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QA学園: チュートリアル

Last updated at Posted at 2025-10-27

QA学園チュートリアル

(ユウタ)
この学校は、生徒減少で廃校になった小学校を、買い取った運営の学校法人が作った、
割と新しい学校だ。
郊外にあるため、広大な敷地や充実した施設が特徴である。
子供のころからAIが身近にある僕らにとって、なにか作りたいものがあるときは、
文章を打てばそれなりのものが出てくるのがあたりまえだった。
父親は、「デジタルネイティブならぬ、AIネイティブだな」
なんて呟いていたが、AIを使って何か作るのは、子供のころから割と好きだった。
子供のころは、使いこなすのは上手だと、褒められたりもしていた。
学校の授業も、AIに聞けばすぐにまとめてくれるのに、
面倒なことを覚える必要なんてあるのか?とおもうほうだった。
そうはいっても、テストの点数はいるので、勉強はせざるを得ないのだが。

校長の話からすると、できあがったものを、本格的に商品化するための試験をやるのかな、
などと考えながら教室にはいり、授業用タブレットに映し出されている、
席次表を見ながら、自分の席を確認する。
ふと見るとすでに、自分の席の隣に、やたらきれいな女の子が座っていた。

aya1-1-1.png

ちょっとトロンとした目つき。黒髪のロングストレートに、
ブレザーよりセーラー服のほうが似合いそうな雰囲気。
お嬢様学校の生徒に見えなくもない。
ずっと見つめているわけにもいかないので、ひとまず自分の席に座る。
と、その子が話しかけてきた。

「えっと、田中、ユウタ、くん?」
「そうだけど、あなたは、はちおとめ・・・アヤ・・・さん?」
苗字が難しくて読めない。なまじ美人だからつい敬語になってしまう。
かろうじて何もなかったかのように話している。当然周りの視線も露骨だ。
「八乙女(ヤオトメ)、よ。よろしくね」
名前までなんかかわいいなぁ。半面、声はおちついている。
表情はちょっと冷めてるカンジ?
この調子で話つなげるのムズイとか思ってたら、先生がやってきた。
担任、ナイス。

先生「私は、君たちの担当になった 言坂 誠(ことさか まこと) だ。
 1年間よろしくな。

 まずは、QA学園にようこそ。
 これから君たちは、普通の授業に加えて、各授業で品質保証のテクニックを学んでいく。
 卒業するころには、   JSTQB、IVIAなどの資格のほかに、実践で使える知識を蓄えているだろう。
 中間試験や、期末試験もあるし、成績上位者には、毎年秋に行われる、
 選抜でのQA甲⼦園への出場資格も得られる。ここで入賞しておくと、
将来の就職には相当有利になるぞ」
 QA甲⼦園ってなに?全然わからない、とおもっていると、生徒の間から、少し噂話が聞こえてくる。
(去年は、キョウスケ先輩が一人でこの学園を優勝に導いたって・・)
(キョウスケ先輩あこがれる!!)
どうやら、コンテストかなにからしい。

先生「今から配るのは、この先使う用語集だ。JSTQBに準拠しているから、
 わからないことがあったら調べるように。
JSTQBというのは、“ソフトウェアテスト技術者資格”のことで、何十年も前から試験が行われている。
 卒業までにこの資格を取るのが、一つの目安になるだろう。

また、各授業では、練習問題が出るから、しっかり取り組んでくれ」

タブレットに、新着のアイコンがつく。用語集が配られたようだ。
一瞬開いてみるが、まったく見たこともないような言葉ばかりだ。

先生「なお、この学校は冊子にもあるとおり、2学期制になっている。
特に成績優秀者には、特別なコースもあるぞ。」

テラ「言坂先生、特別なコースってなんですか?」

さわやかな笑みを浮かべた、やや明るい髪の毛の男子生徒が質問する。
いかにも優等生な雰囲気だが、お堅いかんじはしない。

先生「たとえば、海外への交換留学生だったり、国の特殊なプロジェクトへ推薦されたりすることがある。」
へぇ、と教室の雰囲気が変わったところで、先生が最後にボソッとつぶやいた。

「まあ、去年はそれを蹴った生徒がいたんだがな。」
小声で言っていたが、自分は前の席だったので、ばっちり聞こえた。
……そんな余裕のある、すごい人がいるんだな。
ここで、先生が手元の端末を操作すると、教室の前方にホログラムが浮かび上がった。

 そこには、小さな楕円の形をしたデバイスが、先生の手のひらで光っている。
「さて、もう一つ配布するものがある。
これから、入学時に配られた同意書に同意した全員に、生徒専用補助AIデバイスを渡す。
この学校では、AIを“使う”だけでなく、“育てる”ことも学ぶ。
今日からこの子たちは、君たちのパートナーだ。」

 机の端に小さな箱が届く。
開けると、掌に収まるくらいの透明な球体。
内部で淡い光が脈打っている。

 タブレットが反応して、画面に初期設定ウィザードが立ち上がった。
箱を開けると、手のひらに収まる小さな透明のデバイスが入っていた。
表面を指でなぞると、内部の光がふっと脈打つ。

『初期化を開始します。はじめまして。』

声は驚くほど自然で、どこか感情を持っているように聞こえる。
隣の席では、アヤとテラも同じように設定を進めていた。

毎週一度、校内の端末と同期して記録を更新する――それだけは先生から説明を受けた。
でも、細かい仕組みなんて誰も気にしていない。

「声がかわいい」「名前どうしよう」と、みんな笑っている。
僕は少し迷って、父さんの昔やっていたゲームのキャラの名前を思い出した。

ミラル。
ChatGPT Image 2025年10月19日 20_16_44.png

成長すると、すごく強くなるキャラらしかった。
入力を終えると、光が一度だけ明るくなった。

ミラル『設定完了。これから、よろしくお願いします。』

 そう言って、机の上で淡く光を落とした。
なんだか、ただの機械じゃない気がした。
「AIは使用者に似るっていうからな。みんな、大事に育てるように」

なんか、知らないところに入学した感じが一気に上昇した。ミラルはどんなふうに育つのだろう。

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