量制御の方が分かりやすいやろの精神です。また可変抵抗を使ったことで,製作時に直面した課題の解消にも一役買ってくれました。

5について

 私が使えるマイコンはRaspberry Pi Picoのみです。ただ,Picoはサイズが大きいことに加え,私がPicoを用いた音声信号の扱い方を知らないので避けたことが設定理由です。
ローパスフィルターを選定した理由は,高い周波数では磁性流体が常に反応してしまい動きに面白みがないためです。音楽によって周波数の閾値は異なるので,可変抵抗を用いてカットオフ周波数を自由に変更できるようにしました。

2.メイン

ver4までの段階で作った回路図を以下に示します。エディタはKiCAD 8.0です。
01_回路図.jpg
今思い返してみるとなかなかに面白い回路だなと思います。(小並感)

2-1. 電源部分の説明

image.png
USB-PDシンクコントローラとしてCH224Kを使用しました。

回路図はCH224Kのデータシートをそのまま参考にしました。
今回はCFG1をNC(Non Connection)にしたためVBUSは20V固定になっています。

SHIELDピンに1MΩの抵抗と4700pFのコンデンサ(MLCC)を付けていますが,このようにつなぐと静電気に強くなるらしいです。これはとあるサイトを参考にしたのですがそのサイトが見つけられなかったので発見し次第追記します。
なお,別にSHIELDを直接GNDにつないでも問題なく動きます。

右側ではNJM7805FAを使って5Vを生成しています。この5Vはオーディオアンプ用の電源になります。

2-2. オーディオ部分の説明

image.png

オーディオアンプにはPAM8301を使用しました。

以下 Diodes Incorporatedの説明より引用
【説明】
PAM8301は1.5WのクラスDモノラルオーディオアンプです。低THD+N特性により、高音質再生を実現します。新しいフィルタレスアーキテクチャにより、ローパス出力フィルタを使用せずにスピーカーを直接駆動できるため、システムコストとPCB面積を削減できます。外付け部品数が同じでも、PAM8301の効率はクラスABの同等製品よりもはるかに優れています。バッテリー寿命を最適化できるため、ポータブルアプリケーションに最適です。PAM8301はTSOT26パッケージで提供されます。
【特徴】
8Ω負荷、5V電源で10%THDで1.5W出力
フィルタレス、低静止電流、低EMI
最大88%の高効率
優れた低騒音
短絡保護
サーマルシャットダウン
外部コンポーネントが少なく、スペースとコストを節約
小型TSOT26パッケージ
鉛フリーパッケージ

回路図はデータシートを参考にしました。
VDDにつないでいるコンデンサ達はデカップリングとノイズの吸収が目的です。なお,データシート的には6800pFはなくても良いです。
INにつないでいる可変抵抗で直接音量を調整できるようにしています。

2-3. 磁性流体制御部分の説明

image.png

本記事のメインです。
恥ずかしながら,私自身もなぜこの回路で動いているのか理解できていません。なんとか分かる範囲で解説していこうと思います。なお,この回路は自己バイアス方式のA級アンプ動作になっています。
≪動作の仕組み(推測)≫
1. 可変抵抗RV1によってトランジスタ2SC1815および1000μFのコンデンサに流れる電流が変わる
2. その電流によって10kΩの部分で電圧降下が生じる
3. さいごにR4およびC5, C6で構成されたローパスフィルタによって高周波信号(電圧)が除去され,低周波の信号(電圧)のみがMOSFETに入力されそのオンオフで電磁石を制御し,磁性流体を駆動している。

という仕組みだと推測されます。この仕組みで動いているという仮定のもとで考えると,RV1の値が小さいほどトランジスタやR4に流れる電流が大きくなり,その結果R4での電圧降下が大きくなり,MOSFETが動作しづらくなります。
ここまで読んでお気付きの方もおられるかもしれません。
そうです。
この回路における可変抵抗は,ローパスフィルタのカットオフ周波数の調節用ではなく,電圧降下のための電流制御用のものなのです。言い換えればカットオフ周波数は固定なのです。
いけませんねぇ…これは仕様を満たしていません。
私はしばらく経ってから気が付きました。

またこの回路,音量がMAXでないときれいに動きません。つまりスピーカーから出る音はデフォルトが爆音です。これに関しては音量調整用の可変抵抗で何とかなっていますが,最終的には改善すべき問題です。

ともかくこれで動いているのでまあ良いのではないでしょうか

3. プリント基板の設計と実装

KiCADでPCBの設計を行いました。
image.png
06_3D.png
プリント基板はJLCPCBに製造していただきました。
表面実装部品(SMD)とUSB端子はPCBAサービスを使って基板製造時に実装してもらいました。とても綺麗な実装でした。
Jissou.jpg
基板が届いた後は自分で残りの部品をはんだ付けして基板完成。さっそく動作テストを行いました。
以下はその動画になります。参考までに

4. まとめと改善

本記事では作品の仕様決定と,初歩的で簡易的でだいぶミスっている磁性流体スピーカーを作成しました。

良かった点は,紆余曲折があったものの音声信号をもとに磁性流体が制御できた点です。これは電子工作初心者の私にとってはとても嬉しいことでした。

改善点は
1. 音量MAXじゃなくても動くようにする。→オペアンプの導入
2. 可変抵抗をカットオフ周波数の調節用にする。→回路の見直し
3. 素子の保護を丁寧にする。→レギュレータへのショットキーバリアダイオードの追加など
4. コスト削減。→PCBAをせずスルーホール部品を使ったり,SMDやUSB端子を手はんだしたりできるようになる

他にもいろいろあったのですが,重要なのはこの4点です。
これらの改善を行いより明快で評価しやすい作品を作れるようになっていきたいです。

ここまで読んでいただき,誠にありがとうございます。

以降も頑張るので応援よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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